Twitterにあげた詩⑤
『乙女の無邪気』
「ずっと手を繋いでいよう」
「ずっとってどのくらい?」
死ぬまで、アイスの棒を軽く噛みながらきみは答えた
嫌、死んでからもずっとがいい
街頭の下
叶わないであろう最後のわがまま
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『凪と澱』
言の葉が
伝えたい相手に届かず
地面に落ちて
朽ちた時
音がするんだ
おまえにわかるか
俺はその音が頭からはなれない
だから頭を打ちつけているんだ
おまえにわかるか
あー今日は空がきれいだな、くそったれだよ
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『プラネタリウム』
家庭用プラネタリウム
安っぽい光の波でも案外楽しめるものだ
煙草を吸いながら眺めると
煙とプラネタリウムの光が融合して
別世界に居るのだろうか―
するとプラネタリウムは赤い光を点滅
させて
光を閉じてしまった
ぼくは仕方なく
頭に指したUSBを抜いた
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『おちる』
でも、でもね
少女は必死に言葉を続けようとする
俺にはもう意味のない事だよ、必要ないよ
そう言おうとしたが上手く話せない
最後まで少女の言葉を聞いてしまったら
もう後には戻れない気がする
足元の少し先、遠くアスファルトが見えた
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『少女の夢』
頭を撫でられた気がして目を覚ます
それは夢だったのかもしれない
幸せな気分は泡のように消えて
どろりとした悲しみだけが残った
水をコップに注ぐ
透明で清潔で涙が出た
でも今日は風が吹くから外に出なくてはいけない
悲しみの赤はスカートの中に隠して
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『月が流れる』
子どもの頃月に行くのはわたしだと思っていた
実際は違っていて
月を見上げながらベランダで煙草を吸っているような大人になってしまって
ただあの子の瞳の輝きは
月に行っても手に入らないな
だなんてぼんやり思ったりして
今夜の月は色が濃いな、
滲んでいるけど
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『魔法のように』
あの場所はわたしを惨めにする。
わたしはあの場所にいるわたしが大嫌いだ。
いつもいつも世界すべてがどす黒くて赤い斑点が嘲るように回っていた。
でもある日わたしは救われた。
世界は穢れた色ではなくなった。
今日もイヤホンを耳に入れる。
世界は変わった。魔法のように。
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『死にゆく者』
ほら、聞こえる?
いのちが消滅した音だよ。
花壇に咲く花の葉っぱに触れながら歌でも歌っているように言った。
死神はね、優しいんだよ
嘘つき。嘘つき。
きみの後ろにいるそいつが優しい訳なんてないんだよ
きみはこちらを見てふわりと笑って、多分そのあと。
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『くろ』
切り離した黒いそれが窓の外まで追いかけてきたみたいだ。
大丈夫、瓦礫はぜんぶ私の味方をしてくれるはず。
ぬいぐるみの手を握ったら世界はまた白に戻る。
あの喫茶店、また行きたかったね、お金がないからもう行けないけど。
口約束の苦さが黒かった。
気付かないふりをした。
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『夏のかけら』
蒸される感覚の中、きみがいなくなった事を知った。
素晴らしい事だと思った、ぼくは
ぼくには出来ないから
根を張った劣等感に抱き着いている内に心地よい場所になってしまったから
焼けるような暑さの中、ぼくはここにいる
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