『ドラゴンボールの息子』その10「我が家の危険なアネキ」
僕には3才年上の姉、瞳(ひとみ)がいます。
我が家には個性豊かな両親がいますが、
この姉がまた強烈な人なんです!
まずはこの写真をご覧ください。
姉に鬼の仮面を押さえつけられ、
力なくじっとしている当時の僕の姿。
これをひと言であらわすならば、
『無条件降伏状態』であります!!!
この頃の姉は僕に対して、
強烈な『敵意』を持っていました。
というのも、姉は甘えたい年頃だったにもかかわらず、弟の僕に母を取られてしまった感覚があったからです。
ここまでは、まぁ『普通』の話なんですが。
僕の姉はやはり『普通』ではないのです。
姉は強気な『父似』、僕は穏やかな『母似』。
父の強烈な個性もすべて姉に遺伝しました。
対する僕は、おとなしいシャイボーイに。
小さい頃、姉はそんな僕に言いました。
「まことのものは、私のもの。
私のものも、私のもの」
そう、姉は完全にジャイアンだったのです。
幼少期の僕は姉に積み木で殴られたり、物を取り上げられたり、最後まで大事にしていたおかずを知らぬ間に食べられては泣いていました。
もしも『実写版ジャイアン』を映画化する時は、あの頃のうちの姉をキャスティングしてほしい。
たとえ性別は違っても、きっと見事に演じることが出来るはずです!
ですが僕はこんな被害にあっているにもかかわらず、なぜかいつも姉と一緒に遊びたくて付いて回っていました。
姉は不思議な人で、自分以外の人が僕をいじめる事は絶対に許さなかったのです。
たとえ相手が年上の男子であっても、
全力で僕を守ってくれました。
こういうところが『姉』と『父』の似ているところなのかもしれません。
だから僕は、最後のところで姉を嫌いになることはありませんでした。
それから小学校高学年になった僕は、姉には力で勝つことが出来ないことを悟り、情けないほどささやかな抵抗を試みていました。
それは当時、僕がハマっていた『競走馬育成ゲーム』で自分が育てる馬に姉・瞳(ひとみ)の名前をつけて遊んでいたのです。
『フッ……情けない馬に育てて、さっさと引退させてやろう』
自分でもこんなひねくれた気持ちでゲームを楽しんでいる子供なんてイヤですね(笑)
そこで僕は考えに考えた結果、
二頭の馬にこんな名前を付けました。
『ヒトミイカリーノ号』
『ヒトミコワイネン号』
まったく……
小学生にしてはいいセンスしてるぜ、自分。
僕はこの二頭が上手く育っては困ると考えて、二流の調教師に預けてテキトーに無視しておきました。
ですが姉の名前には、
僕も驚く『謎の力』があったのです。
なんと、姉の名前を冠したこの二頭はすくすくと成長して、あれよあれよと言う間に連勝街道まっしぐら!
最終的には見事にこの二頭とも、
『GⅠ馬』になってしまったのです。
この一部始終を見ていた僕の親友が明言を残してくれました。
『瞳さんって、馬になっても強いんだな』と。
いやいや、僕にとっては……
『違う、違う、そうじゃ、そうじゃなーい♪』
思わず心の中で鈴木雅之さんが高らかに歌っちゃうレベルの悲劇ですよ。
終いには引退したヒトミイカリーノたちが優秀な血統を残し、僕の経営する『マコリン牧場』を数十年も支える役目を果たしたのです。
こうして、僕の密かな姉への復讐計画は完全に失敗に終わりました。
やっぱり僕は、姉に勝つ事はできないのです。
でもこれは、僕と姉との20年以上続く戦いの歴史のまだ序章でしかありません……
それはまた、そのうちに。
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