見出し画像

坂の上の渋谷

渋谷区渋谷という住所がある。宮益坂を上り切って、青山通りを越えたあたり一帯がそう。そのエリアをずっと私は「青山」と思い込んでいたから、たとえば予約したレストランの住所が渋谷区渋谷だと、向かっている先とのイメージが噛み合わず、何だか変な気分になる。

渋谷区渋谷のあたりを長年「青山」と思い込んでいたのは青山学院大学のせいだ。大学の付近を「青山」だと思っていたから、そこが渋谷というのがどうもしっくりこない。調べたところによると、江戸時代、徳川家から重宝された青山忠成は鷹狩りの際に家康から「見えるかぎりの土地を与える」といわれ、土地に目印をつけて自分の領土とした。つまり「青山」は青山さんの野心の範囲。

宮益坂を上り切ると、パッと景色が広がって、下世話な渋谷とはやっぱり違う。道ゆく人もどこか上品だし、並ぶお店も趣味のいいインテリア店に老舗の帽子店とラインアップが違う。

やっぱり坂の上の渋谷は「青山」という地名の方がいいと思うんだけど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?