旅不慣れな私の旅行記~有馬編~
12月、初旬。
地元から市バスで行ける有馬にやってきた。
有馬を訪れるのは人生初。
一人旅をするのは人生二度目。
40分ほどバスに揺られて到着した有馬は晴れ渡っていて空気も澄んでいた。
風はひんやりしていたけれど、マフラーは要らない程度の寒さ。
歩くにはちょうど良くて、人も少なかった。
久々の一人旅に、私はワクワクしつつも以前の二の舞にならぬよう気を引き締めた。
と、言うのも記念すべき一人旅1回目は、割愛するが、結構散々なもの。
お時間ある方がいれば、こちらのリンクから読んでみていただきたい。
思い立って南へ向かった。遠く離れたいと、私は「海の中」をめざした | かがみよかがみ (asahi.com)
なかなかに恥ずかしい一人旅デビューで、未だにトラウマ。
あの頃の私は若かった、では片付かないくらい自意識過剰だった。
あれから多分8年くらい?
なんの心境の変化かと言えば、なんのことはない。
1度目の一人旅の理由と同じ。
現実に行き詰ったから。
ここ1年、私は随分と頑張った。
しかも報われない頑張り方をした。
そうして、行き詰った。
1+1=2
誰も幸せになれない頑張り方をした。
このままじゃ、私、辛いな。
そう感じてから随分経って、内臓や心が少し痛くなってきた。
大した痛みではなかったけれど、私は急遽休日をもらうことにした。
その休日全てを部屋でだらだら過ごすのも手だったが、どこかに行きたいような、この環境から離れた方が良いような…そんなことを考えながら何の気なしに私のだいぶ年上の友達に事の経緯を喋った。
この人とも8年程の付き合いになる。
豪胆な女性だ。ちなみに動物占いでは珍しい象らしい。なんとなくそんな雰囲気のある女性。占いの類はあまり信用しないが、深く納得したのを覚えている。そんで私は羊で、これはまぁ、なんともどこでもいるような種類で少しがっかり。
ーーー
人の話をよく聞いてくれる彼女は、休日をもぎ取った私に一言。
「どっか行ってくれば?」
その一言を聞いて私の脳内に
『有馬』
その二文字が浮かんだ。
そこからの行動は早かった。
彼女と電話をしながらホテルを取り早速明日行ってくると告げた。
夜の22時を過ぎていた。
それでも、ホテルが取れた。現代のシステムに感謝だ。
そんなこんなで突発的に始まった一人旅。
有馬の街をぶらぶらと歩く。
と言っても、温泉街は範囲がそこまで広くない為入り組んだ小道を上がったり下がったりしながら雰囲気を味わう。
この道さっき通ったな、あれ、違うか。と一人心の中で喋り続けながら探索を進める。
側溝から湯気が上がっていたりして、流石温泉街だなぁ、と歩きながら感激。
川とか、小さいセブンイレブンとか、なんか私の琴線に触れるものが多い街だ。
歩いていて気がついた事がある。
それは、脳内で喋りまくるもう1人の私がいるって事。
あてもなく歩いて景色を見ているとその感想を言い始める私がいたり、普段思っている事とか考えていることをベラベラと話しまくる私がいた。
はた目から見れば静かに歩いているだろうけど、脳内は騒がしい。
有馬の静かなお昼の雰囲気の中、私の脳内だけがしっちゃかめっちゃか喋っていた。
そうして、しばらくもう1人の私を自由にさせておくと、一瞬言葉が脳内から消えた。
次に今度は心臓の方から言葉が出てきた。その言葉は私が行き詰った原因を言い当てていて「なるほどなぁ」と深く理解した。
つい先日読ませていただいた『メンタル強め美女 白鳥さん』。
その中に書かれている事がドンピシャ。
「他人には普通に謝れるのに、自分にはなかなか謝れない」
自分に我慢させていても私は全く謝らなかった。だから、こうして一人になった時に私がたくさん喋り出した。その勢いを例えるなら…お母さんに構ってほしいけど、人前でお利口さんにしている小さい子供が堰を切ったように話し始めた感じ。
私の話す全ては、私のことを思っての言葉ばかりだった。
ここに否定形が少なくなっていたのは、私が周りに成長させてもらっている賜物だ。内側に敵がいなくて本当に良かったと思う。
と、言う事で一段落付いたので温泉に浸かるため〈金の湯〉を目指す。
有馬と言えばオレンジの濁色温泉。
ちなみに、オレンジの温泉を〈金の湯〉
普通の温泉を〈銀の湯〉と呼ぶらしい。
意気揚々と自動扉をくぐり、下駄箱に靴をしまう。
そこで先ほど歩いている時に靴下に穴が開いたことを思い出す…。
なんっでこんな日に…!!
