テレビ朝日ドラマプレミアム版『ブラック・ジャック』を観て

TVerで間に合ったので観ましたよ。
テレ朝ドラマプレミアム版といえばよいのか、高橋一生版といえばよいのか、とにかくドラマ『ブラック・ジャック』

このドラマについては、キリコのキャラクターが男性から女性（石橋静河さんが演じてました）になったとか、キャラデザインがイメージじゃないとか、それについて人物デザイン監修の方がコメント出して説明したりとか。例の日テレドラマの「原作改変」事件（あえて事件と言っときます）以降、とにかく色々言われるようになりましたが、
まぁこれについては（他のドラマについても）いいんじゃないかな、と思っています。
ブラック・ジャックの場合は原作者は既にいらっしゃいませんが、ご家族が著作権管理しているようですし、とにかく原作者らが「別にええで」と言ってる作品については。

原作が一番だという人は、ドラマや映画になったものをわざわざ観なきゃいいんです。
音楽だって、オリジナルが一番と思っていれば、他の誰がカバーをしたとしても別に「あんなんじゃない」と思っていればいいだけで、特にカバーしたアーティストに対してああだこうだ言うことはないんです。
作品の解釈は人それぞれですし、その解釈に基づいてアレンジ変えたり、場合によってはアレンジ原作忠実だったり。
ドラマなどの映像化も同じ、だと思いませんか。

それよりも、今回のドラマ版『ブラック・ジャック』については、
高橋一生がいつもの高橋一生だなぁ、とか
岸辺露伴と同じじゃね？とか
の方が気になりました。
それでも、まぁ良かったと思いますよ、高橋一生ブラック・ジャックも。
原作だともっと「何を考えてんだかわかんね」というクールさが前面に出ていますが、高橋一生ブラック・ジャックは隠しきれない人間性が滲み出ていてドラマ1本分でキャラ感情移入させるには丁度いい塩梅というか。

まぁ、話題のキリコについてはキャラ変云々以前にちょっと薄っぺらかったですね。
登場シーンが短すぎたのかもしれませんが、キリコって何者でなぜに安楽死を手助けするような闇落ち医者崩れになったのか、とかがさっぱり伝わらなかったですから。
単に変なコスプレしたアニメ好き女子？みたいな感じでした（というと言い過ぎか）。

松本まりかさんは思い切りましたね。
美人女優があえてルッキズムを問うキャラを演じるというのはなんかいいです。
ちょうど、これを観終わってYoutube開いたら最近ハマってるショートアニメコントのチャンネル「マリマリマリー」でおすすめに出てきたのが
『就活のアピールポイント全部顔のやつ』という動画で、そのシンクロ具合に笑っちゃいました。

そんなことよりですね、このドラマで一番引っかかったのは、
いや引っかかったというのは良い意味なんですが、
最近、何気にドラマの中のセリフに政権批判、社会批判をそっとぶち込んでくるのが多いよなと思っているんです。
脚本家かプロデューサか分からないですが、頑張ってるな、と。

最近だとTBS日曜劇場『VIVANT』でも続く『アンチヒーロー』でもそんなセリフを主人公に言わせていましたし、NHK朝ドラでも毎作品でそういうテーマを仄めかすエピソード回が出てきます。

そうした行動で思い出すのは忌野清志郎さんです。
あれだけの一流のロックシンガーの忌野清志郎さんが番組干されても原発反対や放送局を公共の場できっちりとディスるというか、そういう影響力ある立場できちっと「違うことは違う」と声をあげるのはロックだな、と思います。

今作でも、弁護士役の（最初刑事役かと思ってました）山中崇が言ったセリフがそれでした。

考えてみれば世の中結構漫画みたいなんだよな
カルト団体と政治家がベッタリとかさ
真っ黒に塗られた公文書とかさ
ドリルで証拠データ破壊なんてのもあったな
まじすか？てな、漫画みたいな話で溢れかえってる

それを受けて井之脇海演じる殺されたかもしれない友人の死を探る若い医者の卵が言います。

敵は法務大臣ってことですよね

権力者が悪いやつ、みたいな設定は手垢にまみれたよくある設定ですが、それに関して言わせるセリフが、自民党と統一教会の話とか、最近顕著な公文書の事実上の隠蔽とか、ドリル優子の話まで、とにかく具体的すぎて、
「攻めてるな」
と感心しました。

為政者とそのシンパって意外に国民のことをバカにしているので、その反面としてこういう看板そのものは政府批判になっていないようなコンテンツの中まではチェックしていないんですよね。

ただ、惜しむらくはそうした物言う制作者たちのメッセージも、普段からこうした社会の動きを気にも留めていない層には全然響いていないのかも、なんならそもそも気づいていないんだろうな、ということです。

それでも、権力者の所業に対しておとなしすぎる日本人だからこそ、そういう場を持っているクリエイターはもっと声をあげていってくれればいいなと思います。

全然ドラマの感想じゃないんですが、それが一番気に留まりました。

＜了＞