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ラ・ブランシュ(表参道/フレンチ)

できすぎたくらいに、不思議な知り合いがいる。

Hさんは名古屋に住んでいる料理人見習い。あまり詳しく教えてもらってないのだけど、料理の勉強の一環で、当時、数か月に1度、夜行バスで東京にやってきた。滞在中の数日間、朝は吉祥寺の老舗和菓子店、小ざさの羊羹を買い(朝5時に並び、1回買ってまた並び直すそう)昼夜は東京の知り合いを誘って高級レストランで食事。その後は漫画喫茶に朝5時まで。ひとしきり食べて、手に入るだけの羊羹を買ったら、夜行バスで帰るのがHさんのルーティン。
またHさんとごはんを食べる時にはルールがある。コース料理を食べるにしても、選ぶ料理は各自バラバラにすること、それを全員でシェアすること、そしてどの料理もいちばん最初にHさんが食べること。
こう書き出すとまるで王様のような振る舞い。ただHさんの解説つきで食べるごはんは美味し楽しく、Hさんがご所望なら喜んで、というのが、初対面の時から私が感じたことだった。

ラ・ブランシュは、そんなHさんが東京に来るたびに立ち寄る大のお気に入りの店だ。

住所は渋谷区渋谷、といっても多くの人にとっては「青山」という地名の方がしっくりくる、青山学院大学裏の立地。外階段を上って2階の、一見定食屋みたいなたたずまいの先に、1986年開業の由緒正しきフレンチレストラン「ラ・ブランシュ」はある。
このレストランのすごさは、1回目より2回目が美味しかったことだ。1回目が美味しいと脳内で思い出補正されがちなのだけど、2回目は記憶以上のおいしさで、特にスペシャリテの鰯とジャガイモのテリーヌが最高で。

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トリュフがかかった鰯とジャガイモ、そのまわりにぐるっと撒かれたベーコン、それぞれが何ともいえない絶妙な塩加減。別々に食べても、一緒に食べても、添えてあるクリームをつけてもつけなくても、どう食べても全方向で美味しい。これには本当にビックリした。

Hさんからはいつしか連絡が来なくなってしまい、ここ数年はご無沙汰だ。もしまた連絡がきたらぜひ一緒にラ・ブランシュに行きたい。そしてHさんのの評を聞きながら、イワシとジャガイモのテリーヌが食べたい、そう思う。

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