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髪を切る理由って (短編小説)


行きつけの美容院へ行く。
髪が伸びたから、切る。ただそれだけのため。
斜め後ろの奥様。ギャルの名残がある。
ぺちゃくちゃと担当の美容師と話をしている。
私とは相対的。
「最近の子って本当に積極的じゃないよねぇ 全然引っ張ってくれる気配がないっ」
とギャル奥様
「ねぇー」
「あれだけ、草食系だとさぁー 女の子大変だよねぇー」
「確かにそうだ。そう。大変だ。アプローチするのがねぇ」
と美容師さん

この方々は、イケイケなのだ。ギャル奥様 まだ誰かにモテようとしているのか?
いや、違う。女性はいつまでも綺麗でいたい。

私は、女性だけど綺麗にするという意識があんまりないかなぁ。
女子力とかどうでもいい。

ありのままを見てもらいたいから。
そんなことは、口が裂けても言えない。
両親からも心配される。女っ気がないと口が裂けても両親は言わないけれど、
顔を見ればわかる。そろそろ・・・・・・
みたいな顔をされるのが鬱陶しい。

そう思ったから取り敢えず、髪を切っている

また髪が伸びるころ、私はどうなっているのだろう。
どうもこうもない。どうなってもいい。
着飾ればいつかはバレる。

ありのままで。
この言葉が綺麗事だと思うことがある。
だから、私はそんな言葉を使わない。
だけど、体現はしたい。

髪を切り終わり、店を出る。
春の息吹が優しく顔を撫でる。
いつもより、風が気持ちよく感じる。



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