失恋墓地 (410字) 〜毎週ショートショートnote参加作品〜
「なにしてるの?ベッドからいなくなったと思ったら」
午前二時、私の照らす懐中電灯に浮かび上がったのは、フィアンセの姿だった。
「ごめん、どうしても気になってさ」
「そんなに気になる?私の過去の恋愛遍歴」
ここは失恋墓地。過去に成就することのなかった恋愛が葬られている場所だ。
「そりゃ気になるよ……君はとっても美人だから、今までハイスペックな男達とツキあってきたはずだ。それがなんで冴えない僕なんかと……」
「あなたが好きだからよ」
「本当かい?僕の父親が社長だからじゃないのかい?」
「違う!私は……」
その言葉を遮るように、彼は泥まみれの一枚の紙を私の目の前に突き出した。
「行方不明になってる谷口財閥の息子、君の元カレだろ?調べさせてもらったよ」
「ちょっと……過去を掘り起こさないで!」
「噂によると、随分貢いでもらってたんだって?……なぁ、本当に僕のこと好」
……今回もダメか。また失恋墓地に埋めなきゃ。
体のほうは……同じダムでいっか。
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