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ハノイ中心部へのバイク乗り入れ禁止の計画について、まったりと考えてみた。 

ハノイを含むベトナム国内の大都市で、渋滞緩和、大気汚染抑制に向けて国家政府主導でバイクの都市中心部への乗り入れ規制が将来実施されるらしいのだが、その計画が前倒しになるという報道が結構前にあった。

ハノイ:中心部へのバイク乗り入れ禁止、25年に前倒しの方針
https://www.viet-jo.com/news/social/211209134145.html

ベトジョー:2021/12/9

2025年といえば3年後、その間にバイクに代替する市民の足となるインフラ整備が急がれるのだろうが、それに因んで、以前、僕は以下のような記事を書いたことがあった。

P2Pなハノイ市民にとって、BRTや都市鉄道は不要ではないか?という説。
https://note.com/makinhanoi/n/n325b3b3adbb0

NOTE:2021/5/31

今更クラ/サバ方式に集約するなんて時代に反しているのではないか?という趣旨だ。加えて言えば、排ガス問題はバイクの電動化推奨で何とかならないのか、というのが私感である。

記事を書いたその後、ハノイでは都市鉄道(2A号線)が開業し、新たに別の路線(3号線)も今年には開業するようだ。他の計画路線も数多あり、着々と公共交通のインフラ整備が進められる計画がある。

ところで、日本の大都市圏では鉄道利用での通勤・通学が多いため、駅から徒歩何分か?ということが関心事となる。徒歩の許容時間(距離)を考えると日本の都市では10分程度は十分に徒歩圏内といえるだろう。一方、ハノイでは暑さの厳しさが日本の諸都市と各段に違うため、デフォルトで10分歩くという想定は非現実的だ。多くみても5分程度が許容限度ではないだろうか。徒歩5分圏内とは、日本の不動産物件紹介で採用されている分速80mで換算すると400m、16両編成の新幹線を端から端までという距離である。実際のところ、これでもハノイの酷暑の下では敬遠したくなる距離かもしれないが、現在開業済の2A号線と開業予定の3号線(地下区間含む)の駅から400mのバッファを生成した図が以下である。

ハノイ市街に相当する区(quận)部全域
ハノイ市街の中心部

凡例:

  • ハノイの概ね市街地に相当する区(quận)部=紫色区域

  • 鉄道駅の400m圏=緑色円(上図)、緑色メッシュ(下図)

  • バイク乗り入れ規制区域=赤色区域

この様に、仮に400mを徒歩許容圏として考えた時、鉄道駅の徒歩圏が被覆する範囲は市街全体からするとわずかな割合である。当然ながら鉄道と他の交通手段の連携が必要になる。環境問題を主眼に置くなら、シェアサイクリング(電動)が考えられる。現在、建物単位で(半)地下駐車場の設置が義務付けられているというインフラ上の基礎があることから、それらに充電設備を設置することで対応できるだろう。Grabの様なサービスで補うことも考えられる。

バイク乗り入れ禁止範囲=上図の赤枠範囲(この範囲の認識が正しいという前提のもと)はかなりの広さがある。3年後に間に合うのかどうかはさておき、全面的にバイク乗り入れ禁止にするためには、前提として大量輸送手段となるインフラ整備を拡充した上で、自宅側と目的地側の双方のシビアなラスト1マイル問題を解決するために、更にリソースの消耗が必要になってくる。このように考えると、バイク電動化の推進、都市圏拡大化に伴う遠距離移動向けの鉄道整備という役割分担をすることが、現在の問題解決を図るための妥当で効率的な方法ではないかと個人的には思う。


注:バイク乗り入れ禁止区域について、報道記事の「環状3号線、国道5号線、 チュオンサ(Truong Sa)通り、ホアンサ(Hoang Sa)通りに囲まれた各区」に基づき、筆者が推定で描画したエリアが上図の赤枠。
なお、都市圏規模と実際の街並みを考慮した時、ハノイの環状3号線(Đường vành đai 3)は東京で例えるなら環状8号(環八)、ハノイ環状2号線(Đường vành đai 2)は同じく環状6号(山手通り)に相当するのではないかと考える。
冒頭写真:環状2号(Đường Láng)の交差点
地図作成:SuperMap GIS

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