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Harmonion två

ムーミン谷の十一月』で
ムーミン一家が不在のまま
何となくスタートした共同生活も
終わりを迎え、先発のふたりと
橋の上で挨拶を交わす場面。

そこでのフィリフヨンカとスナフキンの
会話が旧版ではこうなっている。

「ところで、あのハーモニカのふしは、なに調でしたっけ。」
「ニ調だよ。」

旧版『ムーミン谷の十一月』19章

ニ長調でもなく、ニ短調でもなく
二調というのが子どもの頃から
不思議だな…と思っていたが
原文を見てみると、フィリフヨンカは
ハーモニカのmärkeは何なのか、と
訊いていて、スナフキンンは
Harmonion två と答えている。

märkeは「マーク」「サイン」
「ブランド」等の意味で、
tvåは数字の2の意味。

うーん、märkeはサインの意味で
2番目のハーモニーだから
「ニ」としている?
でもそれなら原書表記は
D-dur(D major)か
D-moll(D minor )になるのでは?
ニ長調もニ短調も
スナフキンの曲のイメージに
合う感じがするが、

https://www.8monji-guitar.com/

フィリフヨンカは同じく19章で
自分のハーモニカを手に入れる
宣言をスナフキンにしているのだ。

散々悩んで、音楽にも詳しい
Thomas先生に訊いてみた。

旧版訳を説明した上で、
märkeはここではどういう意味なのか、
フィリフヨンカは自分のハーモニカを
欲しがっているから、どのメーカーの
ハーモニカを買えばいいのか指南を
仰いだのではないか、と訊いたら
ハーモニカの名前(メーカー・ブランド)
と即答されて、ほっ。
(ちなみにHenrikaも同じ返答だった)

スナフキンのハーモニカの美しいしらべに思わず聴き入るフィリフヨンカ(13章)

ああ、でも旧版訳者の
鈴木徹郎さんはここも大変
苦労されたのだと思う。
辞書も充実しておらず、もちろん
ネットもない時代の翻訳作業。
「ニ長調」でも「ニ短調」
でもなく「ニ調」とされたところ
考えに考えてひねり出された訳では
ないだろうか。

ちなみにエスペラント語で
ハーモニーをharmonioといい
対格でharmonionとなる模様。

「ところで、あのハーモニカはなんていうものなの?」
「ハルモニオンⅡだよ」

新版『ムーミン谷の十一月』19章

Harmonion tvåの 訳を
新版では「ハルモニオンⅡ」としたが
できることなら
シンセサイザーのProphet-5のように
Harmonion-2にしたかったな……。

https://fukusan.com/products/sequential/prophet-5/


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