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#7 DeepTech海水淡水化編の続き

こんにちは、興味を持ってさらに気になったので海水淡水化についてのスタートアップや実際に行われている研究についてさらにまとめてみました。拙い文章ですが、お読みいただけると嬉しいです。

1)素材によって海水淡水化の効率を向上させる
→東京大学 相田卓越教授の研究グループ

テフロン表面のように内壁がフッ素で密に覆われた内径0.9ナノメートル(注4)のナノチューブ(フッ素化ナノチューブ)を超分子重合により開発したことが新しい成果です。このナノチューブは塩を通さないが、これまでの目標であったアクアポリンの4500倍の速度で水を透過します。アクアポリンとは、細胞の水取り込みに関係する細胞膜に存在するタンパク質で、内径〜0.3 ナノメートルの穴を水分子をのみが選択的に透過し、イオンや他の物質は透過させない性質をもつものです

一般に高い水透過能と高い塩除去能を同時に満たすことは極めて難しいが、ここでは、密なフッ素表面が水分子の結合を切断し同時に塩化物イオンの侵入を阻止するために、これまでにない圧倒的なスピードでの塩水の脱塩が実現されました。この成果は、地球規模の飲料水不足に対応するための超高速水処理膜の開発につながると期待されています。速度を上げることにより圧力をかける必要が小さくなるので、電気代の消費量を少なくすることにつながります。

実際にこの研究のお話を直接お伺いしたことがあるのですが、まだ実用化のじの字も出ていない段階で、スケールアップする段階でこのフッ素化ナノチューブを重ねるのがあまりにも難しく何年先に実用化に至るか全くわからないとおっしゃっていました。共同研究先に企業がなかったため、スケールアップを得意とする企業とくむことは一つの可能性なのではないかと考えました。調査を通じて企業がスケールアップに通じている点はどのような要素からなるのかというリサーチが必要だと感じました。


2)海水淡水化×DX  株式会社Waqua
https://waqua.com
IoT化した小型海水淡水化装置とプラットフォームで、世界中に水のマイクロインフラを構築することを目指している企業です。小型海水淡水化装置・防災用手動浄水器・循環式手洗いユニットを製造し、建設現場・船舶・防災・自治体などがクライアントとなっています。
例として船舶での導入メリットを挙げると船舶設置型小型造水器は世界最小クラスなので、少しのスペースで設置が可能です。さらに、貯水タンクのストックが減少し船の軽量化につながり燃費の改善が期待できます。またいつでも、必要な量の水を造水できるので、節水することなく生活用水の確保ができ労働環境の改善にもつながると説明されています


コア技術としてはミカン箱サイズながらNASAが開発したろ過システムを応用して特許を取得。家庭用電源があれば1日あたり約1トンの海水・淡水を浄化することが可能で、風力や太陽光との再生可能エネルギーとの組み合わせが期待されています。


MCP Holdings LimitedやSony Innovation Fundが出資している企業です。

3)Manhat(アブダビ)

最後はアブダビの企業で海水淡水化ではなく、太陽熱の蒸留を利用して水を得る企業です。CEOはKhalifa UniversityのAssociate Professor で材料科学、ポリマー、ナノテクノロジーに精通した強力な研究者です。
海辺に温室を設置し、太陽光線によって水を蒸発するまで加熱することで水を得る。水蒸気は音質の冷たい面に触れて凝縮し、最終的には純度の高い蒸留水として回収・保存されています。
ハイエンドの水上アプリケーションやレジャー産業をターゲットに人工島などで利用しているそうです。アブダビ経済開発局のTakamulプログラムは、特許出願の初期段階を資金面でサポートしています。

まとめ
海水淡水化による水の獲得は、エネルギーや廃水の問題を多く抱えており解決するべき問題の一つです。水は、世界経済の90%、全雇用の75%に不可欠なものです。一方、従来の海水淡水化方法は、二酸化炭素排出量が非常に多く、世界中の海水淡水化施設から年間7600万トンのCO2が排出されていると推定されていて、2040年には、年間2億1800万トンのCO2が排出されると予測されています。

この分野でいくつか調べてみましたがスタートアップの入り込む余地があるのは、どちらかというと小型の施設で足りないところに手が届くようなサービスの提供×再生エネルギーの活用という部分になっていそうです。非常にスケールアップが難しく市場としてどうなのかなと思いつつも、主に途上国についてはまだまだ大きい施設を導入するのは運営ノウハウや資金等の関係で難しいため途上国に市場を広げていくという方向性になっていくと考えました。その上で途上国でしっかり生産管理やビジネスとして成立させるだけのビジネス力やメンバーがいるかという部分が競争力となる気がしており、良い研究技術と良いビジネス力の掛け合わせする機会の提供というのが今後の課題になってくるのではないかと思います。

自分の周りの社会だけの知識なので断言はできませんが、まだまだアカデミア研究者とビジネスの相互理解というものは進んでいないという印象を受けます。自分の指導教官はスタートアップの説明は論理的ではないことが多いと感じていると正直に自分に対してお話してくれました。特に水の分野では運営してなんぼのところがあると思うので、そういった連携が進んでいくことを期待する+自分から何かできないか考えるということを続けていきたいと思っています。

長くなってしまいましたが、今回はここまでにして次回は自分がスタートアップ講義で取り扱った紫外線の消毒技術について振りかえってみたいと思います。
読んでいただきありがとうございました。