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登竜門での出来事

私の業種には一流プレイヤーの登竜門が何個かあり、一応私もその登竜門を何個か潜り抜けたことで今の業種に縁があり就職している。

今でも、「なんでこんなに自分は恵まれているのだろう」と感じるばかりであるが、その運の巡り合わせはこの初めて受けた登竜門にくぐり抜けてからだった。

申し込んだ理由は大学の教授が「○○やりたいなら申し込むと良いのでは?」と言ってきて、「よっしゃ!旅行に行きたいしやるか!」のノリである。

今回話す登竜門はそのうちの一つ。それは国関係の行事。実際に大臣からのありがたいお言葉も頂戴するような割とガチなもので、通った当初は「よっしゃ!ワイも同年代の中ではすげーできるんやな!」と思っていた……はずだった。

登竜門は甘くない。

簡単に言えば当時も登竜門へ行くほどの実力がなかったし、今も行くほどの実力がないと思える。何もできないのにやる気と運が良かったのだ。あとは人より多少発想力があった。私が数々の登竜門や凄いイベントに通ったのはそれだけの話であった。

今でこそ色々と恥いる話ではあるが、当時の自分はできて当然だと思っていた。実際は何もできない人間なのに、大学では自分よりできない人の方が多いし、頗る調子に乗っていた。しかも、全国大会の切符を掴んだので本当に自分はすごい人間だと思い込んでいた。

ただ、講義を受けたときに気づいた。自分の実力は底辺の底辺であることに。技術で殴られる感覚は本当に痛い。得意ぶっていたことができないことを知ることは痛い。見たくないものを見せられ続けることは言葉にならないくらい痛い。自分は特別じゃない、を再び痛感した。
これで弟に少しでも追いついたとでも思ったのに、自分はやっぱり何もできないし追いついていないのだと気付かされることは何よりも発狂しそうになる出来事だった。

特に○○さんから泣かされてなければ今の自分はないだろう。正直とても感謝している。○○さんは悪意なくこちらにこう言ってきた。

○○さん「えっ?こんなのもわからないんですか?えっ、できて当然ですよね?」

それが苦しかった。確かに自分は初歩的な部分で「???」となっていたからこそ、当然の部分のラインが自分の周りはあまりにも高いところにあって、自分はそのラインにすら立ててない。しかも周りの人たちと会話をしていると、彼らは人間性もかなり豊かだし、視野も広いし、それでいてかなり謙虚だし、自分の良さや勝ち目がないことを痛感しきっていた。悔しくて涙が出てきた。泣いてしまったのだ。

悪意のなかった○○さんはオロオロして、大人たちを呼んで、自分は廊下に行くことになった。3人の大人がいた。一人は女性を予備に行って、ある大人から「どうして泣いているんだい?」と聞かれた。
多分もう少し前の自分なら「○○さんが」とか言っていたかもしれないが、刺激を受けていたタイミングであるからこそ自分が理由だと気づけていたのかもしれない。

「自分が何もできないことが悔しくて、悔しくて、こんなにすごい人たちや機会を与えられてるのに自分は何もできないんです。初歩すらわからない自分が情けない…」

口から自然と出てきたのがそれだった。悔しい悔しいと言葉がつらつらと出てきては涙が止まらない。大人の一人が女性を連れてきた。

「私も去年ここにきた時、私は部屋でだけどずっと悔しくて泣いていたよ。本当にできないことを痛感させてきて悔しいよね。わかるよ。」

そう言ってポンポンしてくれた。その言葉を聞いた質問してきた大人がこう言葉を出した。

「今は悔しく思えばいい。この場はみんなを叩きのめすためにあるんだよ。悔しさをバネに成長すればいいんだ。悔しいと思えるから人は成長できるんだよ。今はつらくて苦しいかもしれないけど、それでいいんだ。ゆっくり続けていけばいつか必ず講師たちと同じくらいの視座を手に入れられるから大丈夫だよ。」

この二つの言葉は本当に自分にとって大切で、苦い思い出とともに努力するときに思い出す。私にとってのこの業界でい続けられている一つの言葉たちである。

登竜門でのフルボッコと目覚まし

その後に泣きながらまた技術的なことをやることになった。しかも講師たちの凄まじい経歴を知らず舐めプで受けようとしていた。なんも知らない自分は「なんかここの人たちはすごいらしい人たちらしい」としか思えない。

講師たちが華々しい経歴を話す中、無知ゆえに「なんやそれ」を貫く私。僕はこの本を書きましたと言われても「この本…?夏目漱石より無名やろ。知らねえな」である。今でこそ「えっ、待って???すげえ!」と思うが、当時の私は本気で「その技術は何が良いんですか?意味あるんですか?」と聞いてしまった。今考えると命知らずすぎてやばい。

そこで技術でフルボッコにされる。天狗だった鼻を完全にぶち折ってくれた。あれは今でこそ痛快である。

講師A「君の考え方って凄くつまらないよ。凄く可哀想なんだけどさ、君って否定的に見ることしかできないんだね。ものを使って何が楽しいかとか、どう発展できるかってわくわくするのがものづくりなんだよ。人のアイデアを否定ばかりしてもなんも生まれないよ。それで技術を身につけられるの?」

この言葉は今でも忘れられないし、かなり仕事で生きている。人のアイデアを否定することがいかに残酷であるかは、自分の職種の技術を知れば知るほど痛いほど理解させられることであって、自分はその痛みを知らなかった故に否定ばかりしていた。そして、講師Aさんからその時技術でボコボコにされた。そうしたら言われていた理由がはっきりと見えて「自分の残酷さを教えてもらえた」と思った。

私が否定的にみていたのはもう一人の講師の先生の技術だったのであるが、その人は「まあそんなもんよねえ」という対応であった。

そこから、その講師Bさんの技術を使うたびにどんどんと凄さに気付かされる。そこで「これ、使ってみて本当にすごいことがわかりましたし、めっちゃ楽しいですね!!!」と言ったら、「わかった!!!そうでしょ!!!!!」と講師Bさんから食い気味に反応される。その人は後にも出会った際に知らされたが、肩書きだけでみられがちだったので、ガチで無知を晒していた自分がその人の自信作の技術を知って「すげえ!!!」と言ったのがよかったらしい。

そのときにふと講師Bさんの対応や考え方を見ていて気付かされる。ここにいる人たちは一流の人しかいないと聞いているけれど、ここにいる人たちに何かしらの共通項がある。多分それを精査するのがまず一番自分がすべきことではないか。技術は多分この5日では盗めない。だからこそ思考方法や軸の作り方を盗もう。多分これが一番コスパの良いこの場での立ち振る舞いだと考えた。当時は投資サークル所属なので、時間のコストを最大限に活かす方法を自分なりに検討していた。

登竜門で受けた言葉の伝わりにくさ

登竜門では大手企業からのインタビューを受ける機会がある。講師Aからのフルボッコ後にインタビューを受けた。

インタビューの時の記憶はない。

そのインタビューの時、インタビュアーに色々と話したが、なんだか話したつもりのないことを書かれていた。インタビュアーの伝えたいことを私に言わせてるレベルの立派っぷりである。読んだ後の感想は以下である。

「まってください。そんなに立派なこと言ってないです」
「待って、それは意図してなかった。」

これを繰り返したのでかなりやばかったが、あまりの意図してない立派発言ぶりに、高校時代の先生たちから読まれた後に(私の人格を知ってるが故に)大爆笑され、大学の教授陣は「就活の時にアピールしやすいくらいの立派っぷりでええやん!」とポジティブに受け取られ、母は笑いすぎてヒーヒー言いながら何枚もインタビュー記事を印刷していた。
(後に母方の祖父から「おめぇ、なんかわかんねえけどすげえなぁ」と謎の感想をもらった)

友人からは「いつもの努力が実ってて良いじゃん!おめでとう!」と言われた。

この記事が出回ってしまい、色んな人から手のひらを返されて人間不信に半年陥ったのは別の機会で書く。

登竜門でできた目標

わずか数時間のうちに質問事項や立ち振る舞いを検討した。登竜門では一流の人たちと会話ができる。その機会を生かすしかないと思い、色々と質問事項を考えて聞き回ることにした。

「どういう人生の目標があるか」
「そのモチベーションはどこから出ているのか」

そうして沢山の目の前にいる一流プレイヤーから聞いた答えはなんだか筋が通っていて、また種類が収束しているように感じた。そして彼らは謙虚に学び続けていることがわかった。

誰かの役に立つものがやりたい or
自分がやりたいことを極めたい
・周りの目は気にしない。
最も誰かの役に立つことが大切
・これと決めたらそれに一直線でやっていく
技術は誰かを助けるものであって、人を傷つけるためのものではない
技術は権威ではない。技術は共存のための道具である
教養を持ち視野を広くすると後々に役に立つ

本当に100人近くのすごい人たちから話を聞いて、上記をかんじとり、これらが大事だろうと考えさせられた。今はそれを踏まえてどういうステ振りをするべきか考えている。

後日それについて思い出せれば色々と書いていこうと思う。

後書き

そう、思い出話を書き切ってポエミーだなぁと思いながら、しみじみと噛み締めると気付く。
これ、老害ムーブメントではないかと。

昔のことを思い出してしみじみとしてしまうと、過去に囚われて成長できなかろう。そういう危機感を持つこととなった。
私の場合は大学時代に頑張ったから今があると言わざるを得なく、過去がなければ今の自分はないから(いつ死ぬか分からないし)軸を書いておこうという気持ちでもあったけど、なんか老いた自覚もする(私の老いについての見解についてはこちらも参考にされたし。)

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