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『複業を語る』その9:覆面調査、やってみた

さて、企業内診断士の副業・複業の実態について語る、シリーズ『複業を語る』。今回も副業・複業の実態を赤裸々に語っていきたいと思います。

今回は、私が主催する「飲食業界研究会(略称:飲酒研)」で実施している、飲食店への覆面調査のお話をさせて頂きます。と言っても、どんな調査をやっていて、どんな報告がなされているのかということは、守秘義務上できません。覆面調査をやるうえで、我々が調査員が、「どんなことに注意して覆面調査をしているのか」、についてお話をさせて頂ければと存じます。

1)調査の概要
クライアントは、東京都内を中心に複数店舗を運営している、回転ずしのチェーン店です。年商、数十億規模と申し上げておきましょう。
覆面調査は、調査日時は店舗には事前に告げずに、研究会の調査員が一般顧客として訪問し、他の顧客と同じように注文・飲食する形式で実施しました。報告については、全店舗を調査した後で、課題と改善事項を洗い出し、まとめて本部に行う形式をとりました。

2)調査の際の留意点
最初は、自分は未経験のお仕事でしたので、手探り状態でのスタートになったのですが、実際に調査をやってみると、いろいろ留意するべきことがあるのが、よくわかりました。

①仮説→検証でアプローチする
漫然と店舗に調査しに行っても、課題は、間違いなく見つかりません(これは、覆面調査に限らず、診断士が診断先のヒアリングをする時には、言えることですね)。事前に業界動向やその企業の状況を調査した上で、担当者から店舗の運営状況を聞いたり、同業他社のお店に行ったりして、「おそらくこのあたりに課題があるハズだ」という「仮説」を「複数」たてて、調査で「検証」を行います。
仮説通りに課題が見つかれば、それを報告します。そして、次からはその課題がどのように改善されたのかを検証していくことで、店舗への具体的な改善提案ができます。
仮に、課題が見つからなかった場合でも、仮説をたてていた内容は「きちんと運営されていました」と、報告することができますので、次につなげることができます。

②指摘は具体的にする
調査をして、課題が見つかったとします。その際には、できるだけ具体的に伝えるようにします。
商品提供が遅れたなら、「遅かった」で終わるのではなく、ストップウォッチで時間を計り、「何分かかりました」と報告します。バッシング(片付け)がされた後で、食器がお客様の見える場所に置かれていたなら、その場所を写真に撮って、「入口から見える、この場所に置くのは止めましょう」と、分かるようにして報告します。
「遅い」と言われても、個人の感想の域を出ないことも多々あります。具体的な数値を提示して、どの程度具合が悪かったのかを伝えると、店舗の方々の納得感も得やすいように考えます。

③ダメ出しで終わらない
課題を洗い出して報告するという調査ですと、どうしても報告の内容が、「ダメ出し」に偏りがちです。また、報告を受ける上層部や本部の方々は、つい、店舗のダメなところに目が行きがちです。
しかしながら、調査に必要なのは、「ダメ出しだけ」ではないはずです。調査の目的が、「店舗運営の改善」であるならば、「ダメ出し」と同じくらい、「店舗運営の良いところ」を報告するのも大切なことだと思います。店舗運営のよかったところ(挨拶・接客対応等)とその担当者の名前を報告に明記することで、「店舗が目指すべき方向性」が明示できます。
また、「評価するべきところもきちんと見ている」というメッセージを報告書に記載することは、研究会とクライアントとの間に信頼関係を築くことにもつながります。

以上、①~③は「店舗の覆面調査をする際の留意事項」として、記載してきましたが、こうしてみてみると、「診断士が診断先の診断を行う時の留意事項」と、ほぼ同じことだと思います。自分がこれから、いろいろな企業にアドバイスをしていく際にも、この留意事項については、忘れることなく心に止めおきたいと思います。

さて、この『企業内診断士の輪を広げる「楽しい」ブログ』も、年内の更新は、これで最後となります。この一年間、皆さんにとってどんな一年だったでしょうか?

わたしは、新型コロナの流行やらウクライナやミャンマーなどに代表される紛争やらに心を削られる一方で、自分が好きなことができる恵まれた環境にいることを実感する場面が多い、楽しい一年でもありました。

一日も早く、「本当の意味で」平和な世界になるよう祈念して、2022年を閉めたいと思います。

この一年間、お読みいただきありがとうございました。また、来年からもよろしくお願いいたします。

ITベンダに勤務する、中小企業診断士です。得意のITを活かしつつ、常に楽しく前向きに、中小企業の方々と一緒にいろいろ考えていきたいと思っています。