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Balance Gateway(BG)は使いにくいのか?【残高確認の現状と未来】

◆こんな人にオススメ!

🤔「残高確認手続で利用が必須になりつつあるBalance Gateway(以下BG)ってどんなシステムなの?」と疑問を持っている人

🤔「BGって正直使いにくいけど、これからどうなっていくの?」と考えている人

🐣 新人会計士←どうせ残確の回収管理の担当になるので、勉強してて損はないですよ!

◆この記事を読むと…

💡 BGの基本的な概要や将来の可能性についての理解が深まります。

◆この記事を書いた僕はこんな人!

大手監査法人勤務2年目の会計士試験合格者です。
ドンピシャで残高確認手続きを担当しています。当事者なのでリアルな声だと思います。

⒈ BGについて知識を深めたくなったから、BGについてあれこれ書きます!


お久しぶりです。エイトです。
今回は新人会計士なら、誰しもが通る道、残高確認手続の中でも、当該手続きをするうえでのプラットフォームとなるBalance Gateway(以下BG)について色々と述べていこうかなと思います。

⒉ 残高確認手続きって、なんぞ?


BGについてペラペラ話す前に、まずは残高確認手続についておさらいしておきましょう。
以下は、デロイトトーマツ(大手監査法人の1つ)のHPより引用しています。

 確認手続とは、被監査会社が保有する預金や債権・債務等について、金融機関や債権者、債務者といった被監査会社と取引関係のある第三者(確認回答者)から会計監査人が文書による回答を直接入手し証明力の強い監査証拠として活用する、会計監査における非常に重要な監査手続の1つです。
 当該手続は、監査人の専門的判断によって選定された被監査会社の取引先である金融機関や債権者それぞれに対し書面を送付する方法で行われており、1事業年度の監査につき、1社あたり数十件から場合によっては数百件もの書面が、作成・送付されています。
 また、本手続は会計監査人のコントロール下で実施される必要があるため、被監査会社が確認状に社判を押印後、会計監査人が書面を封筒に入れ、郵送処理をします。被監査会社の取引先である確認回答者は、届いた書面に回答を記載したうえで返送し、会計監査人がそれらを回収・管理します。
 これら作業は個別にみると単純な作業ですが、積み重ねられた作業は、被監査会社の担当者や、回答・返送する立場である取引先(確認回答者)にとり、大きな負担になっていることが想定されます。さらに、手続は期末の決算書を検証する目的で行われるため、これらの作業が特定の時期に偏重する点も、負担を増加させる要因となっています。¹
¹ 国内初の監査手続における残高確認オンラインサービス「Balance Gateway」| Audit Innovation |デロイト トーマツ グループ | Deloitte

なんか堅苦しい表現でごちゃごちゃ記述していますが、私なりにかみ砕いて説明すると、こんな感じになるかと思います。
(トーマツさん、ごめんなさい。怒らないで。)

残高確認手続とは…
クライアントが保有している(と主張している)預金や債権債務等について、本当に保有してんのかなっていうのを確かめる(主に実在性を確かめる)ために、クライアントとの取引関係である銀行や取引先に「このクライアントさんが○○を所有しているっぽいんですけど、本当なんですか?」とお手紙を出し、その回答によって、当該所有の事実を確かめる手続きです。
(お手紙はかみ砕きすぎました。失礼。)

残高確認手続の課題とは…
手続きの工程が多すぎる。
(クライアントが宛先の情報提供→監査人が確認→クライアント出力・押印……工程数がかなりある😂)
手続きの実施時期が一時点に集中している。
(3月決算期末だと、一人で複数のクライアントの残確を管理するなんて日常茶飯事。)
個人でもLINEでやり取りする時代に紙面でやり取りをしている。
(なんでこの時代に…と思っている人はかなりいるはず。)

⒊ じゃあ、BGって、なんぞ?


