新春兎漫才 【干支漫才2023】
「どーもー、アンゴラでーす」
「レックスでーす」
「ふたりあわせて、二兎タッチズザウォールズでーす」
「よろしくお願いしまーす」
「いやー、今年はウサギ年ということでね、われわれの年なんで頑張っていかなあかんなぁと思ってるわけなんですけれども……」
「悔しい!」
「急にどないしたんや、レックス君」
「ウサギとカメの童話あるやろ……あれで負けたやん、どこの馬の骨ともわからんしょうもないウサギが!」
「まぁ、少なくともウサギの骨やろうけどね」
「アイツのせいで、われわれウサギのイメージガタ落ちやねん!なに気ぃ抜いて寝とんねん、ちゅう話よ」
「確かにあれはあんまりよくないわな。でもなぁレックス君。所詮あれ、童話やで。そない気にせんでも……」
「いーや、あかん!こうなったらオレがリベンジしたんねん!」
「リベンジって、カメと競走するんかいな」
「そうや!身体鍛えて気ぃ抜かんと走ったら、絶対勝てる!この機会を耳を長くして待っとったんや!」
「首な。……いや、そうかも知れんけど、わざわざ今カメと競走して勝ったからって、世間の皆さんも『わー、ウサギさんすごいなー』とはならへん思うで。やっぱりこうもっと別の分野で頑張らなあかん。たとえばわれわれがもっと漫才でやな……おい、レックス君!レックス君聞いてるか?」
「……ごめん、ウトウトしてたわ」
「早速あかんやないかい!ひとつも教訓活かされてないわ」
「まぁ確かに、おんなじように競走してもしゃあないわな」
「聞いてるやん」
「よっしゃ、じゃあ向こうの得意分野で勝ったる!水泳や、水泳!」
「水泳?大丈夫か?勝てるか?」
「特訓すればなんとかなる……早速プールに行ってやね、ザブーンと飛び込んで1000mくらい泳いで……」
「おお、いきなりハード」
「で、プールから上がって鏡見てびっくり……『お目々が真っ赤だー!』」
「元から元から!ウサギは目が赤いの元から!」
「ドラゴンケースに入れてね」
「令和に誰がわかんねん、そのCM!」
「そいでプールの次は海や。当然、本番は海やからね」
「まぁそうやな、ウミガメとやるんやったら」
「荒波を目の前にしてやね、気合入れて大声で叫ぶんや」
「決意表明かいな、カッコええなぁ」
「……サメさーん!背中に乗せてー!」
「因幡の白兎!また童話の失敗例やないか!最後、全身の毛むしられんで!」
「大丈夫、大黒様おるから」
「なにをあてにしとんねん」
「ほら歩いてきた……♪大きな袋を股にさげ」
「肩にかけ、や!違う意味に聞こえるから!」
「こう、大きな黒々した袋をぶら下げてやね……」
「なんの大黒様やねん!いきなり下ネタブチ込んでくるなよ!」
「まったく、たいしたタマやで」
「うるさいわ!」
「で、いよいよ決戦の時や」
「海での特訓なんやってん」
「対戦相手のカメがノソノソ砂浜にやってきてやね……『今日はよろしくお願いしまーす』」
「おお、しゃべり方もゆっくりや」
「『ウサギさんに泳ぎで負けたら、もう手も足も出ませんわー』なんて言いつつ、甲羅の中に手足頭全部引っ込めてね」
「なんかムカつくわー、そのカメ」
「で、決選の前にセレモニー。花束渡されて」
「なんで格闘技みたいになっとんねん」
「その花束で思いっきりカメの頭をバーン!」
「やめろやめろ!昭和のプロレスやめろ!」
「『こら、カメをいじめるでない!』」
「お?この展開はアレちゃう?また違う童話の……」
「♪大きな袋を股にさげ」
「大黒様!大黒様また出てきた!」
「『いやー、たまたま通りかかりましてね、たまたま』」
「なにを大黒様も自分から下ネタに寄せにいっとんねん!」
「そんなこんなでスタートや。水に飛び込んでええ感じで泳いでやね」
「おうおう」
「折り返し地点を過ぎて大幅リード、あとはこのままゴールに飛び込むだけ……というところで目が覚めたんや」
「……ん?」
「……カメはもうゴールしとった」
「はぁ?」
「特訓しすぎによる疲労でスタート直後に睡魔が……」
「結果的にまた同じ失敗しよった!」
「しかもこれが初夢や」
「縁起悪っ!……もう君とはやっとれんわ」
「ちょ、ちょっと見捨てんといて!……ウサギは寂しいと死んじゃうんだよ!」
「だから令和に誰がわかんねん!もうええわ」
「どうも、ありがとうございましたー」
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