私ってそういうとこある、恰好が付かないと言うか、締まらない…!
グイグイ先っぽを引っ張ってなんとか誤魔化し、足の指にギュッと力を入れて穴を隠す。
こんな日に限って、受付と券売機の辺りに従業員さん多数。
しかも、お客が少ないから皆さまお手隙…。
なんなら私の事待ってくれている。
券売機の近くにいたのが大学生くらいの男の人で、それもまた恥ずかしさを倍増させていた…。
券売機前で何を買えばいいのかも分からない。てかタオル類持ってきてないわ。良い値段するね、タオル。
全然いいんだけど、靴下の穴が気になり過ぎて通常の3倍はワタワタした。
見かねたお兄さんが優しく教えてくれてなんとか入場。
靴下の穴はバレなかった。きっと。
少し熱めのお湯。
色んなお風呂があるわけではなく、金の湯と少し温度の低い普通のお湯のお風呂があった。
金の湯は真ん中で区切られていて、一方は私が入っているところより2,3度高い温度だった。
私の入った方だって十分熱いのに、さらに上の温度なんて火傷するわ。
流石に熱くて挑戦もしなかった。私の他に4,5名いたけど、皆入ってなかったな。
お湯の温度に慣れ始めた頃、やっと周りが見えてきた。
金の湯面にはぼんやりと湯煙りが立っていて、その先にいる入浴している人や体を冷ますためにヘリで休んでいる人たちが皆なんだか魅惑的に見えた。
湯けむり美人、って言葉があるけど確かにその通りだなっと思う。
柔らかい曇りガラスから差し込むお昼の光と湯けむりが良い雰囲気作ってて、そこにいる女性の裸体が綺麗だった。
モデル体型や胸が大きいとか理想は世の中に沢山あるけど、どんな体型でも、年老いてようが若かろうが一緒にお風呂入ってる人たちは皆綺麗だった。私もそっちから見ればちゃんと湯けむり美人になれてるんだろうか、と。そうだったら嬉しい限りだなと妄想しながらお湯に浸かった。
湯けむりって不思議、本当に煙みたい。じっくりと見た事なかったかも。
温泉でポカポカした私は、帰りも靴下をギュッと足指で握りながらそそくさと退散。ホテルへと向かう。温泉街から離れ5分ほど歩いた坂の上にあるホテルだった。
その際、見たことも無いアニメ?ゲーム?の『ヒプノシスマイク』の「あぁ、オオサカdreaming'night」の2分くらいのCMみたいな(途中でフェードアウトしちゃうやつ)を何故かYouTubeのオフラインに落としてて、それを聞きながら向かった。
ほんと、なんで入れたのか分かんないんだけど、「あなたへのおすすめ」で上がってて適当に入れたんだよね。
おかげで、『はいどーもー、どついたれ本舗です♪』の歌詞を聞いたら有馬の清々しい景色を思い出すと言う謎体質になってしまいました。
ホテルでいったん休憩を挟み、日が沈みだす前に夕食の為また外出。
お蕎麦が食べたかったんだけど、でも温泉饅頭も食べたい。
だけど私のお腹はなかなか減らない。むしろ私は空腹を感じることが稀だった。
これは私の体質が原因だけど、減らなくてもご飯は食べられるのであまり気にせず、色々と街を物色。
1度目の散策では見つけられなかったジェラート屋さん。
何気にジェラートというものを食べるのが初体験。アイスとかは時々食べるけど、ジェラート専門店ってなかなか見つけられなくない?
美味しそうなチョコやバニラも並ぶ中、私がチョイスしたのは有馬サイダーと日本だったかなんか1位に輝いたらしい金柑甘酒!
