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[AOF]第十一話 ミッション⑧~家を建てます。


第十一話  ミッション⑧~家を建てます。

遺跡最奥中央コントロール室にて


 日本国との取引についてゲルグの部隊が先だって始めているという情報がトールの耳にも入って来た。

基本的には開墾の際に出た木材を無償で譲渡してくれるということで、ゲルグらは日本国に大使館という形で建物を作ってもらい、そこが外交の窓口であり、ゲルグたちの居住地も兼ねるということになった。

 住み心地は砂漠のテント暮らしとは雲泥の差があった。

 上下水道、電気、ガスが全部そろっている。

 日本人の仕事を手伝うとお金がもらえる仕組みで、シュナイダーをフル稼働させたらたくさん稼げた。

 着々と開墾した土地に種をまいたり、雑草は引っこ抜いたり農業には手抜かりがなく進められている。

 そして、たまにゲルグたちに無償で野菜をお裾分けしてくれたりした。

 ゲルグたちも野生の鹿っぽい生き物を狩って滞在している村で売ったりもした。

『大使館、ここはまあ、ホテルみたいなものを兼ねているので大浴場が男女別についています。ここは時間帯によっては独り占めしたりできます。この森や開墾した土地が見えます。

 鹿モドキでバーベキューしながら日本国民が作ったビールで毎晩お祭り騒ぎしたりします。お金が足りなくなったら鹿モドキを売ったり開墾したりしてます。開墾は彼らによるともう自分たちの分では扱いきれない広さなのでいつ移民に来られても良いようです。さあ乾杯だー。あ。そうだ。我々は戦闘部隊だからこれ以上仕事はできないので農民部隊の移民・移住を進めてください。土地利用は野菜など作ってくれるなら無料でくれるそうです。あ~楽しい。』

 ゲルグは日本国での様子を何かテレビ番組のようにバーベキューを楽しみながら最近の近況などを紹介したり報告したりして来たものをこの集団の閣僚クラスの人々が各々見ていた。

「速く交易路を作りたいな。エルさん。」

 トールはゲルグの報告に対してそう感想を述べた。
 日本国の民が作る家、どう考えても環境が良さそうだ。
「最初に出会った、四ツ目の虎、まだ被害は出ていないけれどああいう生き物や攻撃的な肉食植物などと戦わなければならない今の環境と比べたら天と地くらい差がありますよ。家に住むって言うのは。」
 エルはそう言った。
「多夫多妻制だから。一軒あたりに必要なサイズがちょうど大使館と同じくらいですね。」
 アリスが話に入って来た。
「そうだね。アリス。最終的に人口は増加し続ける予定です。当たり前だけれど、我々と子供たちの間の世代を埋めてくれる若年層も今回受け入れるから。どんどん家やなんかを建てないとね。」
 エルがそう言うと、次はマークに報告があるということでマークに順番が巡って来た。
「シュナイダーの上半身を作ると言うG計画があったのをトール氏他皆さんご存じかと思いますが完成しつつあります。これが完成したら日本国に送り込み、建材を持ち運んだりその場に建物を建てさせましょう。」

 それは良い案だった。早速二足歩行ロボットを見に行った。見に行くと農業ハウスで既に稼働中だった。もう完成と言って良いだろう。トールはそう思った。

 上半身をつけたシュナイダーが地面に生えている作物を掘り出したりトウモロコシを収穫するなど色々な作業をこなしていた。
「いつの間に!」
 シュナイダーはこれまでダチョウのような乗り物だったが上半身が付くことで、完全に人型ロボットで巨人と化していた。

「一応あのアームは二百キログラムのものを持ち上げるスペックです。手には兵器に転用可能なくぎ打ち機、チェーンソー、ドリルやドライバー、レーザーカッター、ペンチなどの工具を持たせられます。因みにこれを作るのにシュナイダーは二機必要になります。」

