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[AOF] 第三話 ミッション② ~二人の事情 木を切ります。


第三話 ミッション② ~二人の事情 木を切ります。
 
・・・数か月前・・・
 
 トールとエルがいた自治体・・・宇宙船という閉ざされた空間において、社会は極めて安定していた。
 議会の席でエルの父、アベル・コンキスタは演説する。
「環境が閉ざされているからこそ、安定せざるを得なかったと言い換えても良い。
我々の属するこの自治体は、社会主義という世界であり、全てが平等に分配される社会だ。どんなに本人が努力しても突出できないし努力しなくても貧困にあえぐこともない。
 しかし、そうして無理に安定した世界がそこで完結するという事は無いのだ。
 そこで完結したら滅ぶという事を人類は歴史を学ぶことで知っているからだ。
 宇宙船は決して永久機関ではない。
悠久の時を旅する事は出来ないため、幾度となく他の空気や大気の無い星から採取した物質を溶接するなどして補強や修理が行われて何とか旅をしているのが現状である。
 幾百年もの長い間、宇宙を旅ができたことは奇跡なのだ。」
 自治体の議会はこのまま宇宙船と社会の構造を保持し続けていこうという保守派と、人の住める星を探して開拓して移住を目指し、そのために社会の変革を目指す改革派に分かれて対立していた。
「全てが平等だからこそ、争いの無い世の中になり、狭いところに大量の人口を押し込めたこの自治体を統治できているのではないか? そして宇宙船は確かにアベル・コンキスタ評議員の言うとおり永久機関ではないからこそ、これからも保守をすることにこそ予算をつぎ込むべきだ。 
それに、人々から税金を多く取ることになるのに社会保障に資金をちゃんとつぎ込まないのはおかしいのではないですか?」
 保守派の評議員、Kキムはそのように答弁を返した。
「いや、そんなことよりも今まで以上に開拓に資金をつぎ込まなければならないのです。他の自治体では星への移住を決めたところ以外では既に滅んだところもあるという情報がある。」
 評議員の他の改革派がそう補足説明を挟んだ。
「それは百年も前の情報でしょう。」
 評議会では野次も飛び交う。
自治体同士の繋がりは単純に距離が数光年規模で離れてしまっているが故にそれだけ情報に時間差を生んでしまっていた。
 保守派と改革派の争いは、今に始まったことではない。
 人々が地球に住んでいた頃からよくあることだったが、宇宙船ではより単純で閉ざされた空間だからこそ深刻な問題になっていた。
 この宇宙船内には人種差別がある。人類が滅びない為に自然に増えている人々と、遺伝子が改良されて新しい環境に適応した人々との間である。
星の環境に適応できる人材は生まれたときから既にどんな仕事に就き、何をするのか決められている。
例えばトールは記憶を引き継ぐ事ができる強化人間であり、『輪廻』というシステムが組み込まれている。彼がわずか二十代にしてベテランなのは何度となく開拓する星へと送り込まれ、何度も死んでいるからだ。
彼の人生は一度きりではない、クローンとして作られた頭蓋骨に埋め込まれた電子チップを彼が死ぬとシュナイダーが頭蓋骨を割り、それを回収して宇宙船に持ち帰り、また記憶と一緒に新しく生まれてくる彼に埋め込まれる。
 まるで人権というものが無視されているようだが、彼ら作業員には相続税がかからず、自分が稼いだお金を自分に引き継ぐ事ができ、彼は開拓する惑星に送られる前に、遊興費に使ってしまうのだ。就職や働くことに自由はない。彼は辞めたいと思った時にそれを辞める事ができるが、遺伝子レベルで辞めるとは言えないようになっている。
 そのことを本人は知らない。知らず知らずのうちに誰かの分からない記憶が脳に埋め込まれ、知らず知らずのうちに同じ仕事に就き、いつか宇宙船へと戻れると信じて開拓地へと旅立つのだ。
 しかし、それを繰り返した結果、開拓地へと送り込まれる時本人は、今度はこの星に骨を埋めることになるのだと覚悟をするように彼の精神は進化していった。
 保守派と改革派の違いや、人種差別はそこにある。
 遺伝子操作を主に実行してきたのは当初は保守派で、改造された人間をモルモットとして扱い最初は人権を認めてすらなく、人権を認めるようになり、そこに費用や資金が発生し、さらに星を開拓することが困難で成果が思うように上がらず、無駄なことだと考えるようになった彼らは現状がそれで良ければそれでいいと考えるようになった。
 現在でも保守派のエリートは強化された人間を所詮は作られた人間と下に見ており、現状が良ければそれでいいと思っている評議員が民衆を扇動している。
 改革派はどちらかというと、強化された人間の中でも古株の方でなおかつそれが変異した人々やその家族で構成されている。
 人を人と思わず、自分の都合だけで動く保守派のエリートに対し、彼らは一時期反乱を起こし、権利と自由を勝ち取った。これが船内戦争である。開拓することを止めて要らなくなる強化人間を保守派が処分しようとしたことがきっかけで起きた内戦だった。
 改革派は人類を存続させることが第一という強い目的意識を持ち、そのために宇宙船を修理し開拓を続けるという責任と信念を持ち、その行いに対価を求める。自分が何者なのかという事を遺伝子レベルで知っていて、使命を果たし、そのために働くことに誇りを持った人々・・・それが改革派である。
 
