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『冒険』できる会社ですか?

久々に雨雲から解放されて、急に真夏のようになった5月。自転車で官庁街をかっ飛ばしながら、熱風の中にいた学生時代のタイ旅行を思い出していた。

はじめての「一人旅」で、緊張しすぎ、過呼吸になりそうになった飛行機の中。
「冒険が始まる」はずの一人旅だったが、…9割は一人ではなかった。

タイ人の友人らやその家族が、ほとんどすべての日程にアテンドしてくれたからだ。

アユタヤに行きたいというと車を出してくれ、タイ式マッサージを受けてみたいというと有名らしい寺院に連れて行ってくれた。値段交渉もしてくれる。

屋台で食べて大丈夫なものも選んでくれて、「MAKIはこれは食べてOK。これはMAKIは食べてはいけない」と、とても細かい指導を頂いた。

1日目、2日目は楽しかった。ありがたい。
3日目。ありがたいけど、だんだんと…になってきた。

せっかく旅に来たのに、これでは東京観光はとバスツアーよりも手厚い。まるで【姫】ではないか。
危険なのはイヤだけど、何かしたい。何でもいいから何かしたい。

ちょっとは『冒険』がしたい。

…結果、美容院@タイに行ってカラーをすることにした(安全な冒険)。

美容院@タイは孤独である。
なんせ全く言葉が通じない。英語も通じない。お金の交渉はしてくれたが、さすがにアテンドは外れたので、私は孤軍奮闘することになる。

私はタイに行く少し前に、当時流行りの〔ゆるふわパーマ〕をかけたばかりであった(が、多分タイには〔ゆるふわパーマ〕という概念自体が存在しなかったのではないかと思われる)。

…記憶にあるタイの美容師はとにかく「引っぱる」。コテで髪を挟み、そして引っぱる。私の〔ゆるふわパーマ〕は、何度も何度もコテでひきのばされ、最終的にストレートになった。

待って。ねえ、待って。それ、パーマやねん。わざとやねん。ちょっとうねってるとかじゃないねん!!湿度のせいとかでもないねん。(絶叫!!)

心で叫びながら、段々と笑えてきた。

美容師さんは多分、私をのりぴー(酒井法子さん)に寄せようとしてくれていた(私がタイにいった20年ちょっと前はタイの至るところにのりぴーのポスターが貼ってあり、のりぴー=素晴らしい=日本人=好印象、のような状態だった)。

のりピーは無理なのに(色々ね)。ごめんなさい。
ああ、それにしても、パーマに払った1万円…

結局私は、色を指定した以外は一言もしゃべらずにその時を「無」になって過ごした。いや、心での中で叫び倒しながら、その時をやり過ごした。

ひとしきり美容院でのできごとを思い出し、ふと、それ以外のタイの記憶がほとんどないことに気づく。

いろんな観光地に連れて行ってもらい、色んなものを食べさせてもらったのに。象にも乗ったし、特別な経験もたくさんあったのに。

他方で、美容室@タイ、のあの時間の記憶は鮮明である。

カラー剤の鼻につくニオイ、アッチアチのコテにびくびくしながらじっと動かず、泣きたいような笑いたいような、ごちゃごちゃな気持ちと格闘していたあの『冒険』の時間。

結局なんだってそうだ。
先回りして、リスクを回避し、素晴らしい経験をさせても、本人の記憶には残らない。
手取り足取り教えたって、覚えちゃいない。

私がタイ旅行で実行した、たった一つの冒険から学んだことは少なくない。
引き受けられる程度の危険なら、引き受けた方が面白い。
記憶に残り、血肉となるのは、本人が「体験」したことだけ。

変な髪型になっても、毛根が全滅しようとも(タイのカラー剤は最強でした…途中で覚悟しました)、自分主体でやったことだけが、20年経っても自分の中に残っている。

あなたは部下のお世話をし過ぎてはいませんか。
いちいち口を出し過ぎてはいませんか。
マニュアルを作り過ぎてはいませんか。
あなたの会社のメンバーは、仕事で『冒険』できていますか。
宝さがしの地図は、少し雑なくらいがちょうどいいとは思いませんか。

今日の質問:手取り足取りしすぎじゃない?

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