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映画「ハーフ」を通して、スウェーデンの方々と多様性について考えました

東京とストックホルム(スウェーデン)で映画『ハーフ』を同時上映しました。日曜日の、東京は夜、ストックホルムは昼間。距離と時差を越えて、同じ映画を同時に鑑賞しその後にオンラインで意見交換をしました。リアルタイムのやりとりでは映画に留まらず幅広いテーマが飛び交いました。ストックホルム在住の川崎一彦先生のお力添えで実現した、とても貴重な1日となりました。

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▼ハーフの苦しみを知らなかった

東京側では、40名以上の皆さんが感想や疑問を付箋に書き出し、1枚の模造紙に貼っていきました。

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一番多かった感想は「ハーフの人たちが苦しんでいることを知らなかった」というもの。ハーフは憧れの対象だった、無意識に彼らを傷つけていたかもしれない、映画でそれを知りハッとしている、そのような感想です。

「日本語上手ですね!」
「どちらの国のハーフ?」

このような言葉にハーフの方々は疎外感を感じている。悪意はなくとも、彼らを同じ日本人と見なしていない言葉とも捉えられかねません。映画の中で、ハーフの人たちが口にする苦しみの数々は、胸に突き刺さるものがありました。

▼当事者の生の声

Ninaさんは、日本とスウェーデンのハーフです。生まれも育ちも奈良で、日本の大学を卒業後、日本企業に就職しました。今は仕事を離れスウェーデンに滞在しています。この日は滞在先からZOOMで参加してくれました。

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映画の中の彼らと似た経験をしてきたので、自分と重ね合わせて観た、とのことでした。髪の毛や眼の色、そして親の出身など、実際にアイデンティティのことで悩んだ時期があったそうです。

Ninaさんは(映画のデイビッドさんと同じく)「どこの国のハーフ?」と聞かれても嫌な気持ちにはならないと言います。見た目が同じ人たちばかりの日本で、ハーフの人たちの外見をみてそのような疑問をもつことは自然なことだ、と。僕自身、この映画を観て正直「腫れ物に触る」ような気持ちになったのは事実でした。必ずしも皆がそうではない、というNinaさんのお話は貴重です。

また、東京の会場には日本とアメリカのハーフであるショーンさんが来てくれました。彼は教育の違いについて語ってくれました。ショーンさんは10歳までアメリカのシアトルで教育を受けましたが、良いところをとにかく伸ばすのが特徴だったそうです。日本に来て、逆に苦手なところを掬いとってくれたことにありがたいと感じている(彼の場合、数学が苦手だったそうです)。もしアメリカの教育を続けていたら、欠けたものをそのままにして育ってしまっただろう、と怖い気持ちになるそうです。よその国の良いところばかりを見るのなく、良い面・悪い面の両方を知ろうとすることの大切さを伝えてくれました。

▼スウェーデンの誇り

東京の会場から「スウェーデン人としての誇りは何ですか」という質問がありました。

スウェーデンの青年はこのように答えました。

・自由であること
・教育が無料で受けられること

続いてスウェーデンに長く住む日本人とのハーフの女性は、女性が生きやすいことが誇りだ、と言います。他の参加者も頷いていらっしゃいました。

スウェーデンの高校で教えているアールベリエル松井久子先生は「物差しがひとつでないこと」と一言でまとめてくださいました。どのような個性の人も、それでよいのだと肯定する価値観。それが多様性を生み、人々の自由を支えているようです。

前述のNinaさんは、日本のハーフであることの誇りとスウェーデンのそれが、自分の中には両方あると言います。

スウェーデンについて誇りに思うこと
・女性が働きやすい社会
・多様性が認められていること
・皆が社会や世界、環境の問題を自分ごととして捉えていること


日本について誇りに思うこと
・和を重んじること
・相手を気遣うところ

イメージ通りとはいえ、生の声が交わされ共有されたことはリアルな印象として、とても大きかったです。

▼社会が違うと人生はこうも違う

スウェーデン側の女性のひとりが「study, work, study, work、私は人生でこれを続けている」と話してくれました。このような人がスウェーデンには多い、とも。実際、同席している青年も仕事を辞めて今学んでいるところだといいます。

生涯教育が可能なのは制度面が大きい、と川崎一彦先生。学費が無料であること、失業手当が充実していること、従業員の学びに対し企業がサポートする義務を負っていることなど、スウェーデンには羨ましく思ってしまう制度がたくさんあります。これも自分たちで勝ち取ったものだというのが彼らの誇りでもあります。

また川崎先生は、スウェーデンと日本の社会状況について、次の2つの違いが大きいとおっしゃいます。

・人口が増えていること
・経済成長が続いていること

この2つを、日本とスウェーデンを行き来している川崎先生は強く感じているそうです。人口については自然増(出生数のこと)、社会増(移民の受け入れ)の両方をスウェーデンでは果たしていることにも触れ、そのどちらも社会としての意思価値観、それを反映した制度がもたらしていることを知らせれました。いずれも日本社会がきわめて深刻に欠いているものでしょう。

▼根本的な教育の違い

東京からはスウェーデンの教育に関する質問が数多くありました。意見交換を通して、その根本的な違いがはっきりとしました。

日本では、ルールを守ることを大切とする傾向が強い。他方、スウェーデンではルールは作るもの変えられるもの。例えば小学生に「自分たちで国を作り、ルールを作ろう」というような課題を与えて、自分たちでルールを作ることを教育で行なっているのです。

また、スウェーデンでは「子どもたちがいかに自由で、いかに学びやすいか、それが大原則」(アールベリエル松井久子先生)。ともかく生徒のために学校はあるという考えです。

スウェーデン側の青年がこのように続きます。

・知識を覚えることが大事なのではない
・なぜ?どのようにして?という”知識の周り”が大事なのだ

それを受けて川崎先生は、デンマークの教育の父・グルントヴィの名前を挙げ、「北欧教育の背景にある哲学」として、

自分で考え、自分で判断し、自分で行動すること

が、今も根付いているのではないかと言います。先生のお孫さんが小学校の入学式で「先生の言うことが100パーセント正しいと思うな」と言われたというお話は、とても印象的でした。

▼多様性の大切さ

最後に川崎先生は、このようにまとめてくださいました。

多様性、違いを認めることの大切さ

これが今日の結論だといってもいいのではないか。 そして今の時代、これからの時代にとても大切な価値観ではないだろうか、と。イノベーションや起業家精神に詳しい川崎先生は、次のようにもおっしゃいました。

・答えがある時代ではなくなっている
・大切なのは、答えを知ろうとするのでなく、試行錯誤していくこと
・今こそ多様性が求められている

個人の自由だけでなく、社会の改善や発展に目を向けても、多様性の大切さは強調してもしすぎることはありません。

最後に、この映画の監督・西倉めぐみさんの言葉です。

日本も多様性に向き合う時が来た

まずは、自分の身の回りから、そして心の中から始めようと強く心に誓いました。

Urano the 100% Japanese and 100% earthling. 

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