 ☆☆☆
 
「頭の固い連中だ・・・保守派め・・・。奴らは自らこの宇宙船を修理したことが無いから危機感が足りない。頭がお花畑で幸せにできている! まったく。」
 アベルの家に招かれた開発公社の社長、キドは禿頭を掻きながら愚痴をこぼした。
「今民衆は保守派の支持に傾いておる。増税が原因だがな。」
 アベルはそう返事を返した。
「コロニーの耐用年数は本来なら百年。それを千年近くも使い続けたら駄目だろう。さすがに無理がある。ものすご~く無理があるよな。原価償却してから九百年も過ぎて、ダメでしょ。」
 評議員のアベルと開発公社の社長のキドは同じ小学校に通った同級生で古くからの友人だったのでこのように話をする。酒を飲むと尚更である。
「それを保守し続けろと言うから保守派というのだろ?」
「ははっ。アベルよ。評議員になっても変わらないな。うまいことを言う。常識だけど。」
 キドは一口ワインを飲んだ。見計らってアベルは継ぎ足す。
「まぁ、お前も飲めよ。アベルよ。」
 アベルは手をかざして断った。
「何だよ。評議員様は下々の勧めた酒というか俺様の酒が飲めないのか?」
 アベルは元々アルコールに弱い。本来なら政治家には向かない。
 おどけているがキドは知っていてそう冗談を言った。
「まあそう言うな。」
 アベルは酒を注ぐ。
「ところで酒が飲めない評議員が酒を俺に飲ませたりして何か話があるのか?」
「ああ・・・別に勧めたわけでは無いがどう思う?」
「何が?」
「その酒はうまいか?」
 アベルは唐突にそう質問した。
「本物志向というのが今は流行りだが結局のところこの船内で供給される食料なんてものは全てが本物風の偽物、バターとマーガリン、ビールと発泡酒の違い。」
「そうだな・・・そういう故事があるな。」
 キドは頷いた。
 実際二人ともに本物の食料を食したことはあまり無い。エルが本物だと思っていたものも本物志向の偽物だ。
 宇宙船で供給されるチキンは鶏ではなく頭も毛も羽も無く培養された肉塊である。
 細菌の無い空間で作られているので生でも食すことができるが、ポークもビーフもミルクも野菜でさえも、天然自然の食料などは存在しない。
 完全栄養食という食料が配給されており、全てをミキサーで混ぜたものが宇宙船では主食となる。一部の富裕層が本物志向という形の食事を取ることができる。
「一生に一度でも本物を知りたいとは思わないか?」
 アベルはそう語る。
「分からないではないが・・・しかし・・・だから娘を行かせるのか? 死んでしまうかも知れないのに。」
 キドは少し呆れた表情でそう言った。
「最初は儂も反対していたがな。あれは儂に言ったよ。ここにいても死んでいるのと変わらないとな。あいつが評議員を継げばいいと思ったが、行った方がここにいるよりは長く生きられるかも知れん。」
 アベルはキドの目を見てそう言った。
「どういう事だ?」
「エルは儂の子だ。この儂にも奴らは刺客を差し向ける。前に儂の乗る車両に毒ガスを出す装置がつけられていた。」
 アベルは謀殺されそうになったことをキドに話した。
「奴らって何者だ?」
「知らん。だが恐らく保守派のアグリッパか誰かが俺を殺そうとしたのだろう。」
 アベルは短くそう答えた。
「娘は優秀な奴と一緒に行けるようにしてやってくれ。出来れば女性が良い。」
「それは無理があるぞ。条例で開拓に行けるのは男女そろってと決まっているからな。そこは諦めてくれ。しかし、トール・バミューダは優秀だぞ。」
 キドはそう答えた。キドはそう言うと遠い目をした。トールに関しては知り合いでもあるし、その境遇に同情もする。
 
