しゃべるピアノ
僕は楽器。
甲高い声金色の声を夜に響かせる。
溶けるような柔らかい声はもう出ない。
さながら哀切な声で主人を待つ犬のよう。
僕は楽器。
朝霧にまた銀色の声を漂わせるだけ。
幸せな甘い空間を劈くが如く叫ぶ。
待ち人の指先すらもう思い出せぬほどに。
僕は楽器。
柔らかな真昼の月に啼く。
届かぬ思いすら白光に透かしてももう消えてしまうようで。
僕は楽器。
僕は楽器。
壊れる前にもう一度、僕を楽器にしておくれ。
声を響かせておくれ。
僕は楽器。
僕は
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