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唯一「ジッ」としていたいこと見つけました!!!(短編作品)


 サラリーマンの道元は、仕事前から項垂れている。便利な世の中になっても、日々ジッとしなければならないことが、うんざりするほどあるからだ。
順番待ち・会議・デスクワーク・車の渋滞等・・・・・・言い出したらキリがない。精神的にもそうだ。常にジッと我慢。
ジッと席に座り、パソコンとジッと睨めっこ。電話が鳴れば、クレームにジッと堪える。
 昨日の会議でも、ただただジッと聞くだけ。言いたいことを言えず。だが、今日こそは!と思い勇気を振り絞っても発言しても、一瞥くべるだけで、サッと次の話題にすり替えられる。
もういい加減にしてくれっ!
もう限界だと思っていたら奥歯に激痛が!鏡で見ると、奥歯が明らかに変色している。おいおい虫歯かよ!
もっと五臓六腑がイカれるような病気がいいのに!
歯医者だったら、また地味にジッとしなきゃならない!
ジッとするのはもう懲り懲りなのに!うんざりなのに!
しかし、うんざりする程の激痛に負け、業務後しぶしぶと歯医者に。
 しかし、歯医者さんは最高であった。綺麗な歯科助手さんが急接近してくれる幸せだ。香水の香りが鼻腔をつき、まどろんでしまう。歯科助手さんはジッと僕の顔面を見つめている。ドキドキするがたまらない。
歯科医に替わり治療を受けているときも、歯科助手さんは、心配そうな面持ちで、ジッと見守ってくれている。嬉しい・・・・・・
ここでは、ずっとジッとしていたい。見つめられていたい。
口をいくらでも開けていたい。
ビバ 歯医者!!

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