Twitterにあげた詩まとめ⑦
『約束(期限付き)』
「夏になったら海を見に行こう」
銀世界を背後に従えて、鼻を赤くしたあなたが言う
夏になるまで一緒にいる、約束。
あなたはいつも先の約束をする
いつになったら今の僕と約束をしてくれる?
いつか今の僕と生きてくれる?
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『生きてた』
目が覚めたら薄暗い灰色だった
早朝か夕方かわからない、でも私にとってやさしい色だったから、安心した
呪われてる身体で壁伝いに歩いて水を飲んだ 煙草を吸って項垂れた
床が冷たかった
私の味方 わたしは味方
信じて。私をあんたの中に取り込んでよ
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『バーチャル・心』
アイフォンの画面の光だけで
デートをしよう
こころにふれるのは簡単じゃなかったね
マグカップが倒れて黒い液体が流れているのが、なんとなく分かる
君は泣いてた?
どうしたら君のこころの隣に行けたの?
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『欠けてる』
風に靡く洗濯物を見ている
知らない誰かの生活の一部
いつになったら迎えに来てくれるんだろうお母さん
背が伸びたから見えなかったものが見えるようになった
あした目を縫いつけた方がいい
僕も手をひかれて歩いてみたかった
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『深海魚の電波』
「電波のない所に行くと死んでしまうんだって」
デンパ?
「そう、電波。脳が圧力に耐えられないらしいよ」
なんかそれって怖いね
「そうだね」
行ってみる?
「行かない」
私とは、行かない?
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『あの娘のプレイリスト』
あの娘のスマホを借りた時
プレイリストを盗み見た
なるほど、黒い色だった
だからいつも元気で可愛いのね
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『夢だけ』
きれいな夢だったね
きみが居たからね
風に乗ってとおくへ行った日や
月の裏側について話した時の
きれいなきみだったよ
もう映画はいらない
夢だけを見ることにするよ
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『リプレイ』
鼻先が冷たくて
また失敗したねって
夢にまで見たひかりが
遠ざかって行ってる気がした
あなたの歌とか熱とかが痛かったね
重力を他人の何倍も受け入れてしまうからだ
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『春と煙』
ベランダに出ると春の風が吹いていた
なにか、なんでもいいから僕は僕からなにかを生み出さなくてはいけないと思わされた
やさしく撫でておくれよ
煙草のけむりが通った場所にひかりが差していたことに気づいたんだ
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『リップクリーム』
きみのくちびるが荒れてたから
リップクリームを差し出した
きみはなんの戸惑いもなくそれを使った
それがなんだか嬉しくて
きみが使ったリップクリームに
空を見せたり、一緒に食事をしたり、した
リップクリーム、リップクリーム
たからもの
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