【執筆記録】情報誌「障害をもつ人々の現在」(2011年)

情報誌「障害をもつ人々の現在」「先輩からのメッセージ ヘルパー制度と一人暮らし」(2011年、全国障害学生支援センター)より

こんにちは。日本福祉大学子ども発達学部心理臨床学科2年の中野まこです。現在大学のある愛知県美浜町で障害者自立支援法や医療のサービスを利用しながら一人暮らしをしています。私にはウルリッヒ型先天性筋ジストロフィーという障害があり歩行困難なため電動車椅子を使用しています。また障害の影響による呼吸機能低下のため睡眠時のみ人工呼吸器を使用しています。身の回りの介助を必要とする私がどのようにして一人暮らしに向けて準備をし、現在生活をしているのか紹介したいと思います。

●大学生活に向けての準備
 日本福祉大学進学を決めたのは高校2年生の冬でした。地元が山口県なので進学となると下宿生活をしなければなりません。そこから一人暮らしに向けての準備を始めました。
 受験勉強と並行しながら、大学の先生から紹介していただいた美浜町にあるNPO法人のヘルパーの事業所、大学の障害学生支援センターとのメールのやりとりをしていきました。どのような支援が必要なのか、どんな生活にしたいのか、ヘルパー制度を利用するための障害認定区分について、医療について、下宿先はどうするのか、など何度も話し合いました。大学合格が9月末にわかり、それから本格的に一人暮らしに向けての準備をしていきました。どのような生活にするか考えるために「大学生活シミュレーション」を作成し、それを利用して障害認定区分の面接にも挑みました。その際自分が必要としているヘルパー時間数を提示することができました。実際に作成したものを添付資料として紹介します。大学に実際に入ってからの生活はシミュレーションとは随分異なりますが、具体的に生活をイメージしたり、支援センターや訪問リハビリの方たちと打ち合わせをする時には役に立ちました。また何度か美浜町に伺い実際に下宿するアパートの見学も行いました。契約したアパートではリフォームが必要だったので建設業者の方とも連絡を取ったりしました。更に医療機関も確保するために、大学近くの病院にも受診に行きました。訪問リハビリと訪問看護を確保することができたので一番不安だった医療面でも安心することができました。
障害認定区分も決まりヘルパー制度の利用も可能になり、またアパートのリフォームも無事終わり、生活の環境が整った上で愛知県美浜町に引っ越すことができました。準備段階では本当に一人暮らしができるのかと不安でいっぱいでしたが、大学に合格する前からたくさんの方と相談をして大学生活に向けて準備をしてきたので、良い状態で一人暮らしを始めることができたのだと思います。

●現在の生活の様子
私には重度訪問介護というサービスが給付されています。大学から帰った後から翌日大学に行くまでヘルパー制度を利用しています。食事、入浴、トイレ、睡眠時の人工呼吸器管理など生活のほぼ全ての支援をお願いしています。ヘルパーさんに夜間も泊まってもらい人工呼吸器トラブルにも対応してもらっています。料理については「自分で作りたい」と考えていたので、ヘルパーさんと一緒に作って一緒に食べています。ヘルパーさんには私が困難なことを代わりにしてもらっているという感覚です。現在約15人のヘルパーさんにお世話になっていますが、そのほとんどの方が同じ大学の学生さんなので、大学生活の話もできたり、時には一緒に試験勉強もしたりしています。
ヘルパーさんは美浜町にあるNPO法人のヘルパーの事業所から紹介してもらって、1度同行などした上で、これからお世話になるかどうかを自分で決めています。セルフコーディネートと言って、「このヘルパーさんにはこの曜日に入ってもらう」というように、時間や曜日の指定も自分で決めて、直接ヘルパーさんに連絡しています。

●ヘルパー制度を使って感じたこと
 「自分でできることは自分でする。だけど時間がかかることならヘルパーさんにお願いする」というのが私の考えです。一人暮らしをし始めた頃はヘルパーの使い方が上手くできず、時間がかかったとしても自分でやっていたことがありました。そのため毎日の生活が窮屈で疲れ、自由に使える時間がないなと感じていました。「これはヘルパーさんにお願いしたほうが楽だ!」と生活してきてわかってきました。自由な時間ができた分、疲れを溜めなかったり、勉強したりする時間に充てることができるようになりました。
 支援をお願いしているヘルパーさんはヘルパー初心者の方がほとんどです。だから慣れていないところもあってまだヘルパー勉強中という人もいます。やってほしいことが上手く伝わらなくて困ったこともありましたが、ヘルパーさんと一緒に私も成長していけたら良いなと思っています。普段からのコミュニケーションはとても大切だと感じており、積極的に話すようにして良好な関係を作っていきたいです。
 今は大学から帰った後の支援をお願いしていますが、機会があれば外出や旅行などの支援にもヘルパー制度を利用したいと考えています。更に私自身の視野も広がるのではないかと思います。

●みなさんへのメッセージ
私の場合、高校は特別支援学校に通って、学校に隣接する福祉施設に入所する形で生活をしていました。看護師や主治医が常時いる所で、ある意味守られた環境の中で暮らしてきました。だから「大学進学するのなら一人暮らしをしたい」と強く思っていました。しかし「一人暮らしできないかもしれない」と準備の段階で何度も思いました。大学生活に向けて悩んでいる人もいるかと思います。しかし自分が「挑戦」しなければ何も始まりません。自分が動き出すと周りの人もきっと力を貸してくれるはずです。一人暮らしは自分の可能性が広がる大きなものだと思います。一人暮らしを始めると、時には壁にぶつかることもあると思います。自分でできることは精一杯努力し、自分だけで解決することが難しければ、周囲の人に助けを求めることも、1つの自立の考え方だと思います。「自分で考え、行動し、実現させる」という、自分主体で進めていくことが、自分自身の力を発揮する大きなきっかけになると思います。

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