名探偵ボディビルディング (410字) 〜毎週ショートショートnote参加作品〜
路地裏にあった『名探偵ボディビルディング』という看板に惹かれたのが間違いだった。
僕は探偵に憧れている。なんなら職業にしたいくらい。でも、目の前に立っている白のタンクトップにホットパンツ姿のマッチョは、どう考えても僕の目指す方向性ではない。
「探偵……なんですか?」
「ああ。名探偵ボディビルディングこと細井だ」
「……自分で名探偵と?」
「そのぐらいの自信がないとやっていけないよ。もちろん肉体においてもそうさ。筋肉という鎧を纏うことが自信に繋がる」
「はぁ」
「じゃあ、君も今日から筋肉仲間ということで」
「いや、仲間じゃないです!」
「まあまあ、そうムキになるなよ。むしろムキムキになろうじゃないか……大山海斗くん」
「え……なぜ僕の名を?」
「さっき焦って定期入れを落としたろ?学割の定期だったから大学生、最寄り駅から考えて川原大学かな」
……意外とやるな、コイツ。
「このくらい探偵としては、朝プロテイン前さ」
いや、やっぱり気のせいか。
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