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あえていま田中角栄を読む~はじめに

筆者は「都市と農業をつなぐ」をコンセプトにした農業系ベンチャー企業に勤務する元日経新聞記者の男(35)だ。

ベンチャー企業では、耕作放棄地を貸農園として再生するビジネスをてがけている。日経記者時代の後半は、全国の農地をまわりながら農業政策の記事を書いていた。

農業というのは、「土地」の一種である農地をいかに有効利用するかという点に尽きる。

だから人一倍、「土地」に関心をもってきたし、長い間、「土地」にまつわるいろんな問題にふれてきた。

そんな筆者からみて、日本の「土地」のありようを鮮やかに決定づけた男がいる。

田中角栄だ。

およそ50年前、首相就任直前のかれが政策集として出版したのが、「日本列島改造論」という本。この本の主題をひとことで表現するならば、「地方の土地を大規模に開発し、ひとの流れを都市から地方に移す」というものだ。地方と農村は同義語と考えていい。

おりしも、コロナ禍によって、過密状態にある都市の負の側面があらわになった。デジタル技術を活用したリモートワークが定着しつつあることから、メディアのなかには地方移住をすすめる動きもある。世の中の機運はあきらかに、都市から地方にむいている。

角栄が大胆な政策をぶちあげた半世紀前と通ずる状況だからこそ、かれの「日本列島改造論」を読み直す必要があるというのが、筆者の主張だ。

この本が打ち出した考え方は、いまでも色あせない面がある一方、日本を深い部分で歪めた側面もあり、評価はむずかしい。

どの点を学ぶべきで、どこを反面教師とすべきなのか。角栄が提唱した政策の功罪を1つずつ検証することが、「アフターコロナ」をみすえたとき、私たちに求められる作業なのではないだろうか。

不定期だが、すこしずつ連載していきたい。

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