 マークの妻、ハルはそう説明した。

「す・・・すごいな。G計画・・・。」

 トールにはびっくりドッキリメカが目の前に現れたような衝撃を覚えた。
「因みにGって・・・。」
「ああ。ガン〇ムのGです。」
「その古典アニメ。大好きだったものね。ハルさん。」
「いや。マークさんが小さい頃そればっかり見ているからふと閃いただけですよ。」
 マークにハルは得意げにそう言った。
「あと頭部バルカンにP990をメインの射撃武器にARC1118、あのエルさんの暗殺に使われそうだった強力な銃をマニピュレーターの片手で持って打てます。」
 ハルはどや顔している。
「因みにこのシュナイダーは誰のやつなんだ?」
 トールには見覚えのある傷だったり色々、見覚えがあるシュナイダーだった。
「この機体は下部が農村用のもので上部はトール氏のシュナイダーを分解して作りました。」

 自信満々に言ってくる。ああ、やっぱり俺の・・・トールはショックだった。

「これはいずれこの自治体の象徴になる機体ですよ。当然、メインのパイロットはトールさんです。」

 そう聞くとちょっとうれしかった。

「あと、お気付きかと思いますが足は逆関節から通常の人型関節になっています。重たい上部を支えるためそうなりました。スラスターの組み合わせでホバー走行も可能です。実はガンダムじゃなくドムです。」

 またどや顔だ。ハルのものづくり能力は十分にわかった。

「これなら自治体間の移動もかなり早くできそうな気がするがどうなんだ? あとコックピットは?」

「まず自治体間の移動ですが。燃料を食うのでプロペラントタンクを積めば往復可能な設計です。燃料は水素です。スラスター以外は電力で稼働するので小型原子炉で十分です。一応ついていた太陽光パネルは外しました。背中の羽は空力制御で浮きすぎたり沈みすぎたりしないよう調整しながらホバー走行をアシストします。コックピットはこっちです。」

 ハルはシュナイダーG型の後ろに回り何かボタンを押すとシュナイダーはしゃがみ後ろに乗り口が飛び出した。

 シュナイダーの顔は無い。SUVの車両を正面から見たような見た目になっていてそこに手足が付いたようなデザインだ。

 四角いボディにごついマニピュレーターが二つ付いていて更にもう一本の隠しマニピュレーターが背中の収納ボックスから必要な工具を取り出せる仕組みになっている。

「このAR(拡張現実)ゴーグルをつけて乗ってください。中は狭いです。」

 何だろうこの狭さ。ARゴーグルは微細な景色を目の前に映し出した。

 すげー。これはすげーーーー。見た方向の景色がきれいに見える。そういう物だと知っていてもすげーとトールは感動した。

 一応リクライニングする座席ではあるが確かに狭い。完全に一人乗りだ。

『操縦方法はあまり変わってません。銃撃の訓練しましょう。』

 外の声もキレイにスピーカーをとおして伝わってくる。

 ジャック・バーヤーの射撃練習場に行った。

『P990射撃モードと言うとP990の照準に切り替わり、持っているスティックの引き金を引くと打てます。照準は見るだけで狙えます。』

 言われるままにやってみるとすごい。全部的のヘッドショットだった。

『ARC1118射撃モードと言って、通常射撃と言うとレーザー銃で撃った後実弾が交互に連射されて飛びます。レーザー射撃、実弾射撃で射撃モードを切り替えられます。』

 言われるままにトールは試してみると、すごい。全部的に命中して的が全壊した。

「おい! どうしてくれんだよ。的が無くなっちゃったじゃないか!」

 ジャックがキレている。

『あと『通常下車(ノーマルアウト)』というと普通に降りられます。『緊急脱出(ベイルアウト)』というと座席が後ろに吹っ飛ぶようにできています。他には格闘モードもありますが、格闘モードは声でアクションします。例えば『飛び膝蹴り』、『メガトンパンチ』、『レーザーカッター』、『ドリルパンチ』、『チェーンソーアタック』、『ペンチプレス』など色々プログラミングされています。シュナイダーカップの動きも入っています。』

 ジャックがキレているなか、ハルは淡々と説明し、トールは普通に降りた。

 そしてジャックが物欲しそうに見ていた。

「おい。これ俺達にはいつ配給されるんだ。」

 ジャックがそう怒鳴っている。

「これはトールさん専用のワンオフ機で農耕用なので戦闘部隊には配備しません。」
 ハルがそう言うと、ジャック・バーヤーはこれまでになく残念そうな顔をした。

 すごく欲しいらしい。

「これ、良かったらジャックに譲るよ。その代わりこれを使ったミッションは全部ジャックに任せることになるが良いかい? 農耕部隊に転属する?」  
 ジャックは眉間にしわを寄せて悩んだ。