☆☆☆
 
 エルは顔を火照らせて眠っている。とても悩ましげな表情だ。
・・・飲めないなら飲まなければいいのに。
 森から拾ってきた竹状植物と、パラシュートの大きな布でテントを作った。
 竹状植物は頑丈で、なおかつ竹と同じようによくしなる材質だった。
 この日は休みだ。
 この星は地球の二日で一日なので、この星の三日と半日で地球時間の一週間という状況になる。しかも眠れるのは夜だけと考えると心身への疲労感を払しょくするためにも二人には休暇が必要だった。
 着陸してから三日目なので休暇を取るには若干早い。
 トールの体調はエルとは逆に好調だった。
 晩酌する習慣はなかったトールだが少しの酒が薬になったようだ。
 トールはエルがテントで休んでいる間に、竹状植物の残骸を拾い集めるという労働を始めた。
 簡単に言うとそういうもので住むところに加えてシュナイダーで引く荷車を作り、エルの負担を減らす作戦である。トールは本来、戦闘員では無い。暗殺者の使っていた銃を森で拾っても撃ち方が分からないからシュナイダーのマニピュレーターに装備した。意外にもシュナイダーはトラクターであると同時に簡易戦車にすることもできる。
 エルの持っている二丁の拳銃も装備できる。
 だが、戦いや狩りはエルに任せた方が無難である。
 荷車の作成を行なった。シュナイダーはトラクターなので、後ろにさまざまなアタッチメントを着けられるようになっている。
まだ農耕に適した土地を発見していないため、送られてきていないが水を撒くための装置や畑を耕すための装置などを取り付ける事ができる。
 今はアタッチメントに竹を縛りつけて思うような形に組み合わせれば良い。
 イメージ的には西部劇に出て来るような幌馬車である。
荷車をシュナイダーに取り付けてそれを牽かせるのだ。
 トールは器用に効率よくその仕事を熟すつもりだ。
 これでエルを乗せて運ぶ事ができる。
 汗が額を伝う。
 拾いに行く作業も歩きではきつい作業である。
 重力と昼夜の長さが元々いた地球という星での労働は別物で精神的につらいとトールは思った。
 ここまで移動が徒歩だったエルに対し、ここへ来て頭が下がる。
 重力が若干重くなる星なので若干きつい。
 例えば操縦席に乗っているトールの膝の上にエルが乗るというシーンも思いつくがそれは最終手段だ。
 精神的に四倍きつい仕事でも終われば達成感も四倍というものだ。
 しかし疲労も蓄積されている為に作業は難航した。
 だんだんどうでも良くなってくる。
「あれ? 休むのではなかったのですか? 何をしているのですか?」
 エルが寝ぼけ眼を擦りながら大工仕事をしているトールに近づいた。
 人間が眠ることができる時間も限界があるものだと起きてきたエルを見つめながらトールは溜息をついた。
「シュナイダーに荷車を作ってつけているんだよ。」
「何で?」
「荷物を運ぶためだ。馬鹿。」
 トールはエルの為にしていることだと素直には言えなかった。
