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超光速航行のすすめ

光と航行
SF ファンの皆さんなら、大宇宙を自由に飛び回る話が好きですよね?
そんな僕らの夢を打ち砕くのは、光速の壁です。光の速度=毎秒30万km は日常的には十分に早いのですが、SF が求める「銀河を縦断する」様な時には困ります。何せ我らが天の川銀河の直径は10万光年。光の速度でも10万年かかるという、「ちょっと話がわからない」ぐらいの大きさです。

光の歴史 1
17世紀にガリレオは光に速度がありそうだと気付き(まさに天才!)、デンマークの天文学者レーマーが天体の動きから光の速度の計算を試みました。

レーマー

彼は1675年にガリレオが発見した木星の衛星イオの周期を計測していたところ、イオが木星に隠れるタイミングが地球と木星の距離で変わるのを発見しました。レーマーは光が木星から地球に到達する距離の変化で時間が変わっていると推測し、光の速さを概算出来たのです。ちなみに、30%も小さい値だったのですが、秒速30万kmにはレーマーも驚いたと思います。
ちなみに、現代人代表で計算してみたのですが、地球と木星が最も離れているときの距離は、約9.3億km=3100sec=52min。最も近い時は6.3億km=2100sec=35minとなり、差は17分です。イオの周期は45時間なので、0.6%位の差が発生します。微妙だけど、何年も観測すれば「差があること」を知っていれば、見つけられるかなあ。やはり二人とも凄い。

光の歴史 2
特殊相対性理論といえば、アインシュタイン。彼は「光の速度は不変」「光速に近づくと質量が増え、時間が遅れる」と言い、その結果20世紀初頭には光速には壁がある、と思う人が増えました。当然 SF 作家も、これに対応する必要があります。

ウラシマ効果

超光速航行の定義
まともに議論するとややこしい(上記ウラシマ効果とか…)ので、本稿では単純に「地球から見た観測者の時計で」「光より早く目的地につく」という結果が得られれば良しとする(ここの議論については、興味があればまた次回)。

超光速航行の種類
古典
初期のSFやスペースオペラである、エドワード・E・スミスの『宇宙のスカイラーク』シリーズでは、相対性理論に触れつつも加速したら何となく突破(漢!)。『レンズマン』シリーズでは、「バーゲンホルム機関」という装置で宇宙船の質量をゼロにしてクリアしている。

The 古典

ワープ(フィールド型)
スタートレック』では、ワープ・エンジンにより宇宙船を包み込むように亜空間フィールドを発生させ、その中は光速を超えられるワープ航法を使う。

ワープ中のエンタープライズ

エイリアン』シリーズにおいては、「超推進エンジン」が船の周辺に「超推進フィールド」を張り巡らせ、この中の物体は光速を超えることができる。

あまり説明はありませんが、多分 Star Wars もこれ

ワープ(空間折り曲げ型)
宇宙戦艦ヤマト』のワープ航法は、出発点と到着点の間の空間を折りたたみ、通常の時空間から飛び出して目的地まで近道をする。

ワープ(転送装置型)
神林長平の『敵は海賊』シリーズに登場する「Ωドライブ」と、

上の黒いのが、Ωドライブ搭載のラジェンドラ
黒い猫はアプロ

谷甲州の『終わりなき索敵』の「超光速シャフト」は、目的空間に先行情報を送り込み、その場所における存在確率を上げてから実体を送り込んで辻褄を合わせる。

海外では ジェイムズ・P・ホーガンの『創世記機械』に登場する「フィリップス駆動」がある。これは物質を高次空間の波動が4次元空間に投射された物とみなし、出発地で一旦分解したパターンを目的地で再構成する事で移動を行う(ほとんど言ってることが不明ですが…)。

確か、これがフィリップス駆動装置

ワームホール型
宇宙の特定の場所の間にはワームホール(虫食い穴)という抜け道があって、そこを通ることによって超光速を達成する。

近道?