「因みにシュナイダー用のレーザー砲は搭載できるのか?」
 ジャックはちょっとそう言うところが気になったらしい。
「うーん。シュナイダーのパフォーマンスが二十パーセントダウンしますが肩に載せられますよ。」

 ハルは少し懸念材料を話した。

「よし。俺にくれ! 農耕部隊に転属でも良いから。」

 嬉しそうにそう言うのでトールはこの新型シュナイダーGをジャックに譲った。これで面倒なあの日本国(森)に大量に家を作る作業をジャックに任せられる。

 代わりに戦闘部隊から二台のシュナイダーを譲り受けてここでの農耕用に使うことになった。

☆☆☆

国交


 開墾の需要はもう日本国にはなかったので、土地の価格がタダになるまで下がった。

一応それ以上の人間が住むため、開墾もできることになった。

 そして、日本国と同じように通貨を使うことにした。一応パン一個が百円なので、こちらはパン一個一ドル(百円)という体制を取ることにした。

 日本国民は数が百人しかいないが、ここへはこの星の一週間ごとに二百人ずつ増えていく。ジャックは最初こそ楽しそうに作業をしていたが、すぐに飽きてシュナイダーのAIに作業を任せた。そして器用な日本人に内装は依頼した。

 こちらから、日本人に売るべきものが無いので、こちらの貨幣で依頼した。

 中央銀行に代わって、決済の記録を暗号化してシュナイダー各機が帳簿を有するブロックチェーンという技術でできたドルでの決済、NLA市民に各自働くことで毎月一定額の給料が振り込まれる仕組みを取った。

 日本国から欲しいものはドル建てでも円建てでも買える仕組みを持った。

 大使館と同じサイズや内装の建物一軒あたり五十万ドル(五千万円)で日本国に大量に作り、農耕部隊はハウスで育てた野菜苗や生産物を持ち、砂漠から森への移住を決めて、資材を撤収した。

 戦闘部隊は、ここに新たに来る人々を保護するため、砂漠と森を往復する日々を送った。

 エンジニアたちも順次、森へと移り、森の中に工場や、野菜工場を建設した。

 取り敢えずは千人が住める規模の食料作り、大使館サイズ(一部隊、二家族が住めるサイズ)のものが家としてたくさん建てられた。病院なども整えられていった。

 また、銭湯など公共浴場など日本国の良い文化が取り入れられた施設など人が住むのにすごく快適な環境が作られていった。

 シュナイダーが大活躍だった。


 ☆☆☆


NLA母船にて


 母船では順調な移住が行われていることをトールは評議会に報告した。

 また、先に移住した日本国の人たちとの交流もうまく行っていて、貨幣経済が導入されたことも報告し、母船からの独立を宣言した。

 アグリッパには別のルートからエル、ジャック、レイの三人が実は生きているということが送り込まれたスパイから報告を得ていた。

 自宅で様子を知った彼は、悔しくて地団太を踏み、調度品の壺を蹴り壊してしまった。そして怒り狂って暴れた。

「アベルめ・・・。あの涙は演技だったか・・・。」


 ☆☆☆

評議会にて

 アベルは評議会で次のような発言を行った。

「ついに、我々は移住先の確保に成功した。移住先の食料自給率は今のところ千人が移住しても大丈夫だということだ。あと、現地開発されたG型シュナイダーも量産して送り込む予定だ。」

 すでに現地に向かった人々から人質を取ってエルやトールを暗殺されることの無いような状況に代わった。船内の状況も徐々に変わってきている。

「我々は改革派を中心に開拓精神、つまりフロンティア・スピリッツを持った人々を中心に安心して人を送り込める。今の百人は次の千人を、次の千人は次の一万人が住める環境を作って待っていてくれるだろう。我々がすべきことはもう完全に移住すると言う方向へ舵を取るべきだと思うがどうだ? 保守派諸君。」

 船内の世論からして改革派の市民から船を降りていくことになる。

「葬儀を行ったはずのエル・コンキスタとジャック・バーヤー。レイ・カーターが生きているのはどういうことだ。葬儀の様子をわざわざ中継して見せて、隠し事が多い改革派にこれからもついていくと言うのは無理だ。船から降ろされている人々も優秀な人材ばかりだ。この船の整備はどうするつもりなんだ! ふざけるなよ改革派! しかも移民が独立宣言をして、それを許すと言うのか。

