好きなことをやるという決断
よく幼い頃、将来は何になりたいの?
と聞かれた。
私はケーキ屋さんと答えていた。
今思うとそんなに職業や経済のことも知らないのに、これになりたいとか単純な動機でしかないよなあと思うけれど、単純な動機は意外にも大切なのかもしれない。
自分の中で振り返ると将来を決めなくてはいけないポイントは何度かあった気がする。
まずは、大学受験。
実は高校の受験を失敗し、全く興味のない高校に仕方なく進学した自分は、高校入学前から高卒資格を取るため、そして大学受験を前提に高校に行くことにした。
大学受験について具体的に考えるようになった高校2年。
私の場合は行きたい大学と言うよりも、4年間で何をしたいのか、その後社会に出るにあたってどんな自分になっていたいのかを考えた。
選択肢は三つだった。
一つは高校時代に海外旅行に行き、外国に興味が出たことから、外国語大学、もしくは海外の大学を受験して留学。
一つは家族が医療関係者が多いこともあり、看護師。
一つは自分が好きな服やデザインの勉強ができる芸大。
どれも努力次第で実現できそうだなと思ったけれど、自分が一番自分らしく楽しさがあるから大変さも超えられそうな、あえて家族も全くアドバイスできないジャンルに挑戦することを決断した。知らないことに挑戦できるという事でワクワクが止まらなかった。
本当に単純な動機で芸大を受験しようと決めたのは大好きなファッションについて大学で学んでみようと思ったからだったけれど、受験のための美大予備校に通いだしてから、面白いことをやっている大学をたくさん知って、視野がさらに広がった。
しかしすでに美大予備校に通いだした時点で、挫けそうになった。
それまで得意だと思っていた絵も工作も造形も本当に全くうまくできなくて、評価も低く、さらには勉強の成績も受験に必要だと知って愕然とした。
まだ始まったばかりなのに、いや始まってもいなかったのかもしれない。
でもひたすら芸大に通う自分をイメージした。まだ出会いもしない友人に心を弾ませ、楽しい日々を妄想した。
希望の大学に行けるように、受験対策課題が予備校で始まってからは先生に質問をしまくって、恥じらいとかを捨てた。自分が足りなかった部分を指摘してもらうことがだんだん楽しくなってきていた。
そう、大変ささえも楽しんで超えていけるようになっていたのだった。
絵のスキルとかそれだけで判断しない受験内容の大学を受けることにした私は、さらに必要な小説を読み込んだり、予備校の先生のアドバイスで好きなイラストレーターの本を買って夜寝る前に眺めてその人の特徴を自分の中に取り込めないか研究した。
希望の大学に行けることになった時、一つの決断から未来がどんどん広がっていく楽しさを知った。
そしてその時に決めた夢を今もまだ叶えられずにいる。
大きな夢だからこそなかなか叶えられず、でも今もその夢があるから継続して好きなデザインに関わっている。やればやるほど奥深くまだまだ満たされない。
好きなことをやるという決断は勇気がいる。
でもその先に見えてきた新しい視野を自分の中で感じ取り、どんどん変わっていく自分が楽しい。予測もしないことが起こることも、振り返ればターニングポイントのように感じる。
最初に述べたケーキ屋さんという何も考えていなかった頃の私の将来なりたいもの。
不思議なもので今は私の夫がケーキを作っている。人生はどうなるか本当にわからないからこそ面白い。
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