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ツノがある東館 (410字) 〜毎週ショートショートnote参加作品〜

「結婚⁉」

クリスマスの夜、アヤメは心底驚いた。

クラブ『ツノがある』。若手中心の西館に比べ、東館は人気のクラブ嬢が多数在籍する。

このクラブの特徴、それは徹底した塩対応。水割りすら客自身で作らせ、挙句の果てになにかしら説教される。常に嬢が不機嫌、これが店名『ツノがある』の由来だ。こんなクラブ駄目だろうと思いきや意外や意外、盛況。やはり嬢に叱られたい御仁は一定数いる。そして、いつかアイツをデレさせてやるという欲求が店に足を運ばせるのだ。

そんな『ツノがある東館』のナンバーワンで”鬼”の異名を持つアヤメが驚いた理由、それは常連の高瀬から突然求婚されたからだ。

「何考えてんの!いきなり指輪差し出して!」

「ごめんねぇ、急で」

高瀬は謝りつつ微笑みを崩さない。この顔を見ると、アヤメはいつも怒れなくなってしまう。

「僕だけの鬼嫁になってください、アヤメさん……来年早々に」

高瀬が真剣な表情に変わった。

「来年……」

そして”鬼”は笑った。

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