モンスターペイシェントと医療現場と私
季節は、あっという間に10月になりました。
あの暑かった日から1ヵ月、すっかり秋になっていました。
病室からは何も見えませんが('A`)
そして私は個室から6人部屋に移動になりました。
そこには社会生活というか、共同生活というか、そういう温和な雰囲気はまるでなく、患者同士のコミュニケーションは、当初は皆無でした。
そんな中から、私が状況観察にて知り得たことを、ありのままに、話すぜ。
6人部屋とはいえ、日々患者は入れ替わります。その中でもインパクトがあったのが、私の向かいのベッドの患者でした。実はこの方、コロナ妖精さんでした(辛うじてソーシャルディスタンスは保たれていました)。
それに加えて、一時期私が辛い思いをした「排泄障害」が慢性でした。そのベッドの方角からは、他の患者の方角からに比べて5~10倍くらい、耳慣れない、長引く湿り気を帯びた異音が聴こえてきました。私の病床のカーテン越しには、移動式便器(医療用おまる)が常備されていました。
ちなみに食事時って、胃腸が動くじゃないですか。その異音は、一番聞きたくない時に最も頻発します。
夜中になると、肺炎特有のあの苦しそうな呼吸音。さぞかし地獄のようです。でもこの方、朝昼は元気なんです。TVの音つけっぱなしにしてた時は、さすがの私も文句言いに行きましたが。
その方、病状が多少重いだけで、大して害はありませんでした。
「うわあああぁぁぁああ!!!!!一体俺に何をする??????放せ、そいつを外せ!!!!」
ある日突然聴こえてきた雄叫び。それは私の病室に少しずつ近づいて来る('A`)
まあ、声量が違うだけで、私も以前は似たようなことを看護師に訴えていたのかも知れませんが。。。
カーテン1枚隔てて、私の隣のベッドに「そいつ(80代後半)」はやってきました。
「くぉらああぁぁぁあ!!!!!てめーら人殺しか!?寄ってたかって暴力か?よーし!警察に訴えてやるぞ!!!!!今に見てろ!!!」
こういう扱いの困った患者、決して少なくありません。看護師も複数で対応します。
「なにも悪いことしないよ。オムツつけるだけだから足動かさないでね」
看護師の、子供をあやすような話し口調も慣れたものです。
とはいえ相手は、後期高齢者とはいえ男です。ベテラン看護師は柔軟に果敢に対応しようとしますが、どうしても不慣れな若手は、その剣幕に及び腰になります。
次の瞬間、ベテラン看護師が唾を吐きかけられ、腹を蹴られたようです。ダメです。これこそ正真正銘の暴力です。いくら患者でも、高齢者でも許されない。
しかしそこは冷静沈着なベテラン、若手看護師に「両腕、胸部、腹部拘束」と指示。持久力のない老人は、あえなくベッドに、「初期の頃の私」のように括り付けられてしまいました。
次にベテラン看護師が出した指示は、「導尿カテーテル挿管、採尿パックつけるか、尿瓶にしようか?」
この言葉がその老人に聴こえたかは定かではありませんが、「導尿」とういう医療用語に私は全身鳥肌が立ちました。はい、入院中の施術の中で、最も痛いのがコレです(中にはまったく平気な人がいました。訓練でもしてるんでしょうか?)。
「うわあああぁぁぁああ!!!!!痛い痛い痛い!!!!切られるううううぅうぅぅ!!!こいつら人切り魔だ!!!!警察はまだか!!?(誰も呼んでません)」
ひとしきり暴れ、喚いた挙句この老人、消灯時刻には静かになりました。
「ちょ、、、〇〇さん、何してんの???ダメでしょ!!!すぐベッドに戻って!!!」
また例のベテラン看護師の怒声。今度は別の患者らしい。
「ねぇ、これ全部自分で抜いちゃったの?見てごらんよ。体中血だらけじゃん。ゾンビかと思ったよ。考えてもごらんよ。ここ病院だよ(笑いながら全力で怒ってる)」
その患者、かつての私と同じことを実現したらしい。
点滴チューブを1本残らず抜き取り、トイレへゆらゆらと歩き出そうとしたところを現行犯逮捕。
今度は私、その場面、見ました。
パジャマは血染め。腕や足、顔面からは血筋が滴り、そこいら中血痕だらけ。まるでホラー映画のワンシーン。
さすがのベテラン看護師もこれにはマジもんで肝を冷やしたに違いない。
あのね、私、この方々全員、笑えません。
親の心子知らずならぬ、「医療の心患者知らず」。この方々の思考行動、全部自分に重なるんです。出るものはでる。拘束は不快。導尿は苦痛。排泄はトイレでしたい。
これすべて、「命を救う」ことが第一の使命の医療現場では「単なるワガママ勝手」なんです。
ただでさえ、今のご時世、コロナ禍で医療機関はカオス、パニックです。
たわけた厄介ごとで医療従事者を1人、1時間とも無駄な時間を使わせてはいけないのです。
入院3週間、私はようやく「いい患者でいなければ」と心に誓えたのでした(遅い)。
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