見出し画像

片思いのカウンター(短編作品)


 好きな子がいた。だけど、彼氏持ちだ。
後鳥羽という、不良と付き合っている。
学級長に推薦されるような子が・・・・・・
また、何でと言いたかった。
 ちなみに俺は、男子学級長だ。彼女は学級長をすこぶる嫌がっていたが、俺は嬉しかった。ちょっと活躍できそうだし、接点が多くなるのでラッキーだったが、この有様だ。残念でならない。諦めようとしたが、それはできなかった。
 なぜなら、学級長同士だから自動的に接点は増える。
そのたび、ハートマークは大きくなっていく。俺はやっぱり、
彼女が好きなんだなぁと思うと同時に、少しくらい、目の端に掛けて欲しいとも思うことがある。彼氏とそうじゃない人の線引きを、感じる時がある。
それが、辛い。やっぱり、不良のあの男が好きなんだなぁと心の底から、湧き出てくる嫉妬心がある。
学級長同士なのだから、同じ同志なのだから、もう少し嬉しい反応を見せて欲しいと思うことだってある。俺は彼女が好きで。彼女は後鳥羽が好き。苦すぎる現実。

 ある日の放課後。廊下で職員室に向かう途中に、その彼女と後鳥羽が廊下を歩いている。もっと他所にいってくれよと思いながら、二人に目を向けないようにする。
 前方をしっかり見ていなかったせいか、よりによって後鳥羽の肩にぶつかってしまう。
ドンっ
「おい!お前 どこ見てやがる」
うわぁ ベタベタなセリフが降り注がれる。
こんな、単純で馬鹿な奴がどこがいいのか。粗くて自分の非を認めないような奴と一緒にいてどこが幸せなのか?(まぁ、今回は前を見ていなかった自分が7割悪いのだけれど)
「何とか、言えよ!」
冷静さを装いながらも、焦っていた。彼女は後鳥羽を止めようとしている。
そして、出た言葉は最悪だった。
「お前、ちゃんと制服のボタン閉めろよ!」
「あぁ?そんでぶつかってきたのか!!」
「あったりめぇだぁ!! 俺様は学級長だぞ!」
「テメェがしっかり、締めてりゃいいだよ!」
ドコン!!
殴られ、尻餅をついた。
痛かった。
「ちょっと!!!大丈夫!」
彼女が。僕の元へ寄ってきた。
そして、言った。
「殴ることないでしょ!!!」
彼女は激しく怒ってくれた。キュンとした。
これを、「キュンです」というのかあ とひどく納得した。

「いこーぜぇ」と後鳥羽はやる気なく言うが、彼女は、
「あっ!鼻血出てる!」そう言って、ティシュは鼻に詰めてくれた。
後鳥羽は勝手にしろ!そう言ってを去っていってしまった。
彼女は、俺にさらに寄ってきて「大丈夫!?」と心配してくれた。石鹸の香りが鼻をくすぐり、俺の心はお花畑になる。
このまま、しばらく倒れていようか。なんか、最高にいい感じだし、最高にドラマチックだ。
これを、青春と呼ぶのかぁ 
この場に、相応しいセリフを言わないととまた焦ってきた。
ふと目をやると、彼女の胸元に目がいく。
「あっ」  
ブラジャーが見えた。
「どうした!?」
「あっ あ、 いやぁ 君もちゃんと制服のボタンを締めろよ・・・・・・。
バチーン!!
ビンタされた。鼻につめた、ティシュが吹き飛ぶ。血も飛び散る。

あぁ、これを絶望というのかぁ・・・・・・。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?