デジタルバレンタイン (410字) 〜毎週ショートショートnote参加作品〜
「バレンタイン……お会いできませんか?」
みちゅからのDMに俺の心は躍った。
暫く前から彼女とはSNSを通じて親交を深めていた。なんとなくお互いに好意を持っていることもわかっていた。だから、向こうからのアプローチにすぐ返信した。
「ぜひ!」
渋谷で待ち合わせた。みちゅはアイコン通り美人でスタイル抜群だった。俺のほうはちょっとイメージと違ったよう。だが、ふたりの間ではもはやそんなことは大した問題ではなかった。
「この世界だからチョコはないですけど……ツキあってください!」
みちゅからの告白。俺は高鳴る鼓動を抑えつつ「もちろん!」とタイピングした。
やった、メタバース上で初めての彼女だ……!
喜んでいると、急に部屋が真っ暗になった。
「おい兄貴、ドライヤー使う時は気をつけろって言ったろ!」
怒鳴りながら家のブレーカーを上げに行く。
しかし、髪型なんて気にしたことのない兄貴がドライヤー……恋人でもできたのか?
まったく、ミツオの分際でよ。
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