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キューバで受けたサルサレッスンが、思いのほか厳しかった

本場のキューバでサルサを習ってみたい。

ダンス留学をしていた友人がすすめてくれた場所で、マンツーマンレッスンを受けてみました。

首都ハバナの中心部にあるダンス教室、「ラ・カサ・デル・ソン」の個人レッスンは、1時間で15CUC(注)とリーズナブル。
(注:通貨単位と価格は2016年当時、CUCは米ドルに連動、約1600円)

テレビ番組の企画で、フィギュアスケートの浅田舞さんが指導を受けた、ホルヘ先生に教わることにしました。

以前、ニューヨークや東京でステップを習ったことがありますが、キューバの音楽やリズムに合わせて踊るスタイルは、雰囲気も違い、自由で楽しそう。

ところが…。

予想もしなかったような、細かい指示が、次々ととんできます。

「ターン(回転)に入るとき、足のつま先の向きは?」、「体の重心はどこ?」、「腕を曲げる角度は?」といった具合に。

できないと何度も繰り返す。たくさん注意されて、あげく、頭がパンクしそうになりました。

サルサは、基本ステップはシンプルな、ペアダンス。ターンなどの技を盛り込めば、それだけ、ダイナミックに踊ることもできます。

動きにパターンはあっても、即興の要素が強いストリートダンスなのです。

ですから、ホルヘ先生のレッスンを受けて、「動きが計算しつくされている」ことに、驚くばかりでした。

とくにサルサのペアは男性がリード、女性はフォローなので、私は「ついていく」側です。

男性がじょうずにリードしてくれれば、なんくるないさー。なんて意識もどこかにありました。

とりあえず、頭のなかがハテナマークでいっぱいになりながら、ホルヘ先生のレッスンを終えました。

目の前の友人に感想を伝えようにも、知恵熱みたいな状態で、日本語が出てこない。

それなのに、次の日もホルヘ先生のレッスンに予約を入れてしまいました。

「どMだね~」と友人に笑われながら。

翌日は、「昨日できなかったところ」を先生が覚えていて、そこから始まりました。

足のつま先があらぬ方向にいってしまい、つい目視しようとすると、「下を向かないで」と怒られます。

この日も、やはりミリ単位の「修正作業」が続きました。

そんなこんなで、レッスンの終わりが近づき、ホルヘ先生はノリノリのティンバ(キューバのサルサ)音楽をかけました。

では最後に一曲、踊ってみましょう、という感じで。

「教わったこと、できるかな」と緊張している私をしり目に、先生は音楽に合わせ、体をはずませています。

先ほどまで真顔だった先生は、別人のようににこやかです。

踊りながら「ひょっこりはん」みたいに顔を出したり、突然ひらりと跳ねあがったり。キューバ人らしい明るさいっぱいに、先生がはじけます。

先生がアクロバットな動きを入れるたび、私は驚き、笑い、リードされるがままに動いていたら、体が宙に浮いているような心持ちになっていました。

ああそうか。

相手に動きを「ゆだねる」って、こういうことなのかな。

「即興で自由に動く」、「相手からの合図に反応する」には、ただ「受け身」でいるのではなく、それなりの態勢がある、ということを先生は伝えたかったのではないか。

先生に引っ張られるように動くのではなく、こちらも「カモン、レッツゴー(Vamos!)」、「準備はできているぜ」という体のポジションを決めて、相手の動きに、「主体的に」合わせていく。

そうして、ますますふたりが「自由に」動けるようになる。

ペアダンスも、主従関係ではなく、対等なコミュニケーションなんだなと、改めて気づかされたレッスンでした。



【写真】サルサのみならず、様々なダンスレッスンが開かれている、La Casa del Son(https://lacasonadelson.com/?lang=en)のグループレッスン風景。オバマ米大統領が、キューバとの国交を回復したあと、ハバナを訪れた2016年3月で、米国人のツアー観光客も街にあふれていて、レッスンも盛況でした。「先生によって教え方もいろいろで、やさしい先生もいますよ」(ダンス留学していた友人)とのことです。

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