どういうつもりだ。答えろアベル・コンキスタ。」

 アグリッパは怒り狂ったようにそう発言した。

「ほう、アグリッパ氏、ついに私を呼び捨てにしたな。非礼な態度は許してやろう。独立を許すのは現地での判断を早くするためであり、効率を重視した結果であり、こちらから干渉するのは良くないと判断した。開拓地へ赴くのは若者が中心だ。彼らのことは彼ら自身で判断し動くということだ。全て生き抜くためだ。法律に関してはこちらと揃えるが、適宜変更していくことになっているとの報告を彼らの代表トール市長が言っていた。彼らが偽装葬儀を行ったことは、私は何も知らなかった。殺し屋が娘を狙っているという噂があったが、娘が生きていて良かった。」

 アベルはそうは言っても割り切っていた。

 移民に送り込むのは自分の支持者たちだ。そうするともう改革派が減ってしまい選挙で評議員の立場になるのは難しくなってくるだろう。

「私もそう思います。今まで保守派としていましたが、もう保守派は・・・詰んでいると思います。つまりどうにもならない状況です。私の支援者たちも今では開拓地へ向かいたいとその意見が多数になってきました。」

 そう保守派議員のKキム氏がそう言った。

 もう保守派内でもこの移住計画に前向きな人々が増えてきているようだ。

 アグリッパの腹心の部下の議員だと思っていた彼からの答弁にアベルは安心した。

「おい貴様! 何言ってんだ!」

 アグリッパはそう野次を飛ばした。

「うるせー! もう無理だっつってんだろ。保守派議員なんて肩書など、俺はこのさい捨ててやる! 生き残りたいんだよ! 議員も辞めだ! 開拓団へ俺は参加する。この場で参加を表明する。」

 そう保守派が一枚岩で無くなってきている。この宇宙船に残るのは最終的にはアグリッパ一家だけになりそうだ。おお、この造反はすごいプラスだ。彼と彼を支持している千人はもう降ろしても大丈夫だろう。まぁ、ただトールがこの議員を抑えられるかどうかは・・・別の問題だ。アベルはそう思った。

「他に船を降りたいと思う者は手を挙げろ。」

 アグリッパはそう言って手を挙げさせようとしたが誰も手を挙げなかった。

 アベルはアグリッパが聞いてもそうだろうなと思った。評議員はこの船を導く使命を持っている。最後の最後まで残らなければならないという役割を持っている。保守派も改革派もそれは同じだ。

「人々を次々と降ろす作戦に同意するものは挙手してくれ。」

 アベルがそう言うと、改革派は全員手を挙げ、保守派も一部は挙手した。

 評議員会は市民の代表者が集まって作っている議会だ。これは勝機があるとアベルは確かな確信を得られた。

「過半数を大きく上回って賛成ということだな。開拓にはなるべく早く参加したものから利益がある仕組みをトール・バミューダ市長は用意している。住まいも良いものだと聞いている。先着順に随時人が集まり次第、降下作戦を実施する。これで閉会として良いか。議長。」

 アベルは議長に最後に確認し、会議は終了した。


☆☆☆

NLA貿易・教育センタービルにて


 人口が千人を超えるころ、日本国が領土だと主張していた森に四十階建て全高百五十二メートルの巨大なビル『貿易・教育センタービル』と名付けたものが出来上がった。

 日本国の住民たちはこの頃、NLAの市民に組み入れられた。
 トールはこのビルの最上階から眺める景色が大好きだ。
 周りはほとんど畑で、道路も整備されている。
 遠くには大使館サイズの家々がたくさん建てられている。住民みんなが住めるような高級団地がたくさん建っている。

 市民全員の食料を供給できるよう一階から四階までは平面の面積が広く作られていて、一階から三階は予冷庫兼市場となっていて四階はスーパーマーケットになっている。

 五階と最上階には飲食店なども入っている。

 六階から三十九階までは託児所、保育園、小中学高、専門学校などが入っている。

 ここの託児所に、エルとトールの子が預けられている。ミッチェンの子もマークとハルの子も、ここに預けられているし、母船から来た子供達も元日本国の子供達もここで教育などを受けている。

