ヘルプ商店街 (410字) 〜毎週ショートショートnote参加作品〜
全身の痛みに耐えかね目を開けると、丸顔の中年が俺の顔を覗いていた。
「気がついたかね」
「……ここは?」
「私の営む八百屋の2階だ。市場へ行った帰り、倒れている君を見つけてね」
記憶が蘇ってきた。俺は魔王を倒す冒険の途中、手下の怪物と戦い痛恨の一撃を浴びたのだ。
「行かなくては……イタタ」
「その怪我ではまだ無理だ」
「しかし、これ以上甘えるわけには」
「なぁに、昔からこの商店街は、君のように傷ついた冒険者を迎え入れ癒やしてきた……そしていつしか、ヘルプ商店街と呼ばれるようになった」
そうか、ここが風の噂で聞いた……。
「お父様、失礼します」
「娘のハナだ……しばらくはハナが身の回りの世話を」
「おい、どうだい?」
寄合で肉屋の主人が八百屋に声をかけた。
「ああ、あの目はホレてるね」
「父親としては複雑だろうが……商店街の未来のためだからな」
「わかってる……かつては私もそうだった……そしてお前も」
ヘルプ商店街は、こうして今日も続いていく。
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