「荷物ですか? なるほどです。私も手伝います。」
 エルはそう言うと近くに落ちていた竹を適当に拾ってトールに渡した。
「いいよ。お前まだ疲れているだろ? 休んでいろよ。」
「酷いな。馬鹿って言ったり役立たずって言ったり。私を何だと思っているのです?」
 若干酔いが冷めてないのか普段よりも話す。役立たずは言い過ぎだが言っていない。
「仲間だ!」
「う・・・ん。そんなに熱く言わなくても良いんですよ。あなたの気持ちは理解しましたので私は何をしますか?」
 トールは頭の中でイメージをしながら作っていたので具体的な形などがまとまっていなかったことにエルに手伝ってもらうとなってから気が付いた。取りあえず材料を近くに持ってくるところとシュナイダーに牽かせる部分の大元になる骨組みができたところまでだ。
 シュナイダーに取り付けられたコンピュータには設計図などを描く機能もあるのでそれを使ってトールは設計図を作って何が必要なのかをまとめた。
「なるほど。そうすると私は取りあえずこの竹を図面の長さに均等に切って床を作ります。」
 トールは自分が開拓者として色々な作業に取り組むというよりはデスクワークが得意ということを再認識した。
 エルは楽しそうに作業をしている。レーザー銃で肉食植物(この星の竹)を切ったりロープでつなげたりしている。
 荷車には問題点もある。
 砂漠では砂に車輪を取られて進まなくなることもあるし、岩場ではちゃんとしたスポークや空気の入っていない車輪では振動が腰に直接ダメージを与えてしまう。
 また軸受けが植物で輪を作るだけの簡単で脆い構造ではすぐに壊れてしまうだろう。
 その問題をクリアするにはベアリングの軸受けと空気の入ったタイヤが必要だ。
 欲を言えばタイヤを支える軸に対し縦揺れを軽減するスプリングなどもあるとなお良い等と、トールがいろいろ考えている間にエルは床を作り終えた。
 タイヤは左右に二個ずつ取り付けをする。
 次はタイヤだが、そんなものはどこにもないので、竹をしならせて円形に丸め、そこに何本かスポークをつけて中心を竹で固定して車輪を作った。車輪は歪で車輪の軸と軸受けは油などが無いのでシュナイダーで引きずると嫌な音がするだろう。
 すぐに瓦解しそうな作りだが二人で協力してアーチ状の屋根の骨組みを取りつけ、テントにも使っていたパラシュートをかけてそれは完成した。
 馬車のような外観だ。
 後は荷物を積んで運ぶだけだ。
「乗ってくれ。」
 トールはエルにそう声をかけた。これでようやくまともに旅ができるというものだ。
「私が? 荷物を運ぶって聞いたけれど私が荷物だって言いたいのですか?」
「そうだ。お前はその・・・大切な仲間・・・荷物だからな!」
 トールは小声でそう言ったが聞こえていたエルはトールから目を逸らした。
「あくまでも荷物なんですね。」
 エルはそう言いながらもトールの言うとおりに二人で作った馬車に乗った。
 
