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「甘い」「蚊がいる」「私は太った」をイカします! #100日間連続投稿マラソン


 イカって何事?という方はぜひこちらからお読みください(*'ω'*)



「甘い」

くコ:彡 くコ:彡 くコ:彡💦ピューン

 ホイップクリームがてっぺんから掬われる。口に入れる。歯にスプーンが当たって音を立てた。パフェとともに出てくるスプーンはどうしてどれも細くて長いのだろうか。少量しか掬えないのは愉しみの演出、それとも店の策略?舌の上でクリームが溶け、包み込み、唾液と混ざって次第に消えていく。またクリームを掬う。今度はいちごソースの赤味といっしょに。歯とスプーンの音。クリームが溶けて、消える。私は目を閉じて味わった。

「ああ、だめ、見てるだけで口の中がムズムズする」

 相向かいに座る彼女は、顔をしかめながらそう言うとコーヒーを一口含んだ。カップの中は真っ黒だ。

「こういうの苦手?」

「うん。一口で気持ち悪くなると思う」 

「どうぞ」

「いらないって」と彼女は私の手を押し返した。

 彼女に好んでもらえなかった分のクリームが私の中で溶ける。広がる。消える。







「蚊がいる」

くコ:彡 くコ:彡 くコ:彡💦ピューン

 ジョン太がしきりに頭を振っている。そのたびにジョン太のにおいがして、土埃が舞う。

 暑かった。日差しは何とか避けていられるけれど、空気が重苦しいほど温度を持っているし、風もない。ジョン太の舌がずっと出っ放しだった。僕はお父さんの冷蔵庫から氷を盗んできて、袋に詰めてジョン太のとなりに置いてやる。「これ、溶けても飲んじゃあだめだよ。ジョウスイっていうので氷を作ってるから、これは犬とか猫にはよくないらしい」彼はひと吠えして、また頭を振った。

 耳元で嫌な音がした。

 音の主は僕の耳元をかすめ、目の前を行ったり来たりして挑発すると、ジョン太の右目の上のでっぱりに着地した。僕はそいつ目がけて手を振り落とした。乾いた音。舞い上がる埃。

 手のひらを返す。しかし、何もない。

 うぉん、とジョン太が抗議の声を上げた。






「私は太った」

くコ:彡 くコ:彡 くコ:彡💦ピューン

 「ねえ、聞いて。本当に信じられないことが起きたの、こんなことってあっていいのって君に、いや世界中に聞きたい。どうしてこうなったのかまったく想像もつかなくて。私、さっきね、その、服を脱いで台に乗ったの、服だけじゃなくて下着とかも全部ね。台って、その、えっと、裸で乗る台って言ったら分かるでしょ、分かれ(低い声)。そしたらもう悲鳴です。あんな声、上京してから一度も出したことない、それくらいの悲鳴。お隣さんに心配されちゃった。だって見たこともない数字だったんだもん。ええ?はい?うんと?ん?四つくらい言ったわ!もう全然心当たりない。慎ましくて穏やかで健全な生活を毎日積み重ねてるとばっかり思ってたけど、いや、そうだよね、そうだったよね私?健全だったよ。おかしい。これはおかしい。台が壊れてるか、神様がいじめてるかどっちかだけど、さっき猫を乗せてみたらちゃんとした数字が出るの、だから私きっと神様にいじめられてるんだわ。にらまれるようなことしたかな・・・拾った百円玉でガム買ったからかな。だってちゃんとした生活を心がけはじめたところだったのに。一日一個は必ずトマトを食べるって決めたし、こないだ飲み会ひとつ早退したし、パフェだって週二まで減らしたんだよ!減らしたのに、増えてるんだよ!増えてるって何よ!増える理由がどこにあるのよ、減らしたのに!」

 私はそこまで言うと、画面をタップしてスマホをベッドに放り投げた。そのとなりへ自分も飛び込む。

 『お留守番サービスにメッセージを登録しました』

 電子音が耳元で言った。






#100日間連続投稿マラソン 4日目でした!お付き合いいただきありがとうございました(*'ω'*)

 何だかちょっとずつ実話が混じり込んでいる…笑

 こちらの企画に参加させていただいています(*'ω'*)


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