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7月の散文、思考の整理

上質で厚みのある高い絨毯の上に質量のあるボールが落ちるような声。

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月を見上げるのは、そこにあるようで何億光年もの距離があるからなのかな。月そのものではなく我々はその途方もない距離を見ているのかも。何かと自分の距離を測る、その距離を認識するっていうのは、自分の現在地を知る上でとても意味がある。
私が他者にに興味をつのも、私が今生きている位置を知る上で重要な意味がある。
帰属する位置が明確な、

ヤマアラシのジレンマと言うが、性的な結びつきがある異性間の関係性とそれらのない同性間の適切な距離っていうのは一般的に違うのだと思う。
わたしはそれがよく分からない。よく分からないのは他者を"自己とその他の他者"としてしか認識していないから。ただ、一般的な距離感の差があるのは分かっているから、なんていうか

それはある種の認知の歪みのようなものかもしれなくて、健全ではない気がする。

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誰も住まなくなった実家を売るらしい。自分の荷物を回収するように鍵を渡された。人が住まなくなった家というのは一気に老朽化がすすむのだ。べつに蜘蛛の糸が張っているわけでもないのに、そこに足を踏み入れた時、そんな風に思った。
もちろん誰もいなくてしん、としている。床板が冷たくて少しざらついているよう。雑に整理されたようで、アルバムが一箇所にまとめて詰まれていた。
空っぽの空き家。何キロも離れた場所に存在している空き家。記憶だけを内包したそれは、まさに記憶の神殿のようにそこにあって私はその鍵をたしかに握っている。

2023.7.25

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