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建築事務所のいろいろ_豊田スタジアムからトヨタウォーブン・シティへ

1月6日、トヨタ自動車はラスベガスで行われたデジタル技術見本市CESで、自動運転技術や支援ロボットなど、未来の生活に欠かせない技術の実証実験を行う未来都市「ウォーブン・シティ」の建設計画を発表した。BIGがマスタープランを担当した。このプロジェクトはBIGにとって日本での初めての仕事であり、今本格的な設計段階に入ろうとしている。

そして豊田スタジアムからトヨタウォーブン・シティへ。これについては最後に書くとしよう。

私はとにかくうれしいのだ!夜も寝られないほどうれしい。アメリカにきて20数年が経った。日本の高校を卒業してからアメリカで建築を学び働き、すっかり私の人生は日本から遠いものになってしまった。
後悔はないけれど、私がアメリカで培ったものを建築家として日本に返していきたい、そんな思いがここ数年強くなっていた。どうにかBIGが日本で仕事をするチャンスはないものか。日本のデベロッパーで働く友人からは、BIGのデザインは日本のデベロッパーには手に負えない。とも言われた。日本で土台が構築されていない海外建築家にとって、日本でプロジェクトを獲得するのはとても難しい。

ところが一年前、トヨタ自動車によるウォーブンシティの話が持ち上がった。社長の豊田章男氏とビアルケが出会い、未来の世界観に意気投合しこのような計画が始まったらしい。まさに壮大なビジョンを持ったトップの出会いが生んだプロジェクトと言っても過言ではない。最初は私も本当にこんなプロジェクトが現実になるんだろうか、と思った。でもトヨタとBIGのチームがこのビジョンを現実にすべくこの一年頑張り、とうとう発表にたどり着いたのだ。

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その間、私は別件の設計に忙しい日々を送ってきたが、隣でどんどん発展するウォーブン・シティのマスタープランを横目にしながら、「現実的なプロジェクトになるのか?私も早くチームに加わりたい。でも今は目の前の仕事に集中しなければ!」と、はやる気持ちを抑えながらも事務所には「もしトヨタのプロジェクトが本当に動き出すときは、絶対にチームに入れてほしい!」と希望を出し続けた。そしてタイミングよく別件はこの一年で終盤を迎えつつあり、私は晴れてトヨタウォーブン・シティチームの一員になれる見通しだ!

そして豊田スタジアムからトヨタウォーブン・シティへ。それは私の建築人生が「とよた」で繋がっている、ということだ。豊田スタジアム、それはトヨタ自動車が本社を構える愛知県豊田市のサッカースタジアムで、日本の巨匠黒川紀章によって設計された。黒川紀章は私の建築家としての最初のボスであり、大学卒業したての私はこのスタジアム設計チームの一員だったのだ。
それからもう一つ。ウォーブン・シティの設計を行うにあたり、デザインアシストをする日本の建築事務所と組む計画なのだが、そのチームに当時のスタジアムチームのメンバー1名がいる可能性あり、と小耳にはさんだ。もしそれが現実ならば、ウォーブン・シティは私にとって運命のプロジェクト、ちょっと大げさかもしれないが、豊田に始まりトヨタに巡り来る。そんな繋がりを感じてしまう。

心の準備は万全だ。トヨタウォーブン・シティがこれまでの建築家としての集大成になるよう、私なりに頑張りたい。

つづく (まずは施主を知ることから。下は勉強教材。)

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