 ☆☆☆
 
 食料は今のところ、トールがトランクにしまっている菓子類と前回の資材調達ミッションで送られてきたものがまだあるが、現実問題として現地調達できなければこの先、生き残ることは出来ない。早く安全な着陸地点を探し、次は百人の人員が補給されることになっている。
 最悪の場合は二人とも餓死するだろうという危機感をエルは持っていた。
 荷物を運ぶためと聞いてこの荷車を作ることに協力したのも、食料を大量に運ぶことができるようにするという目的もあった。
 自分を運ぶ為に作られているとは思いもよらない。
 それだけ大切にされているという事にエルは感謝しようかとも思ったが実際は荷物のついでなのかも知れないと思うとその気持ちは薄れる。
 すべては生き残るためにしている。
 人間はお互いしかいない星、ここが楽園だとしたら二人はアダムとイブだがそんな想像は若干うすら寒いとエルは思っている。将来、誰も来ないで置き去りにされたら、その時は覚悟をしてずっと二人でいなければならない。
 どんな状況でも幸せになりたい・・・とエルは心の底からそう願っている。
「どうだ? 乗り心地は?」
「ばっちりですよ・・・。」
 乗り心地は意外にも良い。疲れもあってエルは眠くなった。
 眠っている間に移動が完了するのだからとても便利だ。
 トールも荷車に乗り込み、二人で休息を取る形を取った。これでは意味がないとエルは思った。
「なあコンキスタ。」
「何ですか?」
 トールはうつ伏せで寝ているエルに声をかけた。
「正直なところ俺は今回の開拓について色々な条件を聞いているうちに嫌になっていた。」
「・・・そうですか・・・。」
「考えても見ろ。こんな砂漠に送り込まれたが。そもそも砂漠を選んだのって生命体が少ない土地だと考えてだろう。緑地も海もあるが、そこの安全性が分からないから砂漠なんだろう何をしても何をするにもここは面倒な星だ。」
 トールはそう言った。
 そう言われてしまえば元も子も無いと思うエルだった。
 自分の仕事が地球に変わる人間の住める星を探すという途方もない仕事ではあるし、ようやく見つけたこの星も何とか適応できるかどうかのぎりぎりの星だ。
 確かに客観的に見ればこの星よりも宇宙船の方が生活環境は段違いに良いものだろうが、持続可能かと問われると宇宙船は厳しい。人類が狭い宇宙船で生存し続けられるということは難しいのだ。
 管理され、誰もが病気にならず、その代わり誰もが生きる事に対して自由を奪われた宇宙船という限られた空間に存在する自治体はディストピアというものだ。
 そんなところから解放されるには可能性が低くてもいつ見つかるか分からない完璧な代わりよりはこの星で我慢してでも次の住処を作らなければとエルは考えていた。
 やはりこの男とは価値観が違い過ぎて、この先のミッションも一緒にこなせるかエルは不安になった。
「でも唯一良かったと思うのは一人じゃなかったことだ。」
「え?」
「俺一人でここに送られてくると思っていたからな。最初は・・・俺自身、高い給料で雇われていても俺はそういう実験動物。金というものは使えなければ意味が無いとここへ来て、いや来る前からそう思っていた。だから本当はずっと宇宙船にいたかったんだ。」
 トールはそう言った。
 何が言いたいのか察しはつくし、こういう説教みたいな話は嫌いだがエルは黙って聞くことにした。
「でもここへ来て何というか俺は若干楽しくなってきた。」
「そうなのですか?」
「最初の打ち合わせであんたに会った時、こっちの苦労など何も知らない小娘の命令で人が住むのには向かない星へと送り込まれるのかと思って俺は絶望してた。酷い話だろ。
 俺ら作業員はいつだって帰るということはそもそも前提として無いのにもかかわらず、誰だか分からない開拓の『前世の記憶』を埋め込まれ、それが素敵なことだと洗脳されてこうして送り込まれて『ここで死ね。』と言うのだから。しかもこんな糞な星で」
 聞かなければ良かったとエルは思ったし、聞いているとだんだん鬱陶しくなってくると思ったので話をさえぎる。
「要するに私が一緒に来て良かったと思っているのでしょう? はいはい。良かったですね。」
 エルはそう返した。
「い・・・いや、そんなこと言ってないぞ。」
 トールは慌ててそれを否定する。
「行っておきますが、この星は素敵な星なのですよ。我々二人だけじゃ却って砂漠しか選べなかったのは仕方ないと思いますが、確かに化け物もいるけれど森もあるし海もある。謎の古代文明の遺跡だってあるかもしれないし、生き物もたくさんいる。しかも事前調査でローバーがこの星の探査で発見した生物のたんぱく質は人間にも食すことができるそうです。人類はここを手に入れるべきなのです。糞な星と言わないでください。」
 と、エルはこの星の魅力を熱く語った。つまり、このミッションはただ次の人類の住処を探すためだけではない冒険をするという魅力があるのだ。
 
 
                                   ☆彡

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