甘酒は実は苦手だから、ちょっとドキドキしたけど…。
どちらもほんっとに美味しかった。
いろんなお店で『鉄砲水サイダー』という文字は見てたんだけど、有馬はこのサイダーが有名みたいだ。
サイダーのジェラートはどこまでも爽やかだし、金柑甘酒は優しくねっとりした甘味がある中で、金柑らしい酸味と少しの苦みで飽きが来なくて最高に美味しかった。あっという間に完食。
次にぶらっと立ち寄ったお店で酒まんじゅうを食べる。
こちらは写真無し。何故なら買ってすぐ外のベンチで食べたから。片手がふさがった状態で写真を撮るガッツは私には無い。
こしあんがサラサラで、生地はあったかいモフモフした感触があって酒まんじゅうは大好き!お酒は飲めないけど。
その後、お土産を見て回る。
この旅の後押しをしてくれたビジネスパートナーには佃煮を郵送した。
話は逸れるけど、これが彼女の元に2日後に届きお礼の電話がかかってきた。
その際彼女は、「有難くご相伴にあずかります」と言って嬉しそうだった。
そして、私はこの「ご相伴にあずかります」が凄く美しく丁寧な日本語だと思った。彼女もまた私の贈った佃煮で私の旅に参加してくれた気がした。
くぅ、私もそういう言葉がサラッといえる女性になろう…。
話は有馬に戻って、有馬では山椒も有名。
どこを見ても山椒を使ったものがある。
山椒専門として置いているお店も多々あった。
そこの店員さんに「有馬って山椒が有名なんですか?」と質問。
すると店員さんは
「数年前から力を入れているんです。有馬でよく育つみたいで。有馬は完全に山椒推しになってます。」
推し、かぁ。なるほど。
この推しって言葉も凄いよね。なんか好きな物への行動全部がこの言葉で片付く気がする。
推しだもん、そりゃしかたねーや。
乗るよ。
沢山の山椒アイテムを購入。
七味、一味、柚子七味…。図らずも薬味が多くなった。
でも、その中で1番好きになったのは、山椒出汁茶漬けの素。
私は誕生日に何が食べたいか聞かれて、心の底から「お茶漬け!」と言うくらいお茶漬けが大好き。
お茶漬けの素はそこまで期待してないんだけど、この山椒茶漬けの素、マジで美味しい。
山椒の薫りと出汁の味が最高によくて、スッキリする。
アラレも入っていて香ばしい。
コレ、本当にいい買い物した。また買いに行きたい…!
買い物を終えて、とうとう食べたかったお蕎麦屋さんへ。
開店してすぐだからお客は私だけ。
店の一番奥の角のテーブルを陣取る。
メニューには食べたいものが沢山。
ただ蕎麦とご飯がセットになったのが無くて、ご飯を諦めるか、2品頼んで食べきるか…。でも、食べきれるかな。うーん、でも食べたい。
そんな風に考えながら同じページを行ったり来たり…。
いや、折角来たんだ。
大食いチャレンジだ、食おう。
そう決めて店員さんにたくさん注文。
なんかこんなに食べるって恥ずかしいから、カバンから小さなノートを取り出して食レポ書くお仕事してまんねん、私。やから食べなあかんねん。と誤魔化す。急に大阪弁が入ったのは、『あぁ、オオサカ』をエンドレスで聞きすぎたせい。
いやぁ、ほんと、沢山食べた。
無理かなって思ったけど、私は痩せの大食い、そう言い聞かせて時間をかけて食べきった。
お腹パンパン。
お蕎麦屋さんに入る前、帰った後ホテルでお腹空かないように小さなセブンで買った大きなポテチとブラックサンダーは要らなかったな。
外に出るとすっかり暗くなっていて、ホテルの帰り道は街灯も少なく結構暗くて驚いた。
その時間帯になると手がしびれるくらいの寒さになっていた。
ホテルへ戻り、さっそく大浴場をお借りする。
ここには〈銀の湯〉が引かれており、露天、ジャグジー、打たせ湯、サウナと様々な種類があって楽しめた。
ゆっくりと浸かりながら、今日あった怒涛の感情や出来事を反芻する。
この有馬に居る事、これは私からしたらかなり非日常だ。
でも、誰からも指示されず私と水入らずで話すことが出来るこの時間はなによりも素敵だった。
そう強く思ったのは実は旅を終えて帰ってから。
この時は、ただただ急に寒くなった有馬の気温差に驚いてただけだった。
次の日の朝、朝食を頂いた後また大浴場へ。
夜とは雰囲気がだいぶ違って、1日の始まりを告げる鳥の声を聞きながら入る露天風呂は本当に元気が出た。
昨夜入ったときは、1日が終わるゆったりとした心地になったのに…。
時間帯でこんなにエネルギーって変わるんだ。
そうして私は元気をもらって、朝1のバスで帰宅。
本当に素敵な旅だった。
でも、最後に、私の最大の謎…。
有馬の街にちょこちょこいた
君たちは誰やったんや?
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