見出し画像

経営理念ってなんだろう

学校を卒業して、社会人として右も左もわからない状態の青年のお話です。

彼はとある会社の入社式に出席しておりました。広い会場の正面の壇上には「株式会社○○ ××年度入社式」と書かれた横断幕が掲げられており、ステージ脇には式次第が張り出されております。

式も順調に進み、司会者が式の参加者全員に起立を促しました。そして始まったのは、参加者全員による経営理念の唱和でした。先輩社員が前方へ駆け出してきて、「○○のこころ!」という大きな掛け声の後、全員で声を合わせて「○○のこころ!」と続けます。

唱和がおわり、式も終わると辞令で指示された職場へ新入社員は上司と共に各職場へ赴任していきました。

その後彼に待っていたのは、毎朝の経営理念の唱和です。広い駐車場の端に立たされ反対側には上司が眼光鋭くその声に聴き耳をたてます。
彼:「○○のこころ!」
上司:「声が小さいっ!」「全然聞こえない!」「もう一回!」
などと怒鳴られながら数か月間、何十回、何百回唱えたでしょうか。

もうお気づきのことと思いますが、この「彼」とは私のことです。もう数十年前のお話です。

この会社は新人に対して経営理念の浸透を徹底的に実施しておりました。

日常では「面倒くさいなぁ」「意味よくわからないし」とか思ってたりもしましたが、いざ問題が発生した時など、この経営理念っていうものは大したものだと感心したことがありました。

ご経験をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、お客様からのクレーム対応ほどつらいものはないと、当時の私は考えておりました。

しかし、お客様はこの会社の商品にお金を払うだけではなく、サービスやこの会社を利用しているステータスなどにもお金を払っているのです。

様々なクレームに対応しているうちに、そのことに気づき、経営理念の「○○のこころ」の中にあった「感謝」「奉仕」などの意味がわかり、その後はクレームをいただけるお客様に「感謝」のこころで対応することができるようになりました。

それ以上にお客様は私のお給料まで払って下さっているという自覚も芽生えてきたのです。

ものの本を読んでみると経営理念とは「経営者もしくは企業が表明するその企業の行動指針、企業の抽象的・理念的な目的、規範、理想、価値観などを意味する」ものだそうです。

経営者の思いはなかなか従業員には伝わらないと思っていても、「読書百遍義自ずから見る」と諺にもあるように、何十回何百回と唱える事で理解できるようになるようです。

今日お話しした事が全てではないですが、経営理念を掲げているにもかかわらず、なかなか浸透しないとお悩みの経営者のみなさま、是非お試しを。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?