君に贈る火星の



摂氏-63℃の赤い惑星。

小さな青い惑星を出てからどれ程経ったのか分からない。
分からなくてもいいと思う。



そこに降り立つ僕と君。僕ら以外に生命体は居るのか居ないのか。
そんな事、どうだっていい。
今日は素晴らしい日なんだから。



きっと僕らふたりきり。多分きっと、恐らくそう、ふたりきり。



世界はここからはじまる。
僕と君で今からはじめる。

笑うのも泣くのも怒るのも僕らがはじめる。


この小さな惑星で。


憫笑も逆運も哀悼もあの青い惑星に置いてきた。
悪人はここにはひとりもいない。
もうしがらみは全て捨て置いて来たのだ。



この場所で、この惑星で。

初めて君にプレゼントが出来るのだ。



はしゃぎ過ぎよと笑う君を抱き締める。

君だってはしゃいでいるじゃないかとふたりで笑い合う。



「僕らはアダムとイブだ」
「随分明るいアダムとイブね」

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