残高確認手続がどんな手続きなのか、そして、当該手続きの課題が分かったところで、次にBGについて説明していきましょう。

以下、BGを運営しているACC(会計監査確認センター合同会社)のHPより引用します。

Balance Gatewayは、残高確認手続の包括的なプラットフォームサービスです。
Web上でのシンプルな操作により電子確認状の発送や回答ができるため、
これまでの実務に比してスピーディな残高確認が可能となるほか、
事務センターによる各種サポート機能により、
確認手続に必要な事務処理作業を全面的にサポートいたします。²
² 会計監査確認センター合同会社| Balance Gateway

要は、先ほど述べた残高確認手続きの一連の流れを全て電子で行うためのプラットフォームを提供するサービスです。

監査手続の中でもどうしても多大な時間がかかってしまう残高確認手続きをどうにか効率化できないかと考えていた4大大手監査法人が手を組み、共同出資をして設立されたのが、ACC(会計監査確認センター)であり、そこで提供されているサービスがBGというわけです。

流行りのDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として誕生したという事ですね。

⒋ BGを利用するメリットは?


次に、BGを利用するメリットは何なのかを述べていきたいのですが、こちらもBG運営会社であるACCのHPに記載されているのを引用します。

迅速な監査対応の実現…
従来の郵送によるタイムラグが解消され、迅速な回答を実現します。
回答状況の可視化…
回答依頼や回答の最新の状況を把握でき、回答のもれや遅延を防ぎます。
業務の簡素化…
紙面の印刷・押印・封入・郵送が不要になり、必要な作業が簡素化します。
業務の標準化…
回答依頼の準備から発送・回収まで標準化されたフローにより業務効率が向上します。
柔軟な働き方への対応…
社内環境にアクセスできるパソコンがあれば場所や時間帯を選ばずに利用可能で、利用者の柔軟な働き方を後押しできます。³
³ 会計監査確認センター取組紹介_P9 

メリットが実にきれいにまとまっていますね😊
ここでのポイントとなるメリットは何といっても「迅速な監査対応の実現」と「業務の簡素化」でしょう。

再三述べてきましてが、残高確認手続のネックは何といっても、時間がかかるという点です。これが解消されれば、監査業務もかなり効率化されることでしょう。

何十件もの残高証明書を封筒に入れていく作業は面倒ですし、郵便局での順番待ちなんて、マジで時間の無駄です。
(監査法人勤務の会計士なら、「こんなことをするために会計士になったんじゃない!」と一度は思ったことがあると思います。でも、重要な手続きなんで、手を抜いて手続きをすると地獄を見ます。本気で取り組みましょう😅)

この悩みが解決されるなんてなんていいサービスなんだと、利用前の私は思いました。

ところがどっこい…

⒌ 現状のBG(紙面確認)を使ってみた感想→ぶっちゃけ不便


ん~、こりゃ非効率だな。
これが使っていくうちに芽生えた正直な感想です。

なぜ、このような感想を抱くようになったのか、理由は以下の通りです。

紙面確認を選択した場合、ただ工程数が増えただけ。
BGには、紙面確認と電子確認の2種類を選択することができました。
クライアントには、急に電子残確を利用する前に、まずはBGというシステムに慣れてから電子確認を利用したいという声が多かったのか、BG開始当初は紙面確認を選択することが多かったです。
また、当初は電子確認に対応している勘定科目が債権債務だけといった選択の幅がそもそもなかったというのも、電子確認があまり利用されなかった要因の1つなのかなと思います。
上記の理由から、紙面確認を利用したわけですが、いかんせん不便でした。
どういうことかといいますと、従来の紙面での残高確認において、残高確認書の受け渡しのフローは以下のようなものでした。

クライアント→監査チーム→宛先→監査チーム

そして、BGを利用すると以下のようなフローになりました。

クライアント→監査チーム→ACC(BG提供会社)→宛先→ACC→監査チーム

もうお分かりですね。BGを提供するACCが監査チームと宛先の間に登場したことにより、余計に郵送の時間がかかるという問題が生じました。
また、ACCがBGに反映してくれるのにどれだけ時間がかかるのかが当初は不明であり、宛先に届いたのが、返送期限の1、2日前だった。というケースが少なからず発生しました。
(監査人の中にはクライアントからクレームが入ったりしているチームもあったそうな。かわいそう😥)
回収期限を守ることがミソな残高確認手続きにおいて、これは問題だなと誰しも思ったはずです。

いつの間にかサイトのデザインやマニュアルがガラリと変わっていて、作業に支障が出た。
利用者の声を聴き、より利用しやすいように日々システムを修正・アップデートさせるのはいいことだと思います。
ですが、利用が集中している時期に大幅にアップデートしていただくのは控えてほしかったです。
これはまさしく私の経験なのですが、12月決算のクライアントの残高確認をBG上で管理して行っていたのですが、途中でシステムのデザインや手順が急に変わったときは驚きました。
忙しい時期にこのような変更をしていただくのは控えていただきたかったです。
(監査業務には閑散期と繁忙期が明確に分かれているので、アップデートをするなら、閑散期にするべきではないでしょうか?)

