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ぼくだけが夏、夏。

第18回文芸思潮現代詩賞落選作品です。

今読み返すと稚拙で少し恥ずかしいですが、成長したからそう思えるのかもしれません。

夏が嫌い、怖い。みんなみんな夏を美化してる。
泣きそうな気持ちで書いたのを覚えています。

私の夏は、殺意と倦怠感と孤独です。
眩しくて苦しい。

季節外れですがぜひ読んでみてください。


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ぼくだけが夏、夏。
朝。目覚めて水を飲む。
窓の外は太陽の光で真っ白だった。
夏。ぼくだけが夏。
誰にでもあるようなノスタルジーで窒息しそうだ。ぼくは、きっとこのノスタルジーという病で腐ってしまうのだろう。造花の向日葵は自分が生きられる季節がまた巡ってきたと笑う。

ぼくの青春という容れ物は空だった。手を入れるとざらざらとした砂利のような手触りがあった。
過去にここにはなにかがあったのだろうか。
それはいつ、どうやって失くなったのか。

外に出ようか。いつぶりか分からないが。
炎天下。ぼくには夏は眩しすぎる。アスファルトに焼かれぼくの身体は溶ける。遠くに少女の姿が見えた。
少女は消えない。ノスタルジーを孕んでいるから。
どろどろと、溶ける、ぼくだけが夏。

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