『ドラゴンボールの息子』その3「アジア最大の脚本家」
僕の父は、長いこと「アジア最大の脚本家」を
自称しています。
いったい何が「アジア最大」なのかというと、もちろん「規模」とか「レベル」の話じゃなく、単純に「身長がデカイ」んです。
戦後からたった3年後の昭和23年生まれにもかかわらず、父の身長は194cm。
あの、大谷翔平選手よりも1cm大きいんです。
かつて、一度だけお会いしたというアントニオ猪木さんから「大きいですね」と言われたのだから本物でしょう。
猪木さんはプロレスラーとして数々の『巨人』を相手に戦ってこられたんだから。
身長が大きくて得をすることと言えば、
・満員電車の中でも空気が新鮮。
・ディズニーのパレードが見やすい。
……実は、そのくらいのもんなんですよ。
逆に、身長が大きいと損することは、
・車、飛行機、遊園地のアトラクション、何に乗っても肩身が狭い。
・自分のサイズに合う服、靴がみつからない。
・小さな出入り口などで、よく頭をぶつける。
・夜道を歩いていると、前を歩く女性に無駄に怯えられる。
などなど、
生活の中で多くの不自由があったりします。
背の高い父を見てきた中でも印象的だったのが、銀行の自動ドアのふちに頭をぶつけたワンシーン。
僕の人生の中でもまだ、父以外の人では見たことがありません。
そんな父は、僕がまだ保育園に通っていた頃、
僕の友だちから『鉄人28号』と呼ばれていました。
父が迎えに来ると、友だちが一斉に
「鉄人が来たぞーっ!!!」と大騒ぎ。
なんといっても、父がしてくれる高い高いが
みんなに大人気でした。
だって、リアルに高い高いですからね(笑)
ある年の保育園の運動会では、
父が、みんなも驚くような大活躍をします。
それは……親子玉入れ合戦の時でした。
見てください、このやる気満々の雰囲気を!
玉入れが始まると、194cmある父は地面に落ちた玉を両手でかき集め、まさに鉄人28号のような迫力でそれをすべてダンクシュートで決めたんです。
「うわぁー……!!!」
周りの友人や親御さんから、どよめきが起きたことは言うまでもありません。
ある種、反則だったような気もしますが……
僕がまだアニメの仕事とかまったく理解できなかったあの時でも、父がとってもカッコよく見えたのを覚えています。
ちなみに、息子である僕は184cmで成長が止まり、父を越えることはかないませんでした。
もともと、越える気もなかったんですけどね(笑)
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