【いのちのリレー】出産について③
②の続きです。
いよいよ出産当日。
朝6時過ぎに起きて準備を始めます。
夫は立ち会いが認められなかったんですが、朝病院に来てもらい、手術前に一目会えました。
夫の顔を見たら安心しましたが、手術は初めてだったので緊張感しかありません。テレビでしか観たことのない空間だった「手術室」と赤く光る文字が見えると、より緊張感が高まります。
そして同時に自分がここにいる事を少し不思議にも思いました。
手術室に入ると身体を丸めるような体勢を取り、背中から麻酔が入りました。「麻酔が痛い」という話も聞いていたので少し構えていましたが、私は多少痛みを感じたぐらいで何回かドクンドクンと入っていく感じです。
とは言え、この期に及んで悪阻のような胃が上がって気持ち悪くなる感覚に襲われ、意識を保つのに必死でした。
麻酔が効いたら手術が始まります。本当に麻酔が効いている証拠に、お腹あたりで何をされているか分からないぐらい感覚がありません。
二人の先生と助産師さん、看護師さん、たくさんのスタッフの方々に囲まれて、明るい天井をぼーっと見つめながら。
それからはあっという間で、始まって10分ちょっとで先生から「もう頭が出てるよー」の声。するとすぐに「産まれました。おめでとうございます!」という声と共に、赤ちゃんの大きな産声があがりました。
声を聞いてとにかく安心しました。「今までお腹の中に居たのはあなただったんだね」とようやく対面した時の感動は忘れられません。
そして「無事に生まれてきてくれてありがとう。頑張ったね、、」という思いが募り、自然と涙が出ました。
くしゃくしゃっと顔の中央にシワを寄せて大声で泣く娘の姿は、生まれた直後も今も変わりません。
そしてとにかく小さくて、可愛かったです。
後で聞いたら検診で聞いていた体重よりも更に小さく産まれ、実際の体重は2kgにも達していませんでした。
(余談ですが、1,989g。私の生まれた年の数字でした)
まさかこんなに小さく生まれるとは知らずに、こんなに小さくて大丈夫か不安になりました。
でも、これまた後で知ったんですが私の住む自治体では体重が2,000gを下回ると未熟児として養育医療が受けられました。小さく生まれて心配でしたが、ありがたいサポートです。本当に知らない事ばかり...
無事生まれてきてくれて安心し、幸せな感覚に包まれる反面、生後すぐに控える娘の手術への不安が頭をよぎります。
娘には「よく頑張ったね、手術も頑張ろうね」と念じて。
もう既に頑張り続けている娘に「頑張れ」しか声をかけられない無力さを感じました。それ以外に掛けられる言葉ってないのかなぁ。
言葉って、こういう時の為に学ぶものなんだと感じた程、心苦しくもなりました。
娘は生後すぐ、2,000gにも満たない小さな身体で、無事に体外式のペースメーカーと繋ぐリード挿入手術を終えました。
ペースメーカーの助けがないと心臓が止まってしまう可能性がある娘にとって、無事生まれてきてくれただけで安心できませんでしたが、やっと少しひと段落した気持ちになれたのがこの瞬間でした。
(私たち夫婦の中では、数ヶ月後に体内にペースメーカーを埋め込むまでは本当の意味で安心は出来ませんでしたが...)
出産と娘の手術を終えたその日の夕方、夫と初めて2人揃って娘と会えました。
娘は術後でいろんなチューブや管が繋がっている状態。産後の私は身体も起こせず寝たままベッドを移動してもらっての面会でしたが、家族3人が初めて顔を合わせられた時間があったのは、とてもありがたいことでした。
特にコロナ禍で当たり前に面会できる訳ではない状況だったので、本当に貴重な時間です。その時間は短くも、あたたかく幸せなひと時でした。
それから私自身は術後、麻酔が切れ始めてからの時間は痛みとの戦いで、その日の事はあまり覚えていません。
ただ覚えているのは翌朝、痛みで身体を起こせない中、なんとか身体を捻りながら必死に電動ベッドで身体を無理矢理起こして朝食を摂った事。
食に貪欲な私でさえ「こんなに痛い思いして身体を起こさないといけないなら、朝ご飯いらない...」と思ったほどです。
しばらくは激しい痛みとの戦いでした。
帝王切開の傷跡が痛み、身体を思うように動かせず。
ちょっと笑うだけで腹筋は痛いし、それでも出産翌日から歩く練習を始めたり。
産後2日目からおぼつかない足で長い病院の廊下をのそのそ歩き、娘がいるNICUまで会いに行きました。
娘に会うことを最大の励みに、必死になって身体を動かしていた気がします。
激しい痛みは歩くのが辛いだけでなく、寝るのも辛いほど。結局1時間うとうとしただけでほぼ寝てないなんてこともあります。
それぐらい、これまで経験した事のない激しい痛みを味わってでも、ずっとずっと会いたかった大切な命。
幸い、出産時には何事もなく生まれてきてくれましたが、改めて妊娠・出産においては当たり前な事など何一つないと感じさせられました。
お腹の中で娘の病気が分かり「無事生まれてこれるかどうか分からない」と言われた日には、頭の中は真っ白、目の前は真っ暗でしたが。
たくさんの奇跡の連続で生まれてきてくれた新しい命。大切に、大切に守っていきます。
以上、簡単ですが一年越しの出産体験記でした。
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