 人口ピラミッドはきれいな分布になっている。
 ちゃんと下の世代の人口が多い。

 環境は充実してきているのでアリスも妊娠しているが、何も心配はいらない。
 トールは何だかやり切った気分になっていた。
 ここは移民した人類が辿り着いたユートピアなのかディストピアなのか、それは住んでいる人がどう思っているか分からない。

 カースト制度で子供の教育も変わる。農民は農民。兵士は兵士。上下関係はない。そして給与は変わらない。

 教育に関しても、作業現場のプロから指導を子供たちは受ける。それが母船でのルールだったがトールは変更することにした。

小学校から中学校までは共通教育を行い、その人一人一人の特性に合わせて専門学校については古代で言えば大学レベルの教育をするものとなっている。さらに上の学校として大学を作ることもまた、検討課題ではある。

「あ、またこんなところに居て、何してるんですか市長!」
「いや~。景色を見ていただけだよ。」 
 新入りの人が来た。どうも母船の評議員だった人物の一人で保守派の人だ。
 Kキムという人物らしい。彼の支持者ら千人と降りて来た人だ。
「評議員会は作らないのですか?」
「まぁ新入りさん。今は評議員会という形ではなく、様々な部門の代表者を集めて物事を決めていく方式を取っているところです。農耕部隊代表、戦闘部隊代表、エンジニアチーム代表、医療チーム代表、とにかく必要なものは現場から吸い上げてやることになっている。だから基本的に評議員会はいらないのではないかと、住民投票で決まった。あなたが何かの部隊のリーダーだったり重要なポジションにつかなければ、そういった会議には参加できないのです。今、空いているポジションは警察、法律部門の長が居ない。どれかできそうですか?」

 Kキムはそういった専門知識を持ち合わせていなかった。ただ単に評議員に担ぎ上げられて何の専門知識もなく保守派議員として生きて来たに過ぎない。ここに来ているのは身体を張って開拓をする。そうした人々だった。だから空いてるポジションの説明を受けてもできない。

 先頭に立って何らかの仕事をしている人物で、その代表者でなければ自治体の代表者が集まった会議には参加すらできない。支持者が千人いてもダメなのだ。何かしなくては。

Kキムはそう思った。

「保守派の議員だった私には代表者は務まらないでしょうか。」

「だから! 警察、消防、法律の長が居ないって言っているでしょうが。千人も支持者がいるんだから中にはその道のプロが多分いるしょう。自分に出来ないことは、人に任せるのですよ。あなたは人脈が武器になるでしょう。あなたは評議員。俺は、ただ単にNLAの自治体から開拓を任されてやって来た最初の人物でしかない。俺は農作業もするし、シュナイダーの修理もある程度する。その程度の人間なんです。市長という重たい役目を追っているけれど今、あなたの支持者が千人来て、その前に住んだ千人は俺の支持者だとしても選挙したらあなたが勝つのです。だからシャンとして人材を確保してください。」

 トールはすごい横柄な物言いで元評議員にそういった。

「まぁ何もないなら、まずは農業部隊に入って農民から始めてください。私も同じでした。」

「分かりました。」

 Kキムは頭を下げてここから立ち去った。

「なんか父さん(アベル)みたいだったよ。」
 エルは娘とアリスと一緒に最上階のレストランに食事に来ていた。

「うーん。彼なら警察部隊とか作って代表者になれそうな気がしたんだけどな。なんか覇気がなくて拍子抜けしてしまった。」
 トールも市長という重責に慣れ始めていた。

「ジャック・バーヤーに警察代表者は任せたらどうです?」
 アリスが凄くもっともらしいことを言い出した。
「うん。そうだな。そうしよう。」
 トールがそう言うと、レストランで食事をしていたジャックがやって来た。
「おい! 何を勝手に決めているんだ。あのシュナイダーから降りろっていうことか!」

 怒るところそこなんだ・・・。トールはそう思いつつ。

「いや、そんなにあのシュナイダーが気に入ったならもうあれはジャックにくれてやるよ。警察の業務に役立ててくれ。因みに隊員は自由に募集して良いし、自分の元部下らで作って良いぞ!」

「やったぁあああああ! ありがとう。トールッ! シュナイダーをありがとう!」

 シュナイダーを渡すだけで、ジャックは歓喜するのだった。

                                 了 


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