#15 論文再調査(1)

こんにちは、最近研究を進めていたのですが少し行き詰まってしまい新しい仮説を立てるために複数の論文を読みました。今回はその論文を紹介するとともに、検証したい仮説について考えてみたいと思います。

①The effect of recycled water information disclosure on public acceptance of recycled water—Evidence from residents of Xi'an, China (Hou et al. 2020)

<研究の概略・前提>
この論文では、一般市民の再生水受容の要因とその影響経路を明らかにするために、consciousness-context-behavior theoryに基づき、構造方程式モデルを採用して、再生水に関する情報開示が一般市民の受容に及ぼす効果メカニズムについて分析を行っています。
consciousness-context-behavior theory
のcontextは意識、文脈、行動の間の仲介・調整的な役割を担っています。consciousnessは個人のbehaviorに直接的な影響を与えるが、個人のconsciousnessは外部のcontextに影響される(Bandura, 1999)という考え方です。この理論は、再生水の情報開示が一般の人々の受容に与える影響についての研究の前提にあります。この理論に基づくと、再生水の直接の利用者である一般市民の行動は、水資源保全や環境責任に対する意識と再生水に対する態度に影響されます。したがって、水資源問題に対する認識、節水意識、個人の責任感、再生水利用のリスク認識などから、再生水に対する国民の受容性に影響を与える要因を探ることが必要であると考えられます。

この研究ではconsciousnessとbehaviorの関係は、外部context(再生水情報開示)によって規定されると仮定しています。consciousness-(水資源問題の認識、節水意識、個人的責任感、再生水のリスク認識)context-(再生水情報開示)行動意図(再生水の公的受容)の関係性を明らかにし、再生水情報開示の公的受容への効果メカニズムを分析するのがこの研究です。

<研究結果>
再生水に対するリスク認知(RPRW)は、再生水に対する一般市民の受容(PARW)に最も大きな影響を与える。

節水意識(CWS)と RPRW は PARW に対して有意な交互作用がある。

節水意識(CWS)と環境責任意識(CER)は、PARW に対して有意な交互作用がある。

再生水情報開示は、意識および行動意図に対して最も有意な規制効果を有する。

と述べられています。

<疑問・仮説>
この調査ではリスク認知・節水意識・環境責任意識は独立した項目として調べられていますが、この3つの要素の中でどの要素が重要なのか?ということが疑問に感じました。自分の研究の中ではリスク認知が多いという仮説なので、これをTopic Analysisで検証することが新しい発見につながると考えられます。

②Recycled or reclaimed? The effect of terminology on water reuse perceptions(McClaran et al. 2021)

<研究の概略・前提>
この研究では、再生水の説明をする時に用いている単語が、市民の受容に関係しているかどうかを調査した論文です。具体的にはreclaimed waterやrecycled waterどちらの方が肯定的で説明に用いるべきか?などという議論をしています。

<研究結果>
他の研究者は、リサイクルという用語は受容を得るのに最も効果がないと述べているが(例えば、Dolnicar and Hurlimann, 2010)、結果は、より馴染みがないが同義語の用語と比較して、recycleはよりポジティブな連想があることを示唆しています。用語の効果を検証すると、reclaimedと表記された再利用水は、recycledと表記された場合よりもネガティブなリスク認知をし、受け入れられる確率が低くなっています。実際、reclaimed waterは recycled waterよりも理解されておらず、よりネガティブな汚染物質を持っていると認識されていることが分かりました

ある特定の用語に親しみを持つことで、再利用水に対する嫌悪要因が生み出すネガティブな連想が緩和される可能性があると考えられます。今回は、米国では一般的でないため、馴染みのない専門用語(例:三次処理水)に対する初期連想を測定しませんでしたが、再利用水に関する専門用語や一般用語の認知をさらに理解するための今後の研究課題となる可能性があると述べています。

<疑問と仮説>
そもそもrecycledとreclaimedの登場頻度に大きな差があるのではないかと考えているので、検索数やキーワード検索によって登場するツイートの数について調査することは有意義であると考えられます。また、登場するトピック・文脈についても別れているならば、それも調べると意味合いの違いがわかってくるのではないかと考えました。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
また考察が思い浮かんだら更新したいと思います。