さようなら、コクワさん
コクワガタは快適な環境だと4年ほど生きるとネット情報にあった。
じゃあ、昨日の朝虫かごの中で動かなくなっていたコクワガタは、一体何歳だったんだろう……。
玄関の外でひっくり返って弱々しくもがいていたコクワガタは、炎天下の中、衰弱しているようだった。
私は迷いながらも保護することにした。
元気の無いコクワガタは、もう時間の問題かと覚悟を決めていたが、数日後にはよく動きよくエサを食べるようになった。
日々元気な姿を見せてくれるコクワガタを、私はさりげなく見ながら癒されていた。
私が虫かごのエサを取り替えれば、ピタリと動かなくなり、ダルマさん転んだの遊びをしているかのようだった。
時には土の中に完璧に潜り込んでしまい、ヤモリに食べられたのかも!? と、ドッキリを仕掛けられたりもした。
しかしそんな幸せな日々は長くは続かなかった。
一ヶ月程がたち、だんだんとコクワガタの動きが鈍くなりだしたのだ。
そして昨日、天国へと召されたのだった。
彼女は一体何歳だったんだろう。
発見時が3歳と11ヶ月だったなら、私はさほど考えることもなかったけれど……。
あの時私は彼女を保護して良かったのだろうかと、自分を疑いたくもなった。
しかし一ヶ月前に出会った玄関の外にそのまま放置していたなら、彼女のこの一ヶ月はなかったのかもしれない。
保護したつもりが余計なお世話だったのか、幸運だったのか、それはコクワガタにしか知りえないことだ。
虫の見た目で実年齢が分かればいいけれど、そこまで私は虫マスターじゃない。
だから私はこう考えることにした。
私は彼女が3年11ヶ月の歳で知り合った。
彼女は余生の一ヶ月を、安全で快適な環境で暮らした。そして4歳という大往生で天国へと旅立ったのだ。
これはエゴなのかもしれないけれど、私はそう思いたいのだ。
さようなら、コクワさん。
日々の暮らしに癒しをありがとう。
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