「パン屋ではおにぎりを売れ」を読んでみた

画像1

■はじめに

著者の柿内尚文氏は、これまで50冊以上の本を10万部以上のベストセラーに育てあげてきた敏腕編集者だ。そう聞くと、クリエイティブなセンスの賜物ではないかと思うかもしれないが、著者は自分のことを平凡だと評価する。そんな著者がなぜベストセラーを連発できたのか。それは、自分なりに「考える技術」を身につけ、それを言語化してきたからにほかならない。
本書では、その「考える技術」が惜しげもなく詳細に解説されている。タイトルの「パン屋ではおにぎりを売れ」という発想は、考える技術の1つである「ずらす法」によって生み出したものだ。

■「考える」について知ってほしい3つのこと

「考える」とは、「広げる」+「深める」である。「広げる」とは可能性を考えて新しいものを生み出すこと、「深める」とは本質的価値を考えることである。この両方を実現したのが、「ほぼ日手帳」だ。手帳の本質的価値を深く考え、「LIFEのBOOK」という価値づけをしたうえで、バリエーション豊かな手帳カバーや使い方事例、手帳をテーマにしたイベントなど、その楽しみ方を広げることにもトライしている。このように、どんな議題でも、「広げる」と「深める」が「考える」ことのベースとなる。

次に、「考える」は「思う」や「知っている」とは違うことを認識しよう。「考える」のは、単に頭に浮かんでくる、感じることを意味する「思う」とは異なる。目的のために意識的に思考することである。この「思う」を「考える」と誤解しているケースがじつは多い。
また、調べて「知っている」ことを「考える」と勘違いしているケースもある。インプットはあくまで「答えを見つけるための材料」だ。調べてまとめることはゴールではない。
さらに、「考える」には「論理的に考える」と「非論理的に考える」の2つがある。
「考える」というと「ロジカル・シンキング」を思い浮かべる人が多いだろう。だが、いままでにないものや社会の未来を考える際には、それだけではなかなか答えが出ない。「未来」を考えるときに必要なのは、「非論理的に考える」ことだ。
ロジックから始める思考と、直感や思いなどの非論理的なものから始める思考を組み合わせることで、「考える力」がレベルアップしていく。

■考える技術が未来を変える

「町中華」という言葉をご存知だろうか。昔ながらのラーメンと餃子とチャーハンが売りで、安くてボリューム満点。そんな何の変哲もない中華料理店のことだ。ところが、「町中華」と命名され、テレビやSNSで紹介されるようになった。すると、中華料理店自体は何も変わっていないにもかかわらず、若い女性にまで人気の魅力的な店に変貌を遂げた。このように、同じものでも、視点を変えるだけで魅力的になったり違う価値が生まれたりする。考える技術を使えば、これからの時代のキーワードたりうる価値をつくることができる。しかし、この技術を身につけている人は、思いのほか少ない。よって、早く習得すれば強烈な強みになる。

「考える」には忍耐が必要だ。しかし、ほんの小さなことでも、毎日積み重ねていくことで、変化は確実に訪れる。やがて考える技術が身につき、行動が変わり、脳も変化していく。そうなると、その影響力は周囲にまで広がり、他人の考えや行動をも変えていくのだ。自分が思い描く未来を実現できるか否かは自分の思考にかかっている。

■アイデアを生み出すための3つのルール

ルール1:ゴールを決める
まずは目的であるゴールを設定しなければならない。悩みの多くはゴールがわからなくなることで起きている。また、常識にとらわれるあまり思考停止し、手段の目的化が起こることも多い。「そもそも」から始めてゴールを決めれば、思考の迷路に迷い込んでしまうことはない。

ルール2:インプットして現状を整理する
次に行うのは現状の整理だ。具体的には、「課題を決める」「必要な情報をインプットする」「インプットした情報を整理する」という3つのプロセスを経る。
最初は、ゴールに向かうための課題は何かを決める。
次に、課題を解決してゴールに向かうためのインプットを行う。目的が明確であれば、意識している情報が自然と目に入ってくる「カラーバス効果」が起き、効率的なインプットができる。ここではあまり時間をかけすぎず、60%くらいのインプットができたら先に進むとよい。最後に、インプットした情報を整理する。その際には、人間の内面にある普遍性、本音を考えること、そしてインプットした情報を疑うことの2つを意識するとよい。

ルール3:考える=「考えを広げる+考えを深める」
考えるには、「考えを広げる」と「考えを深める」の2つの要素がある。
また考えるにはいくつか方法がある。
まずは、スティーブ・ジョブズも使っていたといわれる「かけ合わせ法」だ。これにより思考が広がり、「うんこ漢字ドリル」「乳酸菌ショコラ」など、多くのヒット商品が生まれている。
具体的には、ヒットの二大要素である「新しさ」と「共感」を求めて、「出会ったことがない言葉と言葉」をひたすらかけ合わせていく。たとえば、社員の離職率を下げるプランを立てるとしよう。それならば、「脱離職ランチ」「脱離職休暇」「脱離職有名人」「まいにち脱離職」などと、「脱離職」を中心に思いついた言葉をどんどん組み合わせてみる。すると、そのうちに「これは何かできそう」というものが生まれる。これが、思いもよらない面白いものを生むきっかけになるのだ。
また、「ずらす法」がある。これは、すでに存在するものに新しい風を吹かせたいときに使える方法だ。
著者はこの方法で、本をベストセラーにした経験がある。もともと若手ビジネスパーソン向けの自己啓発書としてつくった『「のび太」という生きかた』という本は、なぜか40代の女性が買っているというデータが出ていた。やがて小中学生から感想の葉書が届き、その母親が買っていたことが明らかになる。そこで著者は、この本のポジションを、「子ども向けの読書感想文にも使える本」にずらす策を打った。すると、40万部を超えるベストセラーが誕生した。こうして、すでにあるものの価値をずらすと、新しい価値が生まれる可能性が高まるのだ。

■考える時間が自分らしさをつくる

著者は手帳のスケジュール欄に「考える時間」を書き込んで、専用の時間をとっている。おすすめは、自分のペースに合わせて、30分単位でも予定に組み込んでいくことだ。多くの人は、緊急度が高いが重要度が低いことに時間を取られがちだ。逆に、重要度が高いが緊急度が低いことには時間をかけづらい。しかし、それでは自分のやりたい仕事ができなくなってしまう。だからこそ、考える時間を確保することが重要となる。国民的ヒット番組を何本もつくってきた有名テレビプロデューサーなど、ずば抜けた成果を出す人たちは、「時間をかけて考え続ける」という点で共通している。考える技術をベースに継続すれば、考えることが楽しくなってくるはずだ。このように自分が考えたことを実行していけば、より自分らしく生きられるようになる。

■まとめ

御社webに移動してから「考える」という時間が増えたなと感じます。
ただ、この「考える」という作業には明確に終わりがない、今の自分の知識の中でしか考えれないから生産性が低いのではないかと思っており、「考える」というところに時間を割くのはあまり良くないんじゃないかと考えていました。
しかし、本書を読んで思考法を使うことができれば、考えるという時間の生産性はあげられるなと感じました。
「かけあわせ法」や「ずらす法」を使えば、自分の知識外のアイデアを生み出すことができると思うので、今後何かを考える際は活用していこうと思います。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?