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Vol.3【小林賢太郎引退に投影したラランドというブランドの危機】

2020年12月1日、お笑いコントユニット【ラーメンズ】の小林賢太郎さんが年内での芸能界からの引退を発表しました。私と同世代のお笑い好きはほぼほぼ多大なる影響を受けているでしょうし、その舞台はお笑いという枠を超え芸術の域にまで達している、唯一無二のお笑いユニットでした。その頭脳である彼の引退は勿論私たちの心に大きな空虚をもたらしましたが、同時にパラリンピックの演出を受け持っていることから考えても、恐らく彼自身ラーメンズという彼の作品にピリオドを打つ必要性を感じ、演出家としての道を本格的に歩む為のけじめの一つではないか、とも推測できます。小林さんの次なるステップに是非期待を寄せたい所存です。

上記ニュースを見た時は確かに衝撃でしたが、同時に殆どの方々はこの決着を予想出来ていたのではないかと推測できる一面もあります。というのも、【ラーメンズ】というコンテンツの全盛期は2000年代前半ですが、その頃は同期のお笑い芸人であるバナナマンやおぎやはぎと【君の席】というライブユニットを作り深夜枠で冠番組まで持ちましたし、まだ東京03結成前のアルファルファの二人及び【第3のバナナマン】とまで称されるオークラとのユニットコントグループ【チョコレイトハンター】を結成し並行活動するなど、お笑い舞台での精力的な動きも見られました。当時の芸人が全力でネタを競った【爆笑オンエアバトル】ではその異端な才能ぶりを遺憾なく見せつけ、13勝を挙げて第2回チャンピオン大会では立川談志賞も受賞しています。

そんな彼らが戦友達と方向性を異にし始めたのは、ラーメンズ・小林賢太郎氏はあくまで【舞台】に重点を置き、テレビでタレントとしてのブレイクを夢見た他の面々との距離が出来始めたころからではないでしょうか。実際おぎやはぎやバナナマンはM-1グランプリやキングオブコントで結果を残し、世間一般的にも徐々に脚光を浴び始め、数多くのバラエティで結果を残し、現在では日本のテレビシーンに無くてはならない存在になっています。ですがラーメンズの二人は違いました。小林さんは演劇方面への傾倒を進め、相方の片桐仁さんは陶芸家・芸術家・俳優だけでなく、エレキコミックとのユニット【エレ片】でお笑い活動も行うマルチに活躍する存在として芸能界でその存在感を示しています。

何故その道を選択をしたのか、と言えば恐らく大衆的なバラエティに対する自分たちの適性の無さを認識しており、その戦場を見極めた慧眼によるとしか思えません。実際に東京03もバラエティで見呆気る機会も多いですが、彼らの主軸はあくまで舞台公演。彼らよりも極端で、自分たちを守る道を選択していたのでしょう。

これを書いているのは2020年12月2日の午前中なので、M-1グランプリの準決勝が始まるまであと数時間に迫っています。GYAO!のワイルドカード枠で復活したのはフリーで活動中のラランド。お笑いファンからはこの復活を、贔屓目に見なくても総じて歓迎されていました。実際私も準々決勝及び2回戦のネタを改めて見ましたが、準決勝進出メンバーと比較しても遜色のないネタではありました。ただ何かが物足りないと言えば、ボケのサーヤのメリハリのある演技力と、ツッコミのニシダの個性でした。

ですがここ最近、急速にラランドをバラエティで見る機会が増えてきました。それは主にニシダの人間性に焦点が当たる内容でした。親に勘当されていることをフューチャーされた【シンパイ賞!】や、遅刻癖の酷い部分にフォーカスを当てた企画を行った【水曜日のダウンタウン】など、よく言えばテレビマンたちがラランドの【ネタ以外の面白さ】に気づき始めています。ただ、裏を返せば【ラランドというコンテンツの消費が早まる】という風にも捉えられる気がします。

ラランドの去年から続く尻上がりな成長性は天井を見せません。ですが、漫才の面白さに期待している層からすれば、ラランドが第7世代の中心層と同じ消費のされ方をする事を良しとするか否かで意見が分かれるでしょう。実際今回のM-1ではブレイク中のコンビは大半が落とされました。それは彼らのネタが弱かっただけではない【大人の事情】も多少なりとも考慮されているのではないか、と邪推したくなる部分があります。M-1グランプリはその審査員層に【未だ燻っているお笑い芸人に焦点を当てたい】という連中がいるような気がしてならないし、売れ始めた芸人たちはテレビの仕事に追われ漫才やコントの腕を磨く時間を取る事が容易ではなくなってきます。私はラランドが今後演芸としての漫才を続けていくのか、それともテレビタレントになる為の道具としてラランドというコンテンツを消化していくのか、気になって仕方がありません。2019年覇者のミルクボーイは【生涯漫才】を掲げています。ラランドのネタに触れる機会が無くなる危険性を感じている私ですが、果たして本人達の結論や如何に。

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