⒍ 使ってみてわかった現段階のBG(紙面確認)を利用する上での留意点


上記のような私の経験を踏まえて、BG(紙面確認)を利用する際の留意点を以下にまとめてみました。

残高確認のスケジュールには、いつも以上に十分な余裕をもたせること。
何といっても回収期限を厳守することが大切。そのために、回収期限日から逆算して、余裕のあるスケジューリングをするように心がけよう。

マニュアルに記載されていないことやイレギュラーな事態が生じたら、すぐにACCに問い合わせること。
チーム内で解決できないトラブル等が生じた場合や不明点がある場合は、BGを運営しているACCに問い合わせよう。親切に回答してもらえますよ。

あらかじめBGを利用しない方法も利用できるように準備しておくこと。
はじめはBGを利用していたが、再発送等のなるべく早く解答を回収したいという場合も出てくると思います。そのような場合に対応できるよう、あらかじめ、BGを介さず宛先に直接発送できるように準備しておきましょう。

⒎ 猛省とBGの近い将来の可能性→期待大!!!


さて、BGについてかなり辛辣な意見をしてしまいました。
ですが、私以外の会計士たちも現状のBGに利便性を感じている人は少ないように思います。

では、BGは使えないシステムなのでしょうか。

答えはNo!です。
なぜなら、BGの真骨頂は、電子確認であるからです。

利用できる幅がどんどん増えている。
現状はまだ電子確認を選択できるのが、債権債務と一部の銀行ですが、今後はほぼすべての勘定科目に対して利用できるようになるようです。
利用できる幅が広がると、会計士もクライアントも積極的に利用するようになるかと思います。

押印が不要。
残高確認書で意外と厄介なのが、押印が必要であるという事です。
例えば、銀行へ残高確認書を発送する場合、特定の銀行印が必要になります。
しかし、その銀行印は地方の支店でしか保管していないというケースもあり、その場合は、本社から当該支店に残高確認書を送り、押印してもらった後、本社に返送してもらい、それを我々が受け取ることで、ようやく発送ができるようになります。
発送するまでにかなり時間がとられるのです。
ですが、電子確認だと、上司の承認だけでよくなるので、その分の時間を短縮することができます。

ワンクリックで発送完了。
電子になると、紙面を一切使わなくなり、PCのクリック一つで宛先に残高確認書が届くようになります。
残高確認書を印刷し、封筒に入れたり、切手を貼る作業がなくなるのは管理時短です。
また、郵便を利用していることによって生じていたタイムラグがなくなりますので、そうなるとかなり残高確認書の回収が楽になると思います。

BG自体、サービスが開始されてまだ数年しかたっていませんし、これから日々アップデートされ、どんどん使いやすくなっていくことが期待できます。
(将来の利便性を全く考慮せずに、現状だけを見て、批判ばかりするのは、ビジネス・会計の専門家としてあるまじき姿でした。反省反省😅)

⒏ 今回のまとめ


以下、今回のまとめです。おさらいしましょう!

▪ 残高確認のスケジュールには余裕をもたせて、トラブルが起きても、期日までに回収できるようにしましょう!

▪ 残高確認に関わる人は、BGへの利便性を考慮し、ポジティブに利用していくべき!
 会計士が主体となって、BGの利便性を広めれるようになればいいのではないでしょうか?

▪ BGはまだまだ発展途上のシステム!現状はまだまだ使いにくい点もあるが、近い将来、残確確認手続の負担を大きく軽減してくれる可能性が高い!

BGが監査業務の効率化に一役買ってくれることを期待しています。

では、また😁






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