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引越しが終わったら公開する記事

1年半ほど住んだ場所から引っ越した。

家から少し歩いた所に川が流れており、そこに渡された橋をよく使っていた。
橋の上から見る景色が私は好きだった。
背の高い建物と高速道路に囲われた、都会の汚い川だ。
それが揺らめきながら、電灯やビルの灯りを反射してキラキラする。
綺麗だと思った。

この川を見ながら考え事に耽るようなことをしたいな、と思いながら、結局一度もそれは実現しなかった。恥ずかしかったから。

「将来は海や湖の近くに住みたい」とよく話しているのだが、この調子なら、実際は水辺に住んでもあまり利点がないのかもしれない。
いつでも水辺に行ける環境で家に引きこもっているのは、アマプラで見放題になっている作品を後回しにしてしまう感覚に似ている。

ただ、そう思いながらも、橋を渡る十秒そこらの時間で、私は何かを得ていたようにも感じるのだ。やっぱり、水辺に住みたいな。うん。


実家を出て初めての一人暮らしだった。

ずっと自分の部屋にこもって好き勝手過ごしてきたから、別に実家を離れてもなんてことないだろうと思っていたのだけれど、いざ入居してみるととんでもなく寂しかった。
人のいる気配がすることは、思ったよりも大きなことだった。

当時の恋人は一人暮らしの先輩で、お風呂上がり、何日も同じちっちぇ〜タオルで体を拭いているのを見て不思議に思っていた。

自分も一人暮らしを経験したことでその気持ちが分かるようになった。
実家で毎日洗濯がされることの有り難さも。

料理だって、自分がここまでまともにするとは思っていなかった。
肉とか野菜、作ったおかずもとりあえず冷凍しておけばいいことを学んだ。あと、業務スーパーは安いってこと。

実家にいた頃より配信がしやすくなった。料理配信とか、靴磨き配信とか、いろいろした。

コスプレしたまま堂々とトイレに行けるようになった。キョンシーガールのコスプレをしたら画面が白飛びして、出しているはずの肩がカベと同化して無くなったりもした。

友達を呼んでコラボ配信もした。友達がメイク時にこぼしたラメがフロアタイルを輝かせ、私が不用意に置いた服たちがキラキラしている時期があった。

ライバーをしていると、騒音問題で隣人とトラブルになることがよくあると聞く。だが、私は配信していても怒られたことがなく、ありがたい環境だったと思う。


ただ、マンションの火災報知器が頻繁に鳴った。本来そんなことがあってはいけない。

住み始めてすぐに3回鳴った。3回目にはもう外に出なくなった。
大抵20時〜24時あたりに鳴ることが多かったが、最近は朝っぱらにジリジリ聞こえることもあった。その音で起き、YouTubeを観ながらメイクをして、エレベーターが動かないので階段で下って出勤していた。
都度駆り出される警備会社の人がマンションの前に居て、困り顔で端末に何かを打ち込む姿が可哀想だった。


私は、その家も、その町も、好きだった。気になっている喫茶店とか、ご飯屋さんとか、もっと色んな場所に行けばよかった。
まあ今からわざわざ足を運んだっていい。これからもっと好きになってもいい。

今は少し寂しいけれど、新しく住む場所も魅力的なところだ。新居でもいろんな思い出を作っていくのが楽しみである。

今までありがとう。


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