ワームホールは
 ① 宇宙が出来た時から自然に存在
 亜空間航行とは、通常とは異なる亜空間に移動し、その中を移動して元の空間に出ると、外の空間では遠い場所に出ることができる方法。亜空間自体が、定常的なワームホールとも考えられる。

DSドライブで亜空間を飛ぶソロシップとイデオン

 ② 超文明を持った宇宙の先住種族が作った

2001年宇宙の旅のスターゲート
スタートレック DS9 のワームホール

 ③ 人類の技術によって作成した

ドラえもんの どこでもドア
カウボーイビバップの位相差空間ゲート

という種類を持つ。最後の「人類の技術」については、上記「ワープ型」と同じとも言える。

タイムトラベルとの関係
相対性理論との関係で、超光速航行とタイムトラベルは双子のようなものである。超光速航行自体も、相対性理論的にはタイムトラベルの一種とも言える。1光年先に光速に近い速度で1年で行き、そこで1年前にタイムトラベルすれば今回の定義の光速突破となる。また光速に近い速度を出せば、未来にタイムトラベルすることも可能となる。過去には行けないが…

おまけ
世界で初めて「ワープ・バブル」生成に偶然成功 - GIGAZINE

主な一覧
私見ではありますが、主要なものを集めました。あなたの好きな方式はありますか?
こういう決まりごとに対し「この作品はどうアプローチするのか?」という目で見るのも、SF の楽しみ方の一つです。

FTL(Faster Than Light=超光速)ジャンプ(『GALACTICA/ギャラクティカ』)
超絶駆動(オーバードライブ)(『カエアンの聖衣』/バリントン・J・ベイリー)
オルダースン航法(『宇宙の傭兵たち』ほか/ジェリー・パーネル、『神の目の小さな塵』ほか/ラリー・ニーヴン&ジェリー・パーネル)
コラプサー・ジャンプ(『終りなき戦い』/ジョー・ホールドマン)
次元波動超弦励起縮退半径跳躍重力波超光速航法(バニシング・ドライブ)(『トップをねらえ!』/ガイナックス)
ジャンプドア(『ジャンプドア』シリーズ/フランク・ハーバート。同シリーズにはFTL(超光速)宇宙船も登場する)
重力推進(『ガニメアン』シリーズ/ジェイムズ・P・ホーガン)
振動ドライブ(『キャプテン・フューチャー』シリーズ/エドモンド・ハミルトン)[4]
相転移航法(『ロスト・ユニバース』/神坂一)
チェレンコフ推進(『宇宙の戦士』/ロバート・A・ハインライン、『スターシップ・トゥルーパーズ』シリーズ)
超空間ジャンプ(『知性化シリーズ』/デイヴィッド・ブリン)
超光速跳躍(『ミニスカ宇宙海賊』/笹本祐一)
超次元航法(『未来人カオス』/手塚治虫)
跳躍転位航法(『新竹取物語 1000年女王』/松本零士)
ハイパースペース・トラベル(『ファウンデーションシリーズ』他/アイザック・アシモフ)
ハイパードライブ(『スター・ウォーズ』、『超人ロック』/聖悠紀、『YAT安心!宇宙旅行』、他多数)
超空間駆動機関(ハイパードライブ)(『ノウンスペース』シリーズ/ラリー・ニーヴン)
平面宇宙航法(『星界の紋章』シリーズ/森岡浩之)
ボソンジャンプ(『機動戦艦ナデシコ』、『遊撃宇宙戦艦ナデシコ』/麻宮騎亜)
リープ航法(『宇宙の騎士テッカマン』他)[4]
量子スリップストリーム航法(『スタートレック:ヴォイジャー』)
量子テレポート(『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』)
ワープ航法(『スタートレック』、『宇宙戦艦ヤマト』、『ダーティペア』シリーズ/高千穂遙、『銀河英雄伝説』/田中芳樹、他多数)
ワームホール航法(『太陽の牙ダグラム』)

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