詩 「箱と袋、家」
24時間営業中
闇にぽつり 光る箱に 吸い込まれる
待ち受けたのは プラスティックの小さな袋たち
生気のない瞳で ぼくを見ていた
生きるためには きみたちが絶対必要
機械がつくった 型にはまった
数だけそろった 空っぽな食事たち
自分の好物とかわからない
腹を満たせればそれでいい
まぶしい光も うるさい色も
にぎやかな味も 何もいらない
ただ 戸棚に選択があった
ただ 頭に乱数があった
てにとるものは どれでもよかった
突っ立ったまま 無為に時間を過ごした
脳内物質に 操られるままに
生存本能に 動かされつづける
宇宙にぽっかり 浮かんでいる
ぼくは贅沢だろうか
幼い子どもが痩せ細っている
流行り病で土に寝かされている
人間の書類で 人間の命が 失われている
火薬がつまれる 火花が散る 炎が舞う
世界で あるいは 二軒先のアパートで
だれかがないている
みんな無視する
「誰かが泣いている!」
みんな何も言わない
学ぶことが免罪符のモラトリアム
与えられた 不満のない 守られている
健康で文化的な生活
機械が作り 親のお金で 買いとる食事
ぜんぶぜんぶ遠い社会の話
一切合切から 目を逸らした
いま コンビニで
ぼくは プラスティックの食物をみている
おうちに帰ったら 温めて 食べる
真夜中の コンビニで
一人 自分だけを感じている
寝ている店員 立っているぼく
何もない 空っぽな光る箱だ
自分だけが救われたくなった
そんな自分に嫌気が差した
やっと 一つをえらぶ
やっと たった一つをえらんだ
セルフレジを使う
家に帰れば 長い今日は終わる
ぼくがぼくに選んだ袋の重さに、少し安心をした。
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