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白いジャケット

白いジャケットを着た彼女は、司会者が「では、質問のある方は‥」と会場を見渡そうとしたとき、直ぐに「はい」と手を挙げた。
 
全員がダーク系の就活スーツだった。その中でただ一人、白いジャケットにワンピース。
目立っていた。
 
私は、就活セミナーの運営をするイベント会社でアルバイトをしており、その時、会場でマイクをもって走る担当だった。
 
どこかの企業の社長の講演は面白く、「なるほど」、「ふーむ」と思いながら聞いていたが、特に質問も浮かばない中、颯爽と手を挙げて、的を射た質問をする彼女はかっこよかった。
 
社長は、一応質問に答え、最後にこう言った。
「あなた、白いジャケットステキですね。我が社は多様性を重視しています。あなたみたいな方に、入社してほしいですね。アハハ」
 
彼女は愛嬌たっぷりにウフフと笑い、会場はシンとした。
 
私は心の中で
 
(社長、違うだろう。君も、違うだろう。)
 
と毒づいた。
 
彼女にあたるのは筋違いだったかもしれない。でも、そこには「あざとさ」しか残らず、せっかくのよい質問はかき消された。同じ就活生からは多分あとで陰口を叩かれる。
 
彼女がどう反応するのが正解だったかは分からない。
「そんな表面的なところはどうでもいいんで。面接でしっかり中身を見ていただきたいですね」とか言い出す学生がいたら、それはそれでどうかと思う。
 
でも、なんだか残念だった。
 
社長には、多分今同じ場面に遭遇しても同じように毒づくと思う。
 
白ジャケットに惑わされてはいけない。どんなに白いジャケットがステキでもこの場で褒めるなら、質問の方!!
 
そもそも多様性を重視するということは、色々な個性や存在そのものを、当たり前のことと取り扱うということだと思う。

白い服だろうがアロハシャツだろうが、そこにいることをただただ認めて、きちんとコミュニケーションする。マイノリティの方々への接し方も全く同じはずである。
 
いちいち「あなた〇〇ですね。」と指摘し、「でも我が社、受け入れられますよ」とアピールするような発言は、逆に<狭量>がにじみ出る。
 

ことばは不思議である。
言う人によって印象が変わる。
言う人との関係性によっても大きく意味が変わる。

ことばの裏に経験や想いがあるか。

表面的なことに惑わされず、本質や想いを表現することが必要だと思う。
「褒める」だって、その場、その人にふさわしい言葉があるはず。

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褒めるとき「さすが」、「すばらしい」で片付けていませんか。
ことばの受け手が本当に言ってほしいことばを言えていますか。
もっと想いをもって、具体的な言葉で伝えてみませんか。

今日の質問:ねえもっと、具体的に表現してみない?
 
 


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