【27 July】 スティーブ少年のポット。

陶芸家スティーブ・ハリソンのアトリエに行ってきた。

ここを訪問できると知ったのはスティーブマニアの友人Mくんから。アーティストの作業場ってあまり入れない場所だけど、彼は普通に自宅兼アトリエを公開しているらしい。作業場好きの好奇心と「是非とも行け」というMくんの激熱い念に押され、アポイントをとりつけた。

アトリエのあるEnfieldはロンドン中心部から30分ほど。予定より少し早めに着くと、玄関先で奥さんのJuliaが待っていてくれた。玄関からキッチンを通り抜け、緑豊かな庭にある白い建物へ。そのガラスドアの奥に、白い肌にグレイヘア、白いエプロン姿のスティーブが見えた。一連の白の繋がりがなんとも素敵で、のっけからキュンとさせられる。

作家というと物静かなキャラクターをイメージしがちだけど、スティーブはとても明るくちゃきちゃきとした人だった。いや、というか少年みたいと言うのがハマるかな。挨拶するやいなやアトリエや製作中の作品の説明をしてくれて、「自由に見てね! 僕も自由に作るから! 気になったらなんでも聞いて!」と色作りに励み、「nice yellow!!」とか「black...perfect!」とかひとり口走りながら、なにやら楽しそうにやっている。まるで自由に遊んでいるような空気感。なのでこっちも写真を撮ったり道具を見たり質問したり、好きに過ごさせてもらった。


そうしてしばらくアトリエで過ごしたあとは、「お茶にしよう!」とキッチンへ。マリアージュ・フレールの紅茶を淹れてくれた。

アトリエもさながらこの家はキッチンもすこぶる素敵で、古いガスレンジにブリキのヤカン、日本の鉄瓶。飾り棚にはスティーブのティーポットやマグ、茶葉に茶器が並べられ、そこに天窓から光が落ちてくる。それがなんとも美しく心地よく、ちょっと違う世界にいるみたい。

美しいカップとプレートに、紅茶とJulia作のお菓子。アトリエを訪れる人にはいつもこのおもてなしをするそうで、「日々違う人が来て、キッチンの状態も日によって違って、いろんな話をして」と、このお茶の時間がとても大事だと言っていた。毎日アトリエにいる日常はルーティンのようで、彼にとってはそうじゃないんだね。そうやって一日一日を新鮮に過ごす、なんとも豊かな暮らし方に憧れ、自分の飽きっぽさと雑さをちょっと反省。


お茶をたのしみながら、スティーブに陶芸をはじめたきっかけを聞いた。彼が作品を作り出したのは16歳となかなか早く、しかも

「ふと、これやろう!と感じたんだよね。僕はできるって思った」

と直感からのスタートだったらしい。そこから現在まで変わらず作ることが楽しくて、(答えは分かっていたものの)今まで飽きたことはないの?と聞くと食いぎみに「ないね!!」と返ってきた。特に彼の作風である「ソルトグレーズ」(塩を加えて焼き上げる製法)は仕上がりが読みにくいそうで、熟練した今でも予測しきれないところが面白いんだとか。

他にもこれからのプランやもの作りに対する考えなんかを話してくれて、あっという間に時間が過ぎた。そして再びアトリエに戻り、私が「これが好き」というカップを差し出すと、「そうなんだよ! この黒と、ここのブルーの色合いがすごくいいんだ!!」と力説。ちなみにスティーブはよくfantasticとlovelyという言葉を使うんだけど、話していると「すごい!」「素敵!」がたくさん出てきてなんだか楽しくなってくる。それは彼が「いいね」とか「素敵だね」を見つける目線で生きているからだろうな、とか思ったり。

(そしてちなみのちなみに、少し日本語習ってるんだよーと彼が発した単語はやっぱり「スゴイ!」だった。)

その本人お墨付きカップは購入し、大切に抱えて帰宅した。(右)

「イギリス人は僕の作品を飾ってあまり使うことはしないんだ。日本人は飾るだけじゃなく日用品として使ってくれるよね。こういうお茶をたのしむ時間と一緒に。それがいいんだ」

と言っていたので、愛でながら使おうと思う。

次はプレートかな。


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