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建築事務所のいろいろ_独立記念日

本日7月4日はアメリカ独立記念日。この日に思い出すのは、私の前のボス、スティーブンホールが自宅に招いてくれたBBQパーティーだ。

入社してまもなくこの日がやって来た。「有名建築家の家に行ける!?」と、最初は招待にかなりびっくりした。スティーブン以前の有名建築家ボスと言えば黒川紀章で、彼の私生活など垣間見たこともなかったから、余計びっくりしたのも無理はない。

スティーブンは、マンハッタンから北に2時間ほど行ったところに別荘を持っていて、そこに毎年スタッフやその家族、そして友人やOBなどを招待してくれた。BIGに移籍した後も何度か顔を出させてもらった。スタッフは各々、料理を一品持ち寄り、山ほどのワインとメインはスティーブンの担当。私たちが到着すると、「よく来たね~。」と言って、ほっぺに挨拶のキスをして歓迎してくれた。

別荘と言っても有名建築家らしからぬ、とても質素だがスティーブンのデザインが詰まった家だ。古い小さな既存の石の家に、ダイニング、寝室、スタジオや風呂場をスティーブンがデザインし、増築したものだ。(写真はこちら)

その家も素敵なのだが、さらに素敵なのは、家に背を向け森の方に歩いていくと小道が続いている。そこをどんどん歩いていって坂をくだると、目の前に大きな池が広がるのだ。そしてその岸辺にたたみ3畳ほどの小さな小さな小屋がある。この小屋を覗いてみるとスティーブンのスケッチブックや水彩絵具の道具などがあった。そう、ここがスティーブンの創作の場なのだ。うわあ、なんて素敵なんだろうと思った。あこがれのスティーブンホールの世界観が一気に広がった。コルビジェのカバノンやアアルトの夏の家のような、建築家なら誰でも憧れる世界だ。(写真下:岸辺のスタジオ。'House_Black Swan Theory'より。)

この日は、家も庭もこの小さな小屋も全部私たちに解放してくれて、池で泳いだり、飲んだり食べたり、庭でバトミントンをしたり、夜遅くまでゆっくり過ごさせてもらった。その日にニューヨークに帰る人もいれば、庭にテントを張って翌朝帰る人もいたり。(写真下:ある年のスタッフ集合写真。左の柱の後ろがスティーブン。)

スティーブンには確かに言いたい文句はたくさんあったけれど、建築を愛し、アートを愛し、それを私たちに開放し、共有してくれたことにとても感謝したいし、今日あの場に居れないのは少し寂しい気もする。